戦いの初鐘は鳴り響く 3
遅れてすいませんでした!
そして明日は投稿お休みします。
ご了承ください。
「し、師匠?」
「あ、主?!」
少しの時間だけ呆けた素振りを見せていた神鋼の様子に気付き戸惑いながらも二人は話しかけるとようやく神鋼の顔に血の気が戻り始めて行く。
「あ、あぁ。すいません。ちょっと絶望していまして」
「ぜ、絶望?!」
「あ、主っ? ぜ、絶望とは一体…?!」
二人のことは無視し目の前の光景を一旦忘れよう、そう思い踵を返そうとした時、陸皇亀イザナギの様子が少しだけおかしいことに気付く。あの黒い靄は一体?
じっと見据えて何かに気付いた神鋼は魔導錬金モードを立ち上げた。
即座に解析に入ると「ん?」と疑念の声を上げる。
「イザナギには間違い無いのですが…陸王亀ですか。ステイタスはほぼ解析不可ですが…スキル構成に【 国産み 】が無い。それにこの【 神魔 】や【 創生 】とは一体どんなスキルなのでしょうか」
少なくともゲート内でのイザナギには神魔や創生と言ったスキルは確認されていなかった。国産みがあまりに強力なスキルであったため、それ以外に目が向かなかった、ということが考えられなくも無いのだがスキル名がやたらレア感満載であったため見逃す訳も無いはずだ。
その他の項目を確認していくと状態の部分に目が留まった。
「精神…汚染?」
もしかしてアレのせいか?
陸王亀イザナギの甲羅の部分に何やら黒い靄が纏わりついており、一見するまでもなく嫌な雰囲気を周囲に醸し出していた。
「どうも…ゲーム内とは勝手が違うようですね。しかし困りましたね。コレ、どうすれば良いのでしょうか」
その時であった。
三人に気取られることが無く後方から声が掛かった。
「今はあの得体も知れぬ異世界の悪魔と拮抗状態にある」
後方からいきなり声が掛けられた三人は驚き様に振り返った。
「ふむ…人族がこの王域に、それもこの状況で足を踏み入れることなぞ出来ぬ、そう思っていたが…随分と人の領域を逸脱しておるな」
神鋼を見て呟く大柄の猿に三人は言葉を発することが出来なかった。
だが一番最初に立ち直ったのはショウマだった。今一番何をなすべきなのかを思い出すと、即座に神鋼の前に立って剣を抜いた。
「き、貴様っ!! 何者だっ!!」
その声に神鋼とハイムは目の前に立つ二体の猿へ身構えた。
「驚かせたか小僧共。だが生憎とお前達の相手をそうやってもおれぬでな。物見遊山で来たのなら…早々に立ち去るが良い。今は落ち着いたように見えるが時期に拮抗は崩れる。その時お主ら如きでは一瞬で塵と化そうぞ」
今度は後方に立っていた細めの猿が声を発した。
何やら物騒なことを言い出すこの状況にショウマが目で『どうしましょうか?』と訴えかけていた。
身の丈2メートルは優に超えて更に目を見張る程の筋骨隆々っぷりな大きな猿と小柄な猿 ―とは言っても180㎝以上はあり人間だと大柄の部類なのだが― が人の言葉を喋っている状況に三人は困惑してしまう。
神鋼はショウマとハイムの狼狽え振りから『人語を操る猿』というものはこの世界の住人から見ても特殊であると察せられた。
怪しい猿には間違い無いのだが、一向に敵意を見せていないことから一先ずはこの状況を知ってそうなこの2体の猿に対して情報収集を行うと決める。
「ご忠告ありがとうございます。こちらも確認したいことが住み次第、この場から離れる予定ですが一点聞いても良いでしょうか」
神鋼の言葉に猿鋼は猿波をチラリと見る。
猿波はそれに頷いて答えた。
「ありがとうございます。あの…イザナギは覚醒している、そう受け取っても良いのですね」
「あぁ。完全覚醒している。我らもなぜ覚醒しているのか困惑しておるが…ちょっと待て小僧」
猿波は途中まで答えて、神鋼の質問の違和感に気付き、言葉を止めた。
「なぜ…あの魔物を見てイザナギと分かったのだ? 人族にアレを見て即答出来る者なぞ皆無。小僧…貴様何奴だ?」
友好ムードが一転してまるで針を刺すかのような視線にショウマは身構えた。
「何といえば良いのでしょうか。一つ言えることは…完全覚醒したイザナギと昔戦ったことがある、そう言えば…納得してくれるのでしょうか」
