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緋色の封印

朝、目が覚めると、既にアンクは馬車に乗っていた。

(正確にはノアが既に起きて活動していたのだが。)


オービットに送り出しに顔を見せるとノアはオービットに耳打ちをした。


「…なるほど?それは一体なぜそんなことになったのかね?」


オービットが詳細を掘り下げようと聞くが、


「よろしくね、オービットおじさん」


そう言ってノアは火馬車に乗り込んでしまった。


「(よくわかんないけどおじさんにちゃんと伝えなくてよかったの?)」


内容をきちんと理解はしてないが、オービットに詳細を伝えなくてよかったのかと尋ねるアンクにノアは、


「(下手に動けば無駄な騒ぎになりかねないから教えんでもいいのだ、それに…)」


「(それに?)」


「(オービットよりも適したものに重要なことは頼んである。)」


ノアはニヤリと笑った。


〜・〜・〜・〜・〜・〜


王城・エスパ・シュタイン。


三つの塔からなる外壁と物見櫓を兼ねた強固な守りに守られている、巨大な城である。常に七色の光と内部で魔法的な防御のための入力をする爆音で騒がしく、建造を指示した先代炎王はここで祈祷による加護と恩恵で国に莫大な利益をもたらしたため、元の王城キングクロスロード城はもっと王都の中心にあるが、利益のため気難しい現国王もこの城に常駐していた。


「さあ、謁見の広間はこちらです。」


王城に火馬車が到着し、アレスに連れられて出てきたノアは、そこで不意に謎の視線を感じた。


「(…なんだ?)」


特に敵意や害意を持つものではなく、ただ怪しい視線に、これ以上は無駄かと、意識を割くのをやめてノアはアレスの後に続いた。


謁見の広間の前に着くと老紳士と、レミーとデイジーと複数人の侍女が待ち構えていた。


「お初に。アンク様。私は執事長のニール・デストルドーでございます。以後お見知り置きを。」


礼を返すと、ニールが合図を出し一斉に侍女たちが動き出しアンクとアレスの身だしなみを整え始めた。


ものの数分じっとしていると、まるでそこには王族をイメージさせる素晴らしいドレスアップをかけられた2人の姿が残った。


「では、ご案内いたします…」


低い声でニールが広間に招き入れる頃には侍女達は片付けで皆その場からいなくなっていた。



中に入るとそこには、長く広い赤のカーペットが広間を埋め尽くしており、その長さも階段を数段登ったところにある玉座まで続いていた。


「…待っていたぞ、アンクロスロードよ」


ほんのりと紅く発光する金の長い髪、そして赤と銀に光る双眸がアンクの顔を捉える。


戦果と戦火を増やすことで今代が最も諸外国に強い影響を与えていると言われる現・炎王。


その両サイドにはそれぞれ大人と子どもが三人ずつ双方に並んでこちらを見ていた。


「…」


「彼が例の…」


「なかなかいい目をしているな。」


子供の側、カイセイ・ミロク・イスラが呟き、


「噂は誠のようですな、ロンダルトン氏」


「しかし、このようなこどもがそのような力を持つのかね?ワシには俄かに信じられんな。」


「彼が道を踏み外せば私が斬るまでです、ビネット翁」

と大人の側、タビダル卿・カーネス隊長・ロンダルトン氏、が続けて言葉を残す。


その場の全員が、アンクを、今までの経歴を作ったノアを試していた。







「………」





それらの視線をひとしきり無言で見返したあと、











「跪け、下郎。」




「「…!」」

「!!」

「な?!」

「なにっ_______…ッ!?!?」

「______ッガ!!??」


刹那の瞬間でほとんど差はなかったが、たまたま、先ほどコメントした順番通りにノアの発言に驚いた途端、ノアが炎を迸らせながら(・・・・・・・・)床を踏み砕いた。


その瞬間、突風と共に天井から床めがけて大気の面がまるで倒壊する岩壁のようにその場にいるものを押し潰した。



_______王を除いて。



「…。“くだらぬ”。」


王が立ち上がって抜剣し、神々しく灯る炎の剣で一振りすると、その一撃で爆風と共に、面で降り注いできていた下降気流は止んだ。


「それが貴様の炎の力か?アンクロスロード。」


「問いに答える前に尋ねたい。」


「父上、あなたは【ホムラ】という者に会ったことはあるか?」


ピクッと眦に反応があったのを、ノアは見逃さなかった。


「どうやr…」


「知らぬな。知っていたとて貴様になぜ言う必要がある?」


逆に探られそうになったので、ノアもそこまでは踏み込まない。そうすると背を向けた炎王は玉座の背に広がる見事なビロードを見ながらノアへ語りかける。



「しかし…貴様のその炎は“燻る炎”か?」

「神炎は伝承では神に等しい権能を宿すという。」

「我々が知らぬだけで、侮っていたその炎の性質がもともと神炎に至るモノだったのか?」

「だが、お前の先程の芸当は、我々の知る、“燻る炎”の力でなどでは天地が入れ替わるほどの方が起きても成せぬものだ…」


「さて。“もう一度”、お前に問おう。」



「その【(チカラ)】、


______ソレは本当に“神炎”なのか!?!?」





その“眼"は、アンクを捉えていない!!



ノアは視線の先に、その双眸の奥に、ヤツを見た!





「(小僧、これがうまくいけばお前の体返してやれるぞ…!)」


「(え?!)」




「「 【破天裁魔】!!! 」」




ノアと炎王が同時に迎号を唱える。


炎王の体から立ち上るような光とともに炎と神力の奔流が、隅々まで行き渡る。

生気を伴っていた時は野心にギラついていた双眸も、神の力によって人ならざる異様なギラつきを魅せる。


声が重なるようにして呟く。


「「《よくわかったじゃないか、ノア様?》」」


「くだらん問答はやめろ。お前にはわからないかもしれないが、先ほどの平伏を強制させる一撃はいかに劣る力である“燻る炎”といえど、あの程度の一振りでかき消せぬことなど一目見ればわかることだ。」


「「《…ふーん、“工夫”ってことか…確かにそれは【破天裁魔】を奪っただけじゃ奪えないものだね》」」


重なる声に笑みが混じる。


「さて、お前には借りがあるが、我も色々返さねばならぬものが多くてな…」


四肢に宿る、炎が全身に迸り、輝く光と共にその身体をノアへと変貌させていく。



「“この場で”全て揃えて返してもらおう」



神々しい後光が右手に宿り、ガラスが砕けるような音共に炎王から神力を奪っていく。



「「「《なっ…!?コレは…!?!?!?》_______



引き剥がされた神力はノアに吸収されるでも霧散するでもなく、【ホムラ】の形に収束していき、


空間が軋む音をたてているほどにそのチカラを持って握りしめた拳をノアが【ホムラ】の幻影にむかって


撃つ。


「砕けろ。」




_______「【来是(らいぜ)】!」



バキンッ!!


逃げ場のない【ホムラ】の形をしたモノは、


玉座の裏のガラス細工を叩き割る形で吹き飛び、


その砕けたガラスと同じように、自らもその撃たれた胸の中心から粉々に砕け散って消えた。



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