転生。そして…
よろしくお願いします!
(追記10/4)前に前書きで報告した気分転換の新作を先程投稿しました!
*新作*
俺でなきゃ見逃しちゃうね ~圧倒的なモブ感満載な俺が異世界で旅団を作ろうとしたんだけど誰か助けてっ!~
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多分、ほんの少しだけ意識を失っただけだと思う。
それ位に僅かな時間、一瞬とも言える時間だけ意識が無かった俺は、眩い光以外の景色が徐々に目に映っていった。
(んっ……なんだ…?)
すぐに意識を失ったことは分かったのだが、今度は思うように身動きが取れない自分に気付く。それだけではない。声を出そうにも上手く口が動かせないどころか、胸の奥底からまるで嗚咽のような途切れた音しか出せないのだ。
(な、なんだ? 全ての感覚がおかしいというか、まるで鉛のように体が重く動かない…?!)
もぞもぞと身悶えしているとすぐに浮遊感が体を襲う。まるで誰かに持ち上げられたみたいに。
(ひぃっ! な、なんだ?!)
急な感覚と共に今までに感じたこともなかった途轍もない不安が心身を襲う。そして…
「おぎゃあぁぁぁ!! おぎゃあぁぁぁ!!!」
「あらあら。ヨウったら。さっきおしめを変えたのにまたお漏らししちゃったのかしら」
(お、お漏らしっ? っていうか俺なんでこんなに泣いているんだっ?!)
ようやく視力が戻りつつある俺の視界には銀髪が非常に印象的な優しい顔をした女性が映るのであった。
「よしよしすぐにおしめを取り替えてあげるからね」
そういうと柔らかな毛布の上に優しく俺を置くと、手早い手つきでおしめを剝ぎ取り交換していく。
(………)
そして俺は目の前の女性に「そろそろおっぱいの時間ね」という言葉と共に腹は満ち足り、意識は泥のように沈んでいくのであった。
(要するに俺は赤さんになった、と)
常時眠さに囚われるこの不自由な体に抵抗するかのように意識を整えながら考え事をしていた。
成人から赤さんへ転生? してから数週間が過ぎようとしていた。その間俺は一日に意識がある時間がが数時間も無いながらも、現状の整理と置かれた境遇、そしてなぜ俺が赤さんになったのかを考えていた。
これは恐らくだがよくある? 異世界転生なのだろう。
なぜそう断言したのかは分かりやすいほどに周囲の状況が物語っていた。
俺が今いる場所は恐らく文明水準が中世以下、そしてここは辺境の地の村だと思われる。数日に一回帰ってくる男性、恐らく俺の父親だろう人の見なりや話を聞き拾った結果かからそう推測していた。
俺のこの世界の父親はマディと言って、この村の魔狩人と呼ばれる職に就いているそうだ。魔物が蔓延るこの地には必須の職業で、魔物を狩ってそれを村のギルドと呼ばれる場所で卸して生計を立てているそうだ。
ちなみに母親のネリサは元々同じように父マディと魔狩人を行っていたそうだ。俺を身ごもってからは子育てのために引退したそうで、現在この家は父マディ・母ネリサ・子ヨウの三人家族で暮らしている。
暮らしは決して裕福ではない……かといって奴隷並みに不足した生活かと言えばそうではなさそうだ。
魔狩人は危険な分、報酬も多いみたいでそこそこの暮らしは維持出来ていた。
今置かれている立場は整理出来たのだが、俺がなぜ赤さんになったのかは未だ正解どころか理由すら検討が付かない。少なくとも魔物がいるという事実が俺にまるでゲームの世界が現実になった状況に不安と、そして期待を抱かせていた。だがまずはこの赤さん時代を何とかしないとなぁ…
どうやら俺は生後5か月を過ぎたようだ。
食っちゃ寝の生活を数か月過ごしていたが、如何せん意識のある時間が少なすぎて時間があっという間に過ぎてしまっている印象がある。
