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神鋼のソウルスミス  作者: こぬさん
第一章  陸王の息吹は春の訪れと共に吹き荒ぶ
39/40

戦いの初鐘は鳴り響く 4

お待たせしました。

よろしくお願いいたします。

 見上げるはまるで大きな建造物を見るような心地で神鋼しんこうは視線を遥か上へと向けた。

 その巨躯はこれまで見たことの無いスケールであり、これが生物なのか? と半信半疑になりつつも一行は進みようやく足元付近まで来ることが出来た。


 「凄まじい魔力ですね」


 ショウマが冷や汗をかいていた。ハイムに至っては声が出ない程に顔色が青く染め上がっていた。だから来なくていいと言ったのに…


 「これでも先程までは落ち着いた方だ。その時は我らも必死で身を潜める他手立てが無かった程だ。それでも耐えきれる、いや、生き残るに五分以下であったが」


 顔を僅かに顰めさせながら答える猿波に神鋼しんこうは余程の戦いがあったと理解した。

 そして恐らくは先程言っていた『邪魔するなにか』とはイザナギと戦いになる程の強敵であることは容易に想像がついた。


 「それで何か分かったことはあるか?」


 着いたばかりの神鋼しんこう達へ早々に促す猿波に相当焦っているのだな、と肌身で感じてしまう。


 「まだはっきりとしたとこまでは分かりませんが、何によって精神汚染が引き起こされているのか手掛かりは見つけました。『瘴気』という言葉にお心当たりはありますか?」


 「瘴気、だと?」


 猿鋼は猿波を見る。猿波は頷き、「多分アレ…だな」と短く答える。


 「まだ我らも断定出来る程に知っている訳では無いのだが…恐らくは異次元世界からやって来たと言われている『悪魔種』だと思われる」


 「悪魔種、ですか」


 神鋼しんこうは『悪魔種』という言葉に眉根を潜めた。

 ワールドゲート内で実は悪魔系魔物は存在しておらず、バックストーリーで記述があった程度で実際に魔物として設定がされていないため神鋼しんこうでもそれ以上知っていることは無かった。


 「左様。我らも詳しくは知っておらぬのだが猿王猿尽様から聞いた話だとそういう魔物が過去に数回、この世界へと干渉したことがあるらしいのだ。その時は当時の王種が撃退にあたったそうなのだが何せ相当の昔の出来事。今は語る者も少なく真相は猿尽様位しかわからぬだろう」


 「まぁ…悪魔系統の魔物であることは間違い無いのでしょう。問題は対応方法ですが…結論から言うと出来なくも無い、といった所でしょうか」


 その答えに猿波と猿鋼はお互いに見やってその後神鋼しんこうへ驚愕の眼差しを向けた。


 「な、なんとっ! お主これに対処可能なのか??」


 「やってみないと分からないですが…干渉することなら可能です」


 神鋼しんこうがそう答えると二体の猿は大きく頷いた。


 「では早急に頼む。ここでイザナギが倒れることは全力で避けたいのだ」


 「であれば早速この付近に強力な結界を張ろう。お前達二人は周囲の警戒を行え」


 猿鋼の指示に慌てて頷いた二人は抜刀し周囲を伺い始めた。

 俺はというと魔導錬金モードを立ち上げてとある項目をタッチした。


 『魂魄錬成』


 魔導錬金モードの一つでありここに転生して早い段階で理論化に成功した魂魄理論を魔導錬金モードに搭載していたのだが…使ったことは一度もなかった。


 この魂魄錬成は簡単に言えば『魔物の魂魄に手を加え、好みの特性とエネルギーを創り出す』ことを目標に開発された手法であり、特殊武装でもある神鋼装備に使用するための魂魄をカスタマイズし、封印するために体系化された理論であった。


 高出力な武装を作るにはゲーム内で設定されていた【内包エネルギー量】を必要量満たす必要があり、それが不足してしまうと高性能武装が作れないためだった。神鋼装備に必要な内包エネルギー量は常軌を逸した量であったため最終的に行きついた先が魔物のエネルギーを使う、という考え方であった。今考えてみるとよくその手法を確立出来た物だ、そう思う。


 だが今説明したのはあくまでもゲーム内での話。

 この現実異世界では正しく人としての倫理を問われる、言わば神の領域に手を出すことになる手法であるため実験すら躊躇していたのだ。


 とりあえず理論家出来るかどうか、そして魔導錬金モードに機能としてカスタマイズ出来るかどうかまでを目標として無事、導入成功したわけだが…試運転すらしていないためこれを成功と呼べるかどうかはとても怪しかった。


 そもそもゲーム内通りに生物の魂を弄ることが出来るのかがとても怪しいのだ。

 だが…ここに来てぶっつけ本番でやる羽目になるとは…まぁ王種だから簡単に弄れるとは思ってはいない。魂魄の格が違う相手にどこまでやれるのか分からないがとりあえず現状どうなっているのかを把握するくらいまでは頑張ってみるか、そう思い魂魄錬成モードを立ち上げた。


