出会い 2
本日2回目!!
(追記10/4)前に前書きで報告した気分転換の新作を先程投稿しました!
*新作*
俺でなきゃ見逃しちゃうね ~圧倒的なモブ感満載な俺が異世界で旅団を作ろうとしたんだけど誰か助けてっ!~
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そして翌日。
「昨日は最悪だった。せっかく初のブレイバーに出会えたのに…」
朝から邪魔者への恨み言をブツブツと言いながら大通りを中心にウロウロと歩いていた。今日の目的はあの4人組を探すためだ。
「恐らくはまだこの拠点にいるだろう。今は森嵐の時期だし、少なくともあと3日はこの拠点にいるはずだ」
この第126拠点は環境があまり良くない。
そもそもこの世界は総合的な環境は良くないが、それを代表する自然現象【 魔嵐 】がそれを物語っていた。この聞きなれない魔嵐は春の時期にここから北に位置する森から訪れる突風のことで、魔力をふんだんに含んだ風がまるで嵐のように北から吹き荒れることからその名がついた。
この魔力を含んだ、というのが曲者で、特に魔法を使う者にとっては天敵ともいえる現象だった。周囲にありとあらゆる周波帯の魔素周波数が巻き起こり、魔法効果を阻害してしまうのだ。その威力は魔道具にも及び、この時期は魔嵐対策を講じていないと役に立たないガラクタと化してしまう。
拠点地周囲の環境としては一番魔物が少ない時期とも言われ、魔狩人たちはこの時期に武器や防具のメンテナンスや体のお手入れを行うことがこの拠点での常識として位置づけられている。なお、この第126拠点は高い壁に上空は魔導シールドを完備しており、ほぼ100%影響をカットしていた。
今日も遠くから重く響く風の音が聞こえてくる。
そんな中神鋼は宿屋を中心に周囲を散策していた。この時期は魔狩人たちが長期滞在する季節でもあるので、データ集めのためでもある。
自宅を出てメインストリートを通過し、宿泊施設が多く立ち並ぶエリアへ向かうべく商店街を通り抜けようとしていたそんな時であった。たまたま近くを通りがかった鍛冶屋から怒鳴り声が響き渡り、神鋼は「おや?」と首をかしげる仕草をとる。
「そんなはずはねぇだろうがよっ!! そんなもんは聞いたこともないし、俺を嵌めようって寸法かっ!!」
何事か、そう思い鍛冶屋の方へ向かうと鍛冶屋の親父と魔狩人らしき4人組が言い争っているのではないか。鍛冶屋の親父が手にしているのはロングソードで、その刃面を指さして何やら激論を交わしていた。
「両刃のロングソードか。……ん?」
一般的なこの世界によくある形状の両刃タイプのロングソード。
ぱっと見だが、金属の磨きこまれた表面の光を見て最近作られた物だと推測される。握りの部分もまだ馴染んでないせいか真新しさが見て取れる。
特にこれといった特徴の無いロングソードではあるが、丁寧に作られたのだろう、そう神鋼は感じ取る。そう感じた理由は丁寧に鍛えた鉄独特の鈍い光をそのロングソードは湛えていたのだ。
いい仕事だな、そう思った直後、神鋼の目に僅かな魔素の痕跡が目に留まった。明らかに人為的に付けられたその痕跡に、一つの懐かしい記憶を思い出す。そしてそれに引き寄せられるかのように鍛冶屋の親父の下へと向かった。
「だぁかぁらっ!! それは【 ねずみ 】のとこで発注した一品物なんだよ!! 魔鋼で出来た剣を砥ぎに出したらなんで普通の鉄製ロングソードになるんだよ!! すり替えやがったな!!」
「なにをとちくるったこと言ってんだこの若造がっ!! 俺が預かった時から既に鉄製だったんだよ!!」
両者の言い分は平行線を辿っていた。
そんな中、その場にはそぐわない、凛とした幼子の甲高い声が意外な場所から聞こえてくる。
「ふむふむ。素材は悪くないですね。きちんと処理をした鉄を使っている。組成割合も悪くない。金属という物をよく理解している者が特性を上手く掴んで剣を鍛え、そして作り上げてますね」
「「はっ?」」
言い争っていた二人が息を合わせ、示し合わせたかのように声の方向、即ち足元を見ると子供がロングソードを見ながら呟いているのではないか。
「お、おい? どこからガキが紛れ込んできたんだ? 店主、お前の子か?」
言い争っていた相手、剣士風の男に言われた鍛冶屋の親父は首を横に振った。
「俺の子じゃねぇ! うちの子は女だしそもそも年齢がちがうっ!! ってか坊主!! こんなとこで何してるんだっ! 仕事の邪魔だからさっさと出ていけ!」
驚いた顔を見せながらも出ていけと手を振り追い払おうとする鍛冶屋の親父を無視するかのように神鋼の見分は続く。
「確かにこの素材構成は間違いなく鉄、それも人為的に調整された鉄ですね。この数値を見る限りは…あぁなるほど。使い手は技術よりも力で押すタイプでしたか。それで折れないように粘りを強く意識した配合になっているんですね。……おや? この痕跡は…」
周囲の状況などお構いなしにステイタスUIを使用した解析を行い、得たデータを基に検証をすすめる神鋼。そんな様子に大人たちは「なんなんだこの坊主は」と啞然とした表情を浮かべていた。
「やはりあの痕は………コーティングですか。うっすらとですが刃面に魔素が沈着した痕跡が確認できます。魔素だけをコーティングしたところで得られる物など何もないのでしょうが。……試してみますか」
解析画面から別のウィンドウが立ち上がる。そこには【魔導鍛冶錬金】という文字が書かれていた。