これまでに仕入れた情報だが、この世界には魔物がいる、そしてそれを退治する職業・魔狩人(恐らくは冒険者みたいな位置付けだろう)がいる、極めつけに魔法が存在する、といったことが重要な情報に位置付けられるだろう。
魔法がなぜ存在するかはこちらに転生してからすぐに判明した。
母親のネリサが夜になると灯り(トーチ)の魔法で部屋を明るくしているのだ。呪文の詠唱もしていたし、それ以外にも夫婦の会話で狩りの話を何度も聞いていた時に魔法のワードが頻繁に飛び交っていることから、恐らく攻撃から守備、治癒などの魔法が存在する世界みたいだ。
魔物に魔法…これは全ての生活をワールドゲートに捧げた廃ゲーマーの俺にとっては朗報以上の何物でもなかった。むしろ待ってましたと言ったところだろう。神様ありがとうございます。
そしてそこから半年が過ぎた。
俺は1歳になり、ようやく立てるようになり、行動範囲が劇的に広がった俺は家の中で歩き回りつつも家の外の情報収集に勤しんでいた。
「こらぁ! ヨウっ! 家の外に出るのはまだ早いわっ!」
ちっ…また見つかってしまったか。
ジタバタする俺の身体を容易く抱えると、ドアから強制的に離され抱っこされたまま食堂まで連れていかれる。
「もう。ヨウったらすぐに目を離すとドアを開けようとするんだから。外は危ないのよ? あなたにはまだ早いわ」
「あぁ~うぅ~」
まだ言葉が喋れない風にかわいく音(声??)を発すると共に殺しポーズの『かわいく首をかしげる』を決めた俺は、母親の抱擁と共に甘やかしモードにと突入していった。
(やれやれ…赤さんも楽じゃないよ)
1歳を過ぎた俺は随分と日中起きていられる時間も増え、考え事をする時間も大幅に確保できていた。
既に自分が置かれている現状は理解・整理出来ており、後はこの世界でどう生き抜いていくかを考えていた。
(この世界は現実だからゲームのようにステータスが確認出来るわけじゃないんだよなぁ)
当初はステータスなど念じれば俺にしか見えないアレが出てくるものと思っていた。
だが現実は厳しかった。そんなものはどこにもなく、ゲームとは違うんだと言わんばかりにお決まりのテンプレ要素は無かったのだ。
俺に与えられたのは前世の知識のみであり、これをどう上手く活用して生き抜くかを考えなくてはならない。
そんなことを考えながら日々を過ごしていたある日のことだった。
いつものように父親が仕事から帰ってきたのだが、今日は珍しく職場の仲間? を連れてきたのだ。どうやら大物を仕留めたみたいで、そのお祝いということで家でささやかながら飲み会が始まったのだ。
(ちっ…うるせーなぁ…)
大人たちのバカ騒ぎは深夜にまで及んだ。
何回か子供が寝てるからとネリサに窘められていたのだが、その効果もほんの少しですぐにバカ騒ぎが始まるのだ。そして朝。小鳥のさえずりが聞こえる中、ネリサはため息をつきながら床に転がっているバカ騒ぎメンバーを見下ろしながら片付けを行っていた。
そんなバカ共を横目に見つつ移動しながら、可能な限りダメ大人の頭を蹴り飛ばしていた。
(クソどもが…愚体をさらしおって…ってくっさぁぁぁぁ!!)
誰か寝ゲロをしていたようで、ネリサは顔をしかめつつ、地味に寝ている輩達のわき腹を足でまるで『邪魔っ!』と言わんばかりに小突きながら処理を行っていた。そんな俺は避難するかのように居間へ転がりこむと、床に落ちていた一冊の本に目が留まる。
(……本…そういやこの家は本が一切無いな)
興味本位で中身をパラパラとめくるも、知らない文字が並んでいた。
(そりゃそうか。俺はまだこの世界の言葉を学んでないもんな。赤さん的天才要素で聞いたり喋ったりは恐らく出来るが。どこかのタイミングで文字を母親から学ばないとな)
何か挿絵でもないかなぁとパラパラとめくっていった時、とあるページに目が留まった。
(ん……んっ? ………んんんっ?????!!!)
