王国騎士団連合
「(うーん、どうすればいいんだろう。)」
悩むアンクに、
「(…時計塔に案内しろ。後はなんとかしてやろう。)」
ノアが助言する。
なんで時計塔…?と思ったアンクだったが。
「(そうか!何か仕掛けていたアレだね!?)」
時計塔に何か施していたことに思い至りそこへ案内することにした。
森を抜け、草原地帯を超えた先に王都が見えてきた。
「さてここいらで王都も近くなってきたしアンタらとは別行動だね」
ディアンナと分かれる一向。
目的がはっきりしているディアンナ達は、まっすぐ向かっていったが、
アンク達の行先は、アンクの案内次第なためアンクに視線が集まりまとめ役の2人が質問する。
「で、どこに行けばソイツに会えんだ?」
「もう教えてもカレシにはしてあげないけど答えてね!」
「た、多分時計塔だよ!彼はよくそこにいるんだ…!」
とりあえずそれらしい言葉でそこに誘導するアンク。
「(これでいいよね?)」
「(着いたら、我と交代するんだな)」
指示が飛び馬車が時計台の1番近いルートへ動き出す。
「見えてくるぞ」
レイジが言うと本当にすぐに時計台が見えてきた。
「火馬車でもないのになんでこんなに早いの?」
「純粋にうちの騎手が良いのと、小道を抜けることができる馬に、更に特殊な調教までしてあっからだな」
得意げにレイジが言う。
そう話していると5分も立たずに時計台へと到着した。
「(変わるよ?)」
アンクと入れ替わったノアは開口1番、
「とりあえずみんなで時計台に登る?」
と変なことを切り出した。
「んなことするわけねーだろ、ちょっとは考えてものを言えよ」
「時計台に登ってもディア姉みたいに目が良くなきゃ見えないし、そもそも見える範囲でうろついてないとダメなんじゃない?」
レイジには悪態をつかれ、ミューティーには正論で返される。
「じゃあ僕たちだけでも登ろうよ、他のみんなには周りを探してもらってさ。」
やけに大声で言うノアにレイジが睨む。
「あのなぁ…」
だがその言葉を遮ってノアがミューティとの間に入り2人に聞こえる声で囁く。
「二人だけでとりあえずカレに会ってみたくない?」
その言葉にピクッ!と反応する2人。
「そうだねぇ!!時計台のなかにいるかもしれないしー!!」
「考えてみりゃそうか!!じゃあオメーらは近くの建物んなかいねーか探した方がいいな!?」
聞くが聞けば、演技バレバレな口調。
とは言っても、2人はいつもこんなものなのか特に違和感もたれずに2人以外の部下たちは散って行った。
「とりあえず上に上がるよ!ついてきて!」
周りに誰もいなくなったことを確認して急がせる形で2人と共に油圧式昇降機にのり、上へと上がった。
そのまま展望台そのものにいない確認をして、一旦2人を止めるノア。
「もしかしたらあそこかもしれない。2人はここで待ってね」
待たせて向かったのは、やはり整備室。
「(あれ2人は連れてこなくていいの?)」
「(…あの2人、念の為、破天裁魔で確認したが。)」
「(かなりの馬鹿だ)」
「(なんて殺生な!)」
正直、薄々、アンクも気づいてはいたが心のうちですら思わないようにしていたことだった。
「(…でもそれでどうするの?)」
「(まぁ、見ておけ。)」
そういうとノアが変身してノア本来の姿になる。
「(えぇ!?)」
アンクの反応には何も応じず。
整備室の扉を出た。
「待たせたようだな」
2人の前に姿を現したノアに対し2人の反応はというと、
「アンタか…!人の姉貴を惑わしてくれてる野郎ってのは…!」
「なんかあの子に似てる?かも?兄弟なの?」
当然の反応だった。
「(いやどうすんのこの状況?!)」
アンクも焦るが、
「我が弟子から話は聞いた、何やら我をさがしているとな」
わかってるなら話早い!、といった反応の2人。
「てめぇ!なにもんだ!なんでそんなつええ!?どうしたらそんなに強くなれんだ!?あとあの姉貴をどうやってオトしたんだ?!」
「貴方、どこからきたの!?すっごい若そうだけどなんでそんなに強いの!?あとディア姉をどこで出会ったのーー!?!?」
「(えぇ…)」
ほとんど同じようなことを聞いていた。
「我はこの世界のものではない。我が弟子アンクがこの世界に呼び出した者だ、そのディアなんとやらとは顔見知りですらない。」
簡潔に答えるノア。
「なんじゃそりゃあ!?」
「もしかして異世界の侵略者なのォ!?」
よくわからない回答をする2人。
「つ、つまりはだ姉貴はとんでもねーやつを…いやとんでもねーバケモンを好きになっちまったってことかよ?!」
「異世界の禁断の恋なのー!?!?」
2人は顔を合わせよくわからないことを言っている。
「(まぁこんなものだろう)」
ノアは素直に言われたことを呑み込む2人に手応えを感じた様子だ。
「(ひ、酷い…)」
アンクはこのやり取りに同情しか感じなかった。
「(さて、まだこやつらには用がある。)」
「(これ以上何を…)」
「(愚か者め、こやつらは我々を攫っていたのだぞ?情報を取らねば割に合わぬ)」
「(目的なら聞いたじゃないか)」
「(このバカ弟子め、何度も愚か者と呼ばせるな…」
「(そもそもなぜ一盗賊が城に侵入できる。いかに強者といえど、あの城は警備の目が行き届いていて、忍び込むどころか大軍が攻めてきてもありの子ひとつ通さぬだろう手厚さだった。では仮にできる手段があったとして、そもそもなぜ宝ではなく王子を誘拐しなければならないのだ?ただの盗賊が。だ。…わからぬか?)」
「(う、うーん…?)」
「(答えは明白、おそらく王国騎士団だ。)」
そこまでアンクに言ってノアは2人に言葉をかけた。
「お前たち、“王国騎士団“について知ってることはあるか?」
騎士団を強調した質問に対して、
2人はいきなりの質問でギクッ!と身をすくませ、
その驚きに対して隣にいる互いの反応に気づいて目配せし、狙ってか狙わずか同時に声を上げた。
「「知らない(ねー)よ!【騎士連合】なんて!」」
「王国騎士連合の略称なのだな?」
「「うん!(そうだ!)」」
語るに落ちた。




