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*この投稿はフィクションです。
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外園小百合、中薗美海と立花真知子が、スーパーの事務所に、ノックして入る。
ドアを開けると、奥の方に、中薗美海には見覚えのある店長が、こちら向きに回転椅子に腰掛けており、手前には背中を向けて、中薗大地が丸椅子に、拳を握った両手を膝上において、座っていた。
「あれっ、早いですね。今連絡を入れたばかりなのに」店長が少し驚いたという顔で、入ってきた三人を見回す。
「なにかあったんですか?」年長者の外園小百合が、店長と中薗大地の間に入るように、立った。
話は私が聞きますと、行動で示していた。
「いや、中薗君が、ちょっとお店のものをですね・・・」
「俺、やってないよ」小さいがはっきりした声で、中薗大地が、店長の言葉を遮った。
店長は中薗大地を覚えていた。
あの、駆け落ちの、息子だ。
「今回は、初犯ですし、大事な時期のお子さんでもありますから、次回から気をつけていただき、おうちの方でも、しかるべき対応をとっていただければ、こちらとしては、お帰りいただいて構わないんですが」なんだか、歯に物が挟まったような言いぐさに、なおかつ、「初犯」という言葉に、カチンと、きた。
店長は、罪を認めて、謝罪の言葉を聞きたいんだと、言いたげだった。
「やってないんだ。信じて」言葉の最後は消え入りそうだった。中薗大地は、俯いて、奥歯を噛んだ。
両手を握りしめて見守る中薗美海の横から、立花真知子が、中薗大地の後ろにスッと歩み寄って、彼の肩に、手を置いた。
「信じてるよ」小声で囁く。肩をつかむ手に、力が入る。
「初犯って決めつけてますけど、大地は、やってないっていってますよね?」外園小百合の言葉も自然、強くなる。
「失礼ですが、あなたは?」初めて見る顔に、店長が訊ねる。ニヤついた探るような目付きだった。
一瞬、二人の関係ってなんだろと、考えたが、
「大切な親友です」と、答えた。
「ほぉー」上から目線に、外園小百合は、パーカーの中に手を突っ込んだ。ギュッと握りしめる。
「お父さんは、お仕事が忙しいのかな?確か、おまわりさん、だったよね?」
言い回しが、いろんな含みを持っていることは明らかで、外園小百合は、目を見開いて、右手をそのまま伸ばして、右の壁に、ぶち当てた。
白塗りの、コンパネの壁が、凹んだ。なぜなら、拳には、メリケンサックがはめられていたからだ。
それに気づいた、店長が、ただ者ではないなと、すぐに察して背筋を伸ばす。
驚いたのは、店長だけではなかった。中薗兄妹も、立花真知子も、凹んだ壁を、凝視した。
「失礼します」ドアから、制服姿が入ってきた。最初はガードマンかと思ったが、
「中薗大地の父です」、だった。
つづく