俺はそのページに書かれてある文字を驚愕のまなざしで見ていた。
それもそうだろう。何せ俺が一番理解している、いや俺の存在を証明してくれる全てと言い換えても良い、あの文字が羅列しているのだから。
(こ、これは………ま、魔導文字…)
魔導文字。
それはワールドゲート内ではおなじみのゲーム内プログラミング言語を表記するために作られた文字であり、ゲーム内規則に唯一干渉できるアイテムでもあった。
魔導文字はアルファベットをベースに作られた、というか少しだけ見た目を変えた文字であり、極論を言ってしまえばゲーム内の背景を取り込んだプログラム言語といっても差し支えは無いだろう。
そのような物が用意されているワールドゲートというゲームは非常に自由度の高いゲームであった。そしてプレイヤーに対しても行きすぎなまでに奔放主義を強いているゲームでもある。
まずゲームを始める際に与えられる物はゲーム内アバターのみであり、後は全て自分で調達しなくてはならない。それはゲームが開始された黎明期からその仕様で、装備品はもとより、アイテムから装飾品、食べ物から果ては魔法まで全て自分で作り上げるか、作り上げた人から購入するかの2点で成り立っていた。
その中でも重要な要素であるゲーム内の世界構築文字、即ちワールドゲート専用プログラミング言語があった。記述されてある文字のことを魔導文字と公式は定義しており、魔導文字を利用して作られた関数の集合体を『魔導プログラム』と公式からこれも定義されていた。そしてこの魔導プログラムから生み出された結果が多岐にわたる生産物に重要な関わり方をしていた。その魔導プログラムをプレイヤーが利用することにより、更なる根源をいじることが可能という仕組みが取られていた。今ではたくさんのプレイヤーが開発した物を更に便利にと、アップデートを重ねて様々な物が生み出されていたが、何を隠そう神鋼もその筋では相当に有名なプレイヤーでもあった。
神鋼がワールドゲート内で発明した物や技能、魔法は数あるが、やはり最大の発明は魂魄封印技術を大成させた【魂魄魔法】を作り上げたことだろう。これは自由意志(AI)を持ったキャラクターをゲーム内で作成するために必要な核技術なのだが、これまでに存在したことの無い分野だったせいか、製作期間5年もかかってしまった。だが神鋼が手掛けた魔導プログラムの中では屈指の一大魔法体系だった。
魂魄魔法を作り上げた当時はゲーム内で召喚魔法が一大ムーブメントを巻き起こした時代であった。
プレイヤーが召喚する物は多岐に渡っていたが、その中でも使役済みの魔物を打撃要員で一時召喚させる目的が大勢を占めていた。要するに更なる攻撃の一手として活用するプレイヤーが多かったのだが、神鋼はそこから更に一歩を踏み出したのだ。
脆弱なプレイヤーに代わって戦ってくれる武器。そう目指した過程において生み出された魂魄魔法だが、これがゲーム内に大きな衝撃を与えたのは言うまでもないだろう。
神鋼としても自分だけの技術にするつもりもなく、今後の発展性も考えてソースコードを余すことなく公開したのだが、それを本当の意味で理解できるものは世界で5人もいたかどうか。
複雑に絡み合った魂魄魔法は理解するにも困難を極め、そして多種にわたる魔導体系を網羅していないと理解することすら困難であったため、ゲーム内でも最高難度の魔法として認知されていった。ちなみに魂魄魔法だけに限らず、様々な魔法を魂魄魔法に付随する形で生み出し、それを魂魄魔法に組み込んだため現在では魂魄魔導体系と格上げされている。
ワールドゲートというゲームはプレイヤーが世界の規則を変えることが出来て、それを可能とする唯一のアイテムがこの魔導プログラムだった。それほどまでにゲーム内では必須というべき魔導プログラムをまさかこの世界でお目にかかれるとは思ってもいなかった神鋼は、歓喜のあまりに小躍りしたのは余談である。
(おいおいおいおい!! なんでこの世界に魔導文字があるんだっ!! てかこれってゲーム内の魔導文字と同じ仕様なのか?!!)