「魔導鍛冶錬金モード、展開」
神鋼は周囲にも聞こえるかのように言葉を発すると、間近に置かれているロングソードの周囲を魔法陣が覆った。
「な、なんだ…これは…」
急に現れた魔法陣に少しだけ身を強張らせる周囲をよそに魔法陣は徐々に回転の度合いを強めていく。
そんな光景に周囲の大人たちは一体何が行われるんだ、そういった表情を浮かべて神鋼を凝視した。
その直後、ロングソードの周囲には球形の形を取るべく魔導文字を紡ぎはじめ、積層型魔法陣が構築されていく。それと同時にロングソードを覆う積層型魔法陣が上空へ移動し始め、ロングソードもそれを追うようにと共に宙に浮いていく。
「とりあえずですが魔素のみを刃面にコーティングしてみますか」
神鋼の手には光で出来た格子状の紐がまるで第二の骨格を表すかのように纏わり着いていた。その光の骨格、いや魔導操作手動盤を慣れた手つきで巧みに操っていく。
「コーティングスタート」
その掛け声と同時にエンターキーを軽快にタッチすると、積層型魔法陣が仄かに点滅を繰り返し、ロングソードの周囲には光の煤みたいなものが出現し始める。それが刃面に纏わり着くと、発光を繰り返していった。
「………」
鍛冶屋の親父は顎が外れるくらいに口を大きく開けたまま凝視していた。
「コーティングは終了しました……恐らくは…」
神鋼は苦笑いにも近い表情を浮かべると同時に次の言葉を言いかけようとした時、すぐ脇から神鋼以外の手が伸びてロングソードの束を握りしめた。
「こ、これだよっ!! 俺がここに預ける前はまさしくこの色っ! 薄紫の色だったんだよ!!」
「な、なんだと?!」
鍛冶屋の親父は驚いた顔を見せた直後、神鋼の方へ向き直った。
「お、おい! 坊主っ!! 今のは一体何なんだっ!! 何しやがったんだっ!」
「そ、そうだ! おいガキっ! どうやってこの状態に戻したんだ?!」
二方向から矢継ぎ早に質問が飛ぶ状況に神鋼は顔を右左と向けて「落ち着いてくださいよ。あと唾飛ばさないでください」と嫌そうな顔をしながら少しだけ距離を取った。
「簡単に言うと、ロングソードの状態を解析して、使う前の状態へ復元しただけです。まぁ完全に、とは行きませんけど、かなり近い状態に戻すことが出来たと思います」
「て、てことは俺がオーダーした状態のまま、即ち俺の言っていることは間違っていなかったってことだな!!」
剣士風の男が発する言葉にギョッとした表情を浮かべた鍛冶屋の親父はすぐさま「何言ってんだ!! ここに持ち込まれた時はそんな発色してなかった!」と反論を行う。
お互いに引かないこの状況に神鋼は「お二人が言っていることは決して間違ってはいないんですけどね」と事もなげに呟いた。
「ど、どーいうことなんだ?!」
「どうもこうもないかと。買ったときは復元した状態で、ここに持ち込んだ時はただのロングソードだった、そういうことですね」
その言葉に今度は鍛冶屋の親父は顔色を急転させ、満面の笑みを浮かべる。
「そうだろうそうだろう!! 坊主っ!! よく言った!! まさしくその通りだぜコンチクショウっ!!」
へへん!と鼻を鳴らして腕を組む鍛冶屋の親父に対して剣士風の男は「そんなわきゃねーだろうが!! おい! ガキっ! 適当なこといってんじゃねーぞ!!」と鍛冶屋の親父と神鋼二人に対して凄む素振りを見せる。
周囲にいる大人たちは年端も行かぬこんな子供の言い分に疑いもせず、この状況で違和感を誰もが感じてはいなかった。こんな子どもの意見が状況を右に左に動かしている状況に誰も感じていないのだ。そんな中、神鋼は意に介さず話を続けた。
「別に適当なことを言っているわけではありません。順を追って説明しましょうか」
そう言うとロングソードを剣士風の男から受け取り、刃面の上部に指で撫でると、まぁなんということでしょう! 指先で撫でた部分が銀色に変わるのではありませんか! 状態になり二人ともギョッとした顔を再度見せるのであった。
「先程も言ったのですが、このロングソードは完全に作られた状況を再現しているわけではありません。今そのロングソードには魔素を固形化した状態で0.1%コーティング、というよりも刃面の上部に乗せているだけで、結着させているわけではないのです。恐らく納品された時にはもっとしっかりと固着させていたと思いますが、説明のために敢えて弱く固着させています」
「ど、どーいうことなんだ?」
「ここからは推測なのですが、このロングソードには受け渡された当初、魔素を使用したコーティングがなされており、恐らく手に入れた時はまだコーティングが完全であったため薄い紫色をしていただけだと思います」
「……まさか…」
剣士風の男は少しだけ焦りの表情を見せる。
「もうお分かりですね? これ魔鋼製とみせかけた模造品、いや、ただのロングソードです」
模造品。その言葉に少しだけふらついた素振りを見せた剣士風の男は、ロングソードを掴んで絶句した。
「お、おい…な、なんでそんなことが分かるんだ?」
鍛冶屋の親父が言ったその言葉に神鋼は口元から少しだけ白色を見せると
「鍛冶士ですから」
と毅然とした立ち居振る舞いで言ってのけたのであった。
【※ここまで読んで頂いた皆様へ大事なお願いがあります※】
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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