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神鋼のソウルスミス  作者: こぬさん
第一章  陸王の息吹は春の訪れと共に吹き荒ぶ
5/40

魔導文字

よろしくお願いします!!


(追記10/4)前に前書きで報告した気分転換の新作を先程投稿しました!


*新作*

俺でなきゃ見逃しちゃうね ~圧倒的なモブ感満載な俺が異世界で旅団を作ろうとしたんだけど誰か助けてっ!~


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 それから数週間、神鋼しんこうは至って普通の赤ちゃんを演じていた。


 両親から言葉を話すよう促されても、「だぁ…?」と必殺のかしげるポーズで難を乗り切っていた。

 そのうち両親も「やっぱりあの日のことは偶然が偶然を重ねたことだったんだよ」と思い直すようになる。神鋼しんこうはなるべく普通の1歳児を演じ続けていた。


 この世界がどういった世界かわからない以上、リスクのある行動は控えるべきである。


 これは神鋼しんこうがこの世に転生し、生後8か月位経った時に決めた方針である。目立ってろくなことは無い。ましてやこんなファンタジーの世界では尚更である。

 

 それが自分自身の命取りになることだってあるかもしれない。だがこの先我が道を進んだ場合、どうしてもいい意味でも悪い意味でも目立つことがあるかもしれない。


 そんな時のために生き抜く力を蓄えておこう、そう決めていたのだった。


 そしてそんなさなかにまさかの出会い、魔導文字との出会いである。

 これは神鋼しんこうにとって天啓が降りたにふさわしい出来事だった。


 『神は俺にこの世界で魔導文字を利用して事を成せと告げている』


 本当にそんな事を告げているのかどうかなど、それこそ神のみぞ知る、である。だがそれにしては出来過ぎなほどに、そう都合の良すぎる展開に神鋼しんこうは全く疑いすらしていなかった。



 それから三日経過した。


 つぶらな瞳で本(初級魔法構築指南1巻)をねだる愛息ヨウの攻撃に音を上げたマディは一時的に本の所有者に頼み込み貸してもらい貸し与えていた。そして三日間かけて熟読した神鋼しんこうはとある結論を下した。


 「この本は………クソだな」


 なぜそう断じるに至ったのか。


 それは書いてある内容が稚拙で、初心者以下のレベルにまとまっていたからに他ならない。それに誤字や式自体が間違っているものも多く、魔導関数をちゃんと理解していることすら怪しいレベルであった。


 あぐらをかいた1歳児はふてぶてしい態度で本を見下ろしている。


 「しかし…この指南書は魔術協会が指定する公式の教書として採用されているとか言ってたな…」


 こんなレベルで教書などとワールドゲートで発表したら二度とゲームが出来ないレベルであろう。

 そしてこの教書から察するに、神鋼しんこうは新たな危惧を感じていた。


 「これがこの世界のレベルだとしたら…相当にやべぇな」


 こんな間違ったものを載せてそれを参考に新たな魔導式に基づく魔法などを構築したらどうなるだろうか。間違いに間違いを重ねた、ある意味積み木で高い塔を作るみたいにいびつなものが出来上がっているに違いない。


 「ふむ…これを正そうなんて考えたら何十年かかることやら」


 1歳児の赤さんは額にしわをよせながら深いため息を吐いたのだった。



 それから1年が経過した。

この1年はこの世界がどういう場所なのかを収集した1年といっても差し支えがないだろう。


 そんな神鋼しんこうも無事2歳を迎え、周囲からは『相当に変わった子』という評価を頂いている。1歳半を過ぎたあたりから堂々と歩き始め、2歳に満たない時点で言葉を流暢に話せることが両親にバレて現在に至っている。バレたきっかけは独り言を母親に拾われたからである。


 バレたものは仕方ない、そう思いむしろ『赤さんでも喋れるんだぜ!俺って賢いだろ?!』路線を目指した神鋼しんこうだったが、むしろ2歳児が闊達かったつに喋る姿に人々は恐れすら抱くという結果になる始末だった。


 「……解せぬ」


 しかしというかやはり両親は俺に対しては世間の評価とは真逆で、「この子は将来大物になるぞ!」と絶賛親馬鹿中であった。そして最近ではネリサが文字を俺に教えてくれ始めており、何とか本が読めるレベルにまでなっている。


