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緋色の封印

「…では、5歳児の貴方に何ができると…?」


その具体的な問いに、アンクが詰まってしまうと、


「(代われ。)」


ノアはすでに精神的な逃避性に対してならばこちらから強制的に身体の主導権を移動させられることを知っていた。




「そうだな…ここにいるものであれば誰であろうと異能を使わずに伸せるだろうな」




雰囲気が、というより自我の強さのベクトルが変わったことに皆が気づく。


あるものはそれを威勢の良さと取り、またあるものは増長した成り上がりものの戯言と捉えた。

しかし、家長たるレバールは別のことを考えていた。


「(もしや、これは…?!)」


そんな中、ノアの発言を増長と捉えたものたちが一間置いて声を上げ始めた。


「アンク“殿”がどのようなお力を秘めているにせよ?わたしには!そのお身体でこの場のものを倒してしまえる力があるとは思えませんな。」


そう発言したのは、武闘派の家老 アスライル・ガーナードだ。


「そうよ!失礼ながらワタシにもアンク“王子”が強者になんて見えないわ!」


続けて、緋天の異名を持つ才女 ウリエラ・ミシェールが非難する。


「我ら一族にとっても特別な存在であるとはいえ、先ほどのような発言は現王含めた一族そのものに対する侮辱ですわ!」


さらに煌炎の美姫 リヨール・ネリアセンテスは事実に問わず、発言そのものの内容が問題だと声をあげている。


そして、それらを聞いている2人の巨躯の漢が、1人は怒りのボルテージを上げつつも押し黙り、もう1人は眉間の皺と角度を深めて黙している。


レバールはその様子を見ながらあることを思い、このように切り出してきた。


「ガイランドとフレアランドはどう考える?」



「貴様たちが手も足も出ぬのなら話は変わってこよう?」


その言葉についに押し黙っていた方の漢、ガイランドが声を荒げる。


「レバール殿!!我にこの場で決闘を申し込ませてもらいたい!やはりこの様な侮辱!放ってはおけん!」


それに対して、依然として、いや、より一層厳しい表情を浮かべるフレアランドが静かに諌める。


「やめい、ガイランド。家長殿は目測を訪ねていられるのだ。まずは答えぬか…!」


しかしその上で、


「我としては、“他”はともかく…もしやガイランドと我をみた上で、そのような発言をしているのであればこの場で正したくもなるというものだ!とだけ、答えささせていただく…!!!」



と怒りを主張する。

それを予期していたかのようにレバールが人差し指を立てて、火を灯した。


「であればヌシらが見極めることを許可しよう。」



そのまま、指先に灯った炎で、円を描くと、それが囲まれた空間に蜃気楼のような歪んだ景色を映し出し、気づけばそこにうっすらと屋敷の巨大な庭を揺らぎながら映し出していた。


2人が同時に席を立ち、その中に入っていき姿を消した。


「さぁ、示してもらいましょう…!貴方の強さを。」


レバールのその発言を聞きながら、ノアは既に蜃気楼に消えようとしていた。


「(このような異能は3000年代にもみたことがないな?固有の希少な異能か?)」


考えながらも飛ばされた先は、とてつもなく広い庭園だった。



「さて、貴様たちが我の試験石となる者たちだったな」




「そうだ!!貴様がどれほどの者なのか、口先ではなくその武勇を見せてもらおう!!!」


「我らガイアフレイムと呼ばれし、一族武芸者の双塔!容易に下せると思うのならばやってみるがいい!!」


あくまでも勝つつもりの発言に2人とも怒り心頭で声を荒げる。


「【熔炎のガイア】!!ガイランド・アレイアームド!」


「【煙炎のフレイム】!!フレアランド・アレイアームド!」


2人はそれぞれ独特の構えを見せる。


「「いざ、参る!!!」」


ガイアランドは鉤状にした拳先を伸ばした、両腕を斜め前、やや下方向に手首で交差させた仁王立ちの構え。


フレアランドは張り手にした掌底で両腕を広げて、まるで歌舞伎の見栄か、相撲における不知火型の構えのような半身の姿勢をとる。


「硝煙火炎!」


フレアランドが肩から突進を仕掛け、ノアの目前で半身の奥側である右手の張り手を突き出す。


当然、それだけではなく、掌底の中心から溶断用のバーナーのような大量の火花を伴う炎が噴き出る。

噴き出た炎からは同時に多量の煙も展開され、ノアが立っていた一帯が全て消し飛ぶ。


しかし、ノアは事前に動きを先読みし、すでにフレアランドの背後に回っていた。


「鳳火焔!!」


ガイアランドはすかさず、ノアに向かい肩を入れた踏み込みを行う。

踏み込んだ。足元から溶けた鉱物が鳳凰のように形どられて噴出し、ノアへと向かう。


「(意図が見えているが付き合うか…)」


ノアは飛び上がってこれを回避した。



が、しかし、



「熔焔拳撃!!」


「噴煙烈斬!!」


飛び上がるノアに2人がそれぞれの拳に異能を伴って追い縋ってくる。


「(避けられない!)」


アレスは広間で映し出される炎の幻像で先頭を見ていたがいてもたってもいられず現場に駆けつけていた。


「アンク君!!」


アレスは叫ぶが、その目が驚愕に染まる。


「うぉお!りゃあ!りゃぁ!りゃあ!」


「ぜぇあ!じゃっ!じゃっ!じゃぁ!」



2人の巨漢に空中で囲まれてもなお、涼しい顔で、

舞い落ちる羽や枯葉のようにヒラリヒラリと躱していくノア。


「バカなっ!」


「ガイア!もっとだ!」


拳だけでなく蹴りも交えて仕掛けるも結果は変わらない。


ついには3人が地面へと辿り着いてしまった。


「終わりかな…?」


ノアは猛追してきている2人にしかし先ほどの空中戦が仕留めどころだったであろうと言うことを感じ取った。


「ほざけ!!」


ガイアが激昂して先ほどまでは踏み込まなかったさらにもう一歩奥へと踏み込んで仕掛ける。


甘い(・・)


ノアはその過ちを見逃さなかった。


小柄なアンクの身体を捉えるため、下方向へと重心が崩れ自身の体重の乗った一撃をかわしつつ、

伸ばした腕に肩から支えるように直列に骨を入れて、地面と突っ張り棒のようにした状態で、勁を込めた一撃をガイアの鳩尾に叩き込む。


「がっ!?」


崩れ落ちるガイア。


「まだやる(・・)か?」


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