本に表記されていた魔導文字を丹念にひろっていき、一つの答えを下した。
(……間違いない。これはワールドゲート内に存在していた魔導文字だ。それを基に構築された魔導プログラムも文法や用途も恐らくだが合っているだろう)
恐らくという注釈はつくものの、そこに表記されていた魔導プログラムはとある魔法を行使するために構築されたものであると推察される。挿絵からも効果が把握できたし、今のところ記述も自分が知っているものと比べてかなり無駄があるものの、そこから導き出される効果と相違はなさそうだ。
だが解読するにあたり「おや?」と首をひねりたくなる箇所も多々あった。
所々に無駄な記述が散見されるのである。その箇所にその式を当てはめても何の効果もない、そういった箇所が随所に目立つのである。
(……謎だ。この世界ではそれが必須なのだろうか…しかし…)
神鋼はこの世界における希望を見出したような心境であった。
それは愛してやまないあの魔導文字が、魔導プログラムがこの世界でもいじれるのである。それも今のところ現実と思われるこの世界で、実世界で魔導プログラムを操れるという環境に対して、居るか居ないかわからない神様に生まれて初めて感謝の気持ちを抱いたほどだった。
そんな神鋼が必死に本を、魔導文字を辿り続ける時間も唐突に終わりを迎える。
「こっちも随分と汚してくれたわねぇ。はぁ。シミにならないうちに早く片付けないと」
ダイニングを掃除し終えたネリサが居間を見渡して深いため息をついた。そして掃除に取り掛かろうとしていた所、愛息がまるで息を殺すかのようにじっと立ち続け、熱心に本をめくっていることに気が付いた。
「あらヨウ。ここに居たのね。何してるのかしら?」
母親の問いかけにも反応を示さずひたすらに本をめくっていた愛息の背後にネリサは立つと、一体何をしているのかを覗き込んだ。
「ヨウ…何をそんな熱心に見ているのかし…ら………?!!」
そこには言葉にもならない声をブツブツと上げながら魔導文字を指で辿るその様にネリサは言葉を失う。
「………えっ?」
ヨウの手元にあるのは【初級魔法構築指南1巻】であった。魔法を扱う者が必ず持っている教科書的な存在の本で、この世界では広く普及してある本の一つてあった。ちなみに父親であるマディのパーティーメンバーが必ず携帯していたものである。
愛息の様子に気味悪がったネリサはすぐに本を取り上げる。
「ヨウにはまだ早いわ。でももう本に興味を覚える年齢にきたのね。今度絵本を買ってあげるからね」
周囲が意識の中に入らないほどに集中していた神鋼は、急に本が宙に浮き、視界の外に移動したことでようやく我に返る。そして…ショックのあまりに未熟な精神は悲鳴をあげ、そしてじわじわと涙を浮かべ、大声で泣きだしたのだった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!! か…かえちて…!!!」
必死の形相で母親に取られた本を奪い取ろうとする愛息に戸惑いを覚えるネリサ。
「えぇぇっ!! こ、これは赤ちゃんが読むような本では無いわ…ってえぇぇぇ!! ヨ、ヨウが喋った?!!」
大声で泣き叫ぶ居間の喧騒っぷりに父親であるマディや、酔いつぶれたパーティーメンバー達も目を覚まし始めた。
「おいおい…一体何の騒ぎだ…」
泣き止まない愛息に本を渡すとまるで奪い取るように持ち去り、居間の隅っこで本を読み始めていた。そしてその後マディにネリサから状況を説明すると「えぇぇ? 1歳児が本を読めるのか?!」と同じように驚いていた。
そしてその夜。
「ねぇあなた。ヨウって本当に手のかからない子よね」
ネリサの言葉にマディは頷頷く。
「 あぁ。子供ってのは相当に手のかかるものだって色んな人に言われたが…ヨウは俺らの言葉がまるで分っているかのように聞き分けがすごくよかったな」
「何となくだけど賢いかも? って思っていたけど…まさかもう喋るなんて。それどころか魔導文字を必死に辿ってたわよ…」
その言葉に夫婦は重い空気が漂う。
「まさか…あのお告げがうちの子の…」
マディの言葉にネリサは耳をふさぎ顔を横に振った。
「聞きたくないわっ!! そんなことはあり得ないっ!!」
その夜マディとネリサは夜遅くまで話合いを続けた。
そして睡魔と戦いながら夫婦が話し合う内容を盗み聞きしていた赤さんが
「やべぇな。ついやっちまった」
と年齢に相応しくない悪態をついていたのであった。
【※ここまで読んで頂いた皆様へ大事なお願いがあります※】
ここまで読んで頂きありがとうございます。
拙作ではありますが、少しでも「面白い!」や「続きが気になる!」等々
と心の中に少しでも抱いて頂けましたら
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ぜひこの拙作のモチベーションを維持して頂くためにも、何卒宜しくお願い致します。
(追記10/4)前に前書きで報告した気分転換の新作を先程投稿しました!
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