 対象を指定するカーソルが出現する。

 これは想定通りのシステム手順であり、目標を目の前の【陸王亀イザナギ】と設定した。

 さて、どうなるのか…俺は開始ボタンをタッチした。



 .....Access....rute....clear....OK

 ...........S.S System Run.......OK

 ......Gate Open?................OK

 < S.S System mode type B START >


 「はっ?」


 何かと繋がった。

 直感的に感じた。

 『この世界とはまた違う世界の扉』と繋がった、様な気がした。


 そしてすぐに訪れる大量の情報が頭の中、というよりも俺の精神を直接占めて行く、そんな言い知れぬ不安が胸中を駆け巡った。


 それは一瞬の出来事。

 砂時計の砂一粒が落ちるよりも短い刹那の出来事。

 だが俺には永遠に等しい時間を味わったような気がした。


 ゴトッ…


 少しだけ身じろいだイザナギの周囲に山積してある瓦礫が崩れた音にハッと我に返る。


 「な、なんだったんだ…」


 そして俺の目の前には見たこともないウィンドウが空に浮いていた。

神鋼しんこうは咄嗟に周囲を見渡すと光の格子が球体を形作り、その球体の中心に俺は居た。


 「これは…何かのコクピット…か?」


 昔見た古典的なロボットアニメのコクピットを模したようなデザインが俺の周囲を満たしていた。

 手には魔導操作空手動アクティブエアキータッチに似た装置が取り付けられている。

 指を動かすとウィンドウが感覚的に移動を開始する。何回か動かすとその操作方法がまるで昔から知っていたかのようにやりたいことの操作を次々と叶えてくれていく。


 不思議な感覚に若干の戸惑いを覚えつつもとりあえず目の前のイザナギに接触した。


 魂魄に触れる。


 すると急に意識だけを飛ばされたかのような錯覚に陥った後、周囲が闇に包まれた。

 空中に浮遊しているような心地に違和感を覚えてしまう。身体は遠くにあるのに精神だけがどこかに飛ばされたようなそんな気分。


 そして目の前にはその闇を照らし出す金色の炎が在った。

 それは、それはとても大きな、そして偉大な命の波動を湛えていた。

 無意識に跪いてしまうような気分を抑えつつ俺はイザナギの大きな生命の根源を観察していった。


 そして一言神鋼しんこうは言葉を発した。


 「なんだんだこの黒い炎は…」


 金色の炎、すなわちイザナギの生命の根源の周囲に黒炎が纏わり付いていた。

 そして直感が告げていた。アレには触れては行けない、と。


 明らかに地雷とでも言えそうな黒い炎が纏わり付いて、そしてどうやらゆっくりと浸食をしているようにも見える。


 直感以外の何かが欲しい、そう思った時、目の前にはあのウィンドウ群が周囲に現れていた。


「 これはこの魂魄モードの操作群、いや専用アプリといったとこでしょうか」


 様々な機能を持ったその魂魄アプリの内、解析<ANALYSIS>をタッチし、入念に状況を調べ上げて行った。


 「浸食系精神魔法と断定して問題なさそうですね」


 あの黒い炎は敵が放った魔法、それも精神に対して干渉し同時に浸食を行う魔法だと解析結果が示していた。


 「そしてこの魔法はただ浸食しているだけでは無い。精神的な繋がりが形成されてそこへエネルギを送っているのですか…吸収系の効果も備えているとはとても厄介ですね」


 神鋼しんこうは思案する。

 そして時間が思った以上に無いことに対して様々な対策を練り上げていく。


 この黒い炎は想像以上に強力な魔力を維持しており、それもイザナギに対して効果を発揮しているということが相当に厄介なことであった。人の身では到底保持することが出来ない命の量に対して攻撃を仕掛け、そして実際に効果を上げているのだ。

 想像以上にこの使い手は厄介、そう、王級王種のイザナギと互角に渡り合える力を持っていることが取るべき対応の手を少なくしていった。


 「一番やりたくない手ですが…やるしかないのでしょうか」


 とりあえず皆にこの話を伝えねば、そう思い周囲に意識を向けた時、急速に精神が引き戻される。

 そして神鋼の目の前にはあの大きな図体を誇るイザナギの外殻部分が在った。


 「ん? 小僧…どうした?」


 猿鋼が俺の視線に気付いて声を掛ける。


 「ちょっと皆さんに相談したいことがあります」

【※ここまで読んで頂いた皆様へ大事なお願いがあります※】


ここまで読んで頂きありがとうございます。

拙作ではありますが、少しでも「面白い!」や「続きが気になる!」等々


と心の中に少しでも抱いて頂けましたら


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