 「文字が読めるようになって改めてこの教本見ると……ホントにクソだな」


 記述された魔導式に対して解説が併記されていたのだが、これがまた的外れな解説で、正しいことを記述している箇所を探すことの方が大変だった。


 「こんなに長い魔導式組んでおいて得られる結果がコップ一杯の飲み水確保だなんて……」


 俺なら3行でまとめられるレベルの魔法を、A4サイズで15ページ分の分量にする著者の顔を見てみたいものだ、と最近本気で思い始めている。表紙には著者の名前【J・K・Rocking】と書かれた名前を見て更にため息をついた。こんなでたらめな教書を量産するくらいなら魔法使いの話でもまとめろってんだ。


 そして俺がいる場所についても様々な情報を得ることができた。


 どうやら俺が住んでいる場所は『第126号拠点地』と呼ばれている場所で、ブレイバーと呼ばれる開拓者? 達の活動拠点として整備された場所らしい。第126号と呼ばれている位だから少なくとも似たような場所がここを除いて125か所はあるということだろう。


 確かにこの場所はやたらと露店や買取業者と思われる者が多い。あまり家の外へと散策は出来ていないのだが、やけに防備が整っている印象も持っていた。時折重く響く音も日夜問わず聞こえてたことから、この場所は敵によく狙われるような場所に作られているんだろう。なんて危ない世界なんだと思う。


 周囲の危険性が思っていた以上にある、そう判断した俺は、まず自衛の手段を確立することを第一に考えるようになった。そこで俺は親に紙とペンをねだった。両親は「お絵描きしたい年頃なのね」と言って買い与えてくれたが、そこに書かれた内容を両親は見て何とも言えない表情を浮かべたのは記憶に新しい。


 まとめられた紙束には膨大な量の魔導文字で構築された魔導式、それを使用して組み上げられた魔導関数とその中身が書き記されていた。久しぶりに魔導関数を用いたプログラムを構築するので、忘備録を兼ねて魔導関数の効果や規則について記したのだ。2歳児が一心不乱に書きなぐる様はさぞ両親を不安にさせたことだろう。


 「問題はこの魔導プログラムをどうやって効果発露させるかだが…」


 ゲームではステイタスUIに、構築された魔導プログラムを登録すれば問題なかったのだが、この世界ではステータスUIはない。ではどうやってあのクソ教本に書かれた内容を現実に魔法として効果発露させるのかだが、それは何となくだがやり方は把握できていた。


 神鋼は何も書かれていない紙にキラキラと光るインクを用いて魔導式を記述していく。

 書き終わるとインクが乾くのを待ち、完全に乾いたところで最初に書き始めた先頭文字に手をかざした。


 「ランスタート」


 神鋼の小さな手から仄かにともる光が手を覆うとそれに反応するかのように紙に書かれた魔導文字も光始める。先頭文字から規則正しく次の文字へ光っていき、それは一つのラインとなって最終行の最終文字へたどり着く。すると紙の上にこぶし大の水が発生し、その場に落ちて水溜りを作った。


 「やはりワールドゲートの公式設定とリンクしていたか」


 神鋼しんこうは頷きながら水溜りを見つめていた。


 この1年、世界のことを知ろうとすればする程、どこかワールドゲートと被る設定がチラホラ見える状況に神鋼しんこうは仮説を立てていた。


 それは『この世界はワールドゲートと現実がごちゃ混ぜになった世界説』である。


 今回の実験も元を辿ればワールドゲート内の公式設定からヒントを得たものでもある。それは魔法についての部分で、『魔法とは魔導文字を決められた規則に基づいて記述し、構築したものを魔力で世界に干渉することで発現する力(事象・結果)である』と書かれており、神鋼はここから「この世界も魔法を使うルールが被っているのではないのか」と仮説を立ててたのだった。


 実際に実験は成功に終わった。


 唯一困難だった点は『インクに魔石を砕いて魔導性を高めないと魔力が乗らない』という事実を突き止めるまでだろう。最初は魔導文字に魔力が乗らなくて焦ったが、魔道具で使われている技術を応用するとあっさりとクリアーしたのは今となってはいい思い出だ。