その答えにショウマとハイムは「?!」と顔を見合わせ、目の前に相対する猿波は顔を顰めさせた。
そして猿鋼を見て頷いた。
「まさかお前…ウチの悪戯小僧と同じ…異世界出身なのか?」
猿波の問いかけに神鋼は首をすくませた。
「まさか…同郷出身者と言えば良いのでしょうか。そんな方をここで聞くことになるとは。もちろん僕の様な境遇の方が必ず居るとは思ってはいましたが。因みにその悪戯小僧さんはここに来ているのですか?」
猿鋼は首を横に振って答えた。
「あいつはまだ外の世界に出るレベルでは無いの。修行中の身だ小僧」
「そうでしたか。まぁ良いです。確認したかったことは以上です。ありがとうございました」
そういうとお辞儀をしてショウマとハイムを見やった。
神鋼はここで出来ることはもう無い、そんな空気を読んでショウマとハイムは剣を納めた。
「最後に一つ、どうもあのイザナギは精神汚染を受けている様です。王種王級の頂点たる魔物に精神汚染を仕掛けるとは正直信じられませんが…貴方達も巻き添え喰らう前に立ち去った方が良いでしょう」
答えてくれたお礼とばかりに神鋼はそう告げると猿鋼と猿波は顔色が変わった。
「ま、待てっ! 小僧っ!! お、お前…イザナギの状態が分かるのかっ?!」
血相を抱えた表情を見せる二体の猿に神鋼は若干引き気味になるも頷く。
だが二体の猿はお互いの顔を見やる。
「猿波…」
「そう、だな。小僧、お前はどこまでイザナギの状態が分かるのだ?」
「どこまで…と言われると…うーん…半分もステイタスを把握することは出来ません。恐らくレベルや生物としての格が相当違うんでしょう。半分でもわかっただけで奇跡、です。まぁこれだけ離れてるのでやれることには制限かかってしまうのでその程度までですが」
神鋼の返答に猿波と猿鋼は顔を見合わせて頷き合った。
「なるほど…小僧。お前に手伝って欲しいことがある」
「はい?」
「し、師匠…本当にアレに近づくおつもりですか??」
顔色が若干青色になりつつあるハイムに対してショウマは「主は俺が守る! お前はそこで待っていろ」と告げる。
「ショウマの言う通りです。イザナギの付近は相当に魔素が濃いので無理に着いて来る必要はありません」
ハイムは二人を交互に見てそして、何やらぼそぼそと呟いた。
「……ここは踏ん張り時だっ! 負けるなハイム!! 頑張れハイムっ!!」
「「……」」
ショウマは神鋼を見てどうしますか? と目線で送ってくる。
どうしますか、と言われても…
「し、師匠っ!! 私も着いて行きます!!!」
「本当に大丈夫ですか…? 再度言いますけど無理してつい『行きますっ!!』…あ、はい」
「…準備は整ったか?」
猿波は俺らをイラつき気味で見ながら言うと神鋼は「お待たせしました」と告げる。
「お主達の身は俺が守ってやる。安心してイザナギのを調べ上げるが良いぞ」
暑い胸板をドンッと叩きニカッと笑う猿にドン引きする神鋼だったが、猿波が合図をかけて全員が出発した。
「今ならまだ邪魔は入らないだろう。さっさと行くぞ」
猿波の言う邪魔の意味に何となく嫌な予感がする。
だが神鋼は感じていた。
ここは避けて通れない道であると。
直線距離で1キロも満たない距離なのだが、周囲はクレータ状の穴が多く空いており、何やら物騒なことが起きたことは容易に想像が出来る。
その光景にショウマはなにやらうずうずしている様子だ。戦闘狂かな? 脳筋系なのかな?
一方のハイムはまるで対照的でブツブツと独り言を言っていた。壊れたのかな? ビビり系なのかな?
神鋼は道中空気の悪さと言ったら良いのだろうか。
森の匂いとは隔絶した人の精神を逆なでするような気持にさせる何かを嗅ぎ取っていた。
(精神に影響しそうなこのナニか。イザナギに近づくにつれてどんどん濃さが増してくるようです)
そして近づくにつれてイザナギの大きさに感嘆するショウマとハイムを余所に神鋼は魔導錬金モードで解析を始めていた。
そして気になるワードを発見してしまう。
「瘴気…?!」
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