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ディアンナという女

「よっ!起きたかい?」


「うわぁ?!貴女は!…ココは?!」


ハッと目が覚めるとアンクは森に囲まれた山々の1番小さな山の峰にいた。


「(ノア?!僕の体を使って逃げなかったの?!)」


「(その必要はなかった、御前に対する害意はないようだ)」


「(どこだかわからないところに連れ去られてるんだけど?!)」


「いやぁ、悪いね!気を失わせるつもりは無かったんだけどねぇ」


はだけた胸を晒してこちらに近づいてくるディアンナに思わず目を逸らすアンク。


「アタイは無駄なことが嫌いでね。」


「せっかくのこのアタイの美貌もこんな稼業じゃ、使い所なくてね。ホントの意味で武器にしてんのさ」


ほーら、何照れてんだいよく見な、と顔を胸元へうずめられると、確かに何やら谷間にモノがある。


「これは失気香石といってね、かなり硬い割に脆くて加工しやすいし、常に昇華した粉末が発していて、それを吸ってしまうと一瞬で失神しちまうってもんさ」


「いろんな用途があるから裏稼業だけじゃなくいろんなとこで使われてんだけど、便利すぎて知れ渡ってるからアタイみたいに小細工しなきゃそう簡単に通用しないし…値段も加工前の原石はともかく結構するんだよ?コレ」


失神させた詫びに、なのかいろいろ教えてくれるディアンナ。


「さぁて、アタイがあんたをここに連れてきたのは2つ…なんとなく想像はついてんだろ?」


「一つは、そらもちろん炎王に対する身代金よ、アタイらも家計が厳しくてね、ここのところ失敗続きだから一山稼ぎたいってわけ。」


オオォォォォ…!


とその言葉に周りが一斉にざわめき出す。


布をかけられた荷や、古ぼけた家具のように錯覚していた、アンクたちのいるこの大きな部屋を埋め尽くす“それら”は、


なんと全てこのディアンナの手下であったのだ。


錯覚していたとはいえこれだけの数の手下が、

アンクが気づかないほどに、静寂の指示を聞いていたということに驚くアンク。


その統率力は凄まじいものであるはずだ。


「いやいや、なんだか知らないけどそんなやついりますゥ?」

「デルタブラザーズの兄貴たちもまだ帰ってきてないヨォ?」


と、

長身で青みがかった銀髪の青年と、

紅色のアップサイドツインテールの少女が続ける。


「いや、もう下っ端どもは帰ってきたさ。」


そしてアンクの方をみてディアンナが続ける。


「あの生意気坊主ども、ぶっ飛ばしたんだろ?」


「えっ…いや…」


そんな気にしなくてもいいさ、とディアンナは手をヒラヒラとさせて気にしていないアピールをし、


「そもそもウチの稼業やってく上じゃ、“負けるのが悪い”だからね、何やっても許される裏社会じゃ強さ・メンツは表社会の“信用”と同等の価値なのさ」


「そしてコッチで最も重要で、何より表社会と違うのは諦めない心さ、信用失ったらほとんど這い上がれないオモテの奴らは絶望したら自殺でもなんでもするんだろうが、アタイらは違う」


「勝って幸せ、順風満帆に生きてやろうなんざハナから思っちゃないしね、“相手”を“負かしたら勝ち”なんだ」


「“死ぬまで戦って勝てば勝ち”そう考えたら大して人生なんて難しいもんじゃ無いだろ?」


「そういうことで、アンタは気にしなくていいんだよ、そもそもいくら強くてもこんな小僧らにやられるなんてだらしないねぇ…」


いつまでたっても、2つ目の項目について話そうとしないディアンナにツーサイドアップツインテールの少女が、しびれを切らせて話しかけた。


「ディア姉ぇ、二つ目の話はやくしてよぉ」


「そうですよ、兄貴たちがいる前じゃ言えない話なんでしょ?」


だから集めたんだ、と、言わんばかりの文脈にアンクも気になる。


「うっ…!それは、その…」


何やら歯切れが悪いディアンナ。


「ええい…!確かにアタシとしたことが歯切れが悪かったね!」


訝しむ一堂に頬を叩いて切り出した。


「こいつは、アタイの好きな人知ってるのさ…」


えええええええええ!!!


アンクも含めた全員が驚く。


「アタイらの宿敵、炎王のジジイを華麗に捌いて、アイツの山を割る一撃をカウンターで一撃!!」


「いやぁ、痺れたね!あんなの魅せられたら一目惚れよ!」


口をパクパクさせていた長身銀髪の青年が我に帰り、アンクに詰め寄る。


「おい!!!その野郎の場所教えろ!教えてくれたらお前の手下になってやってもいいぜ!?」


「はぁ?!レイジ!アンタ何言ってんの!」


「ねー!ね!アンタ…よく見たら、結構、綺麗な顔してるじゃん!そのヒトのこと教えてくれたらカレシにしてあげる!」


「オイコラ!ミューティー…???」


ぞろぞろとアンクに詰め寄りかけているその他大勢も見かけ、ついにディアンナも見かねて声を出す。


「二つ目は!!!あの漢を連れてこいってこと!!」


キャー、言っちゃった!という感じで雑に顔を隠す手下の女性たち、そして、マジかよ!と顔面蒼白な手下の男たち、そして言い切ったことで元のテイを取り戻したが顔の赤いままなディアンナの構図が出来上がった。


違う意味で内心顔面蒼白なアンクがノアに聞く。


「(ねぇ!この状況どうするの!)」


「(いや、まぁ悪い様にはならんだろうさ)」


「(それにあの形態にこの女の前でならなければ良いのだろう?)」


それもそうなのかもしれないけどさ、とやり取りを心の中でしていると、


「とりあえずそんなことだから、アタイは王都へ金を用意するよう言いに行く。」

女性たちがヒューヒューと冷やかし、ディアンナが赤くなりながらも、


「アンタはコイツらと一緒にあの漢を連れて来な!」


レイジとミューティーと呼ばれた2人とその場の女性陣、あと、一部の男性陣がアンクの後に続き、残りの男性陣がディアンナに続いた。


どうやら指揮官が2人、残りはアンクを護衛する役割のようだ。


「(どうなっちゃうのこれ…)」


アンクは不安になりながらも案内役としていない人をどう案内するか考え始めていた。



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