 ちなみにこの魔石を配合した魔導技師御用達の魔導インクはそこら辺で安価に売られている。もちろん両親にねだって買ってもらったものだ。半ば呆れ顔だったのはいつものことなのだろう。


 「ただ一回使っただけで紙が魔力に耐え切れず燃えてしまうのは考えものだなぁ」


 目の前には水溜りと共に焼け焦げた紙が散乱していた。


 「恐らくだが、市販されている魔道具はこの部分を素材を変更し耐久性を向上させてクリアーしているのだろう」


 お手軽なとこで行けば鉄などの金属に魔文字を埋め込んだりすれば恐らく耐久性はクリアーするだろう。


 「逆の発想で言えば使い捨て魔法スクロールなんて需要ありそうだな」


 最近知りえたことと言えば、この世界は魔法よりも魔導技術が発展しているということだ。


 魔法と魔導技術、似て非なるこの二つの言葉は簡単に言えば発動形式が生物由来か無機物由来かの違いだろう。


 この世界では人が魔法を使うには主に二つの方法が取られている。


 一つは人に存在する精神領域内に魔法の魔導プログラムを直接打ち込む方法だ。どうやら特別な儀式を魔法屋にて精神に直接埋め込むらしい。ちなみに有料で金額もバカ高いらしい。


 二つ目は魔道具を利用した魔法行使である。

 これは魔道具に刻まれた魔法しか使えないという点と、魔法に応じて魔力が必要になるため、魔力素養を持った人間でなければ使用することは出来ない。まぁそれも最近では魔力を溜めた魔石で代用する物も出てきているらしい。


 前者と後者には利点と欠点もある。


 一つ目の精神野に直接魔法を埋め込む利点はリードタイム無しで行使できる点だ。ちなみに魔道具は魔法を発動するために少々時間が必要となる。


 欠点としては人の素質次第な所だろう。精神野も領域の大きさが人によって異なり、狭い人もいれば広い人もいる。素質に左右されるという点と、打ち込むには苦痛を伴うため、最近では敬遠されているらしい。


 二つ目の魔道具を使用した利点は誰にでも簡単に魔法を発動できる点だろう。最近では専用に加工した魔石を内蔵することにより、外部から魔力を溜められる仕組みが発明されたらしく、今では魔法使いと魔道士と分野分けされるほどだ。


 ちなみに魔法使いは古臭いとディスられれているそうだ。父マディのパーティーでもあるクラッサは凄腕の魔法使いで火系の魔法を5種類も唱えられるらしい。通常は2~3種類程度だそうで、そのクラッサが赤さんである俺によく愚痴を零すことで仕入れた情報だ。


 もちろん魔道具にも欠点がある。それは使用限度がある点だ。先ほど俺が紙で魔法を再現して見せたが、魔導文字を発動させると必ず魔導抵抗が発生し、その抵抗力に耐え切れない基盤ベースは破損してしまうのだ。単純に硬い素材を使えばいいという訳では無く、魔力と親和性の高い素材でないとそれに耐えきれないため、戦闘用の魔道具はコストが総じて高い傾向にある。そのため使用限度に達する前に魔道具は魔導技師にチューニングを兼ねた修理依頼をせねばならず、その保守費用が馬鹿にならないのだ。


 「ゲームの世界ではそんなこと考えなくてもよかったんだがなぁ。現実はそう甘くないってことか」


【※ここまで読んで頂いた皆様へ大事なお願いがあります※】



ここまで読んで頂きありがとうございます。

拙作ではありますが、少しでも「面白い!」や「続きが気になる!」等々


と心の中に少しでも抱いて頂けましたら


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ぜひこの拙作のモチベーションを維持して頂くためにも、何卒宜しくお願い致します。


(追記10/4)前に前書きで報告した気分転換の新作を先程投稿しました!


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俺でなきゃ見逃しちゃうね ~圧倒的なモブ感満載な俺が異世界で旅団を作ろうとしたんだけど誰か助けてっ!~


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[良い点] このお話を拝読させていただきました。 とにもかくにも設定が素敵です! 魔法というファンタジーを扱いつつも、強い現実感を覚えます。 魔法や魔術が文字列によって確立されるところは、インターネッ…
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