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神鋼のソウルスミス  作者: こぬさん
第一章  陸王の息吹は春の訪れと共に吹き荒ぶ
36/40

戦いの初鐘は鳴り響く 1

第一章最終パートに突入です。

よろしくお願いいたします。

 鬱蒼と生い茂る木々にショウマはゾクッとした悪寒を感じ取った。


 「あ、主…この木々は一体…?! 気配が尋常では無いのですがそのままに捨て置くのですか?」」


 「捨て置くとは言葉が悪いですね。これは防衛用の罠として残していくだけです。決して問題の先送りでは…無い…はずです」


 まるで獰猛な魔獣のような視線を至る所から感じるショウマは「主はとんでもないことをしでかしたな…」と諦めモードで目を伏せた。


 「とは言ってもこの世界に顕現させた以上、僕の支配下にあります。命令違反は即座に滅するようプログラムを仕込んでますので僕の敵でなければ問題は無いでしょう。多分」


 多分、という言葉に僅かだがショウマは顔を顰めた。

短い付き合いであるがこの方の多分は相当危ない多分なのだろう、と改めて気を引き締める。


 「むっ? 侵入者ですね…ダメです。手を出すのは許しません」


 何やら物騒なことを言う神鋼しんこうにショウマは周囲を探った。


 「北門側からですね。恐らくは拠点の兵士、でしょうか。探りにでも来たのでしょう」


 「では私がこの状況を説明して参りましょうか」


 「…いや…兵士では無い…全く…まぁいいでしょう。合流しますよショウマ」


 そう言うと北門の方へと向かう神鋼しんこうを慌てて追うショウマは前へと立って神鋼しんこうを先導する。まるで従者の役目と言わんばかりに。その様子に神鋼しんこうは苦笑した。



 「これは…一体…」


 辺りを胡乱な表情を見せながら慎重に進むハイムはガサッと音がした方向へと向き、慌てて剣を握った。


 「誰だっ!」

 

 「大丈夫です。…僕ですハイム」


 見知った声に慌てて剣を下げ、ひょっこりと現れた神鋼しんこうと見覚えの無い若者に再度剣を構えなおした。


 「し、師匠っ! そ、そいつはっ!!」


 「お前こそ何者だっ!」


 二人を見て神鋼しんこうは面倒臭そうな表情を見せ、そして「二人とも剣を納めなさい」言って臨戦体制を解かせた。そして事情を説明する。


 「し、師匠の従者…でしたか…これは失礼なことを」


 「いや、我が主の弟子の方とは。こちらこそ失礼した」


 「ちょうど良かった。ハイム、戻って今の現状を央軍のお偉いさんに伝えてもらえますか」


 「それは良いのですが…師匠も戻られないのですか?」


 「ええ。ちょっと所要がありまして」


 「所要ですか?」


 「…えぇ。とても大事な所要です」


 神鋼しんこうが先程から発していた刺すような魔力の波動が更に鋭敏になっていく。

思わずハイムは生唾を飲み込んだ。


 「では…私もお供致しますっ!」


 「……ダメです。今から向かう場所は恐らく先程の状況よりももっと酷い。ここから先は…命のやり取りがあるでしょう」


 命のやり取り。まるで先ほどの魔物の氾濫が前哨戦と言わんばかりに言い放つ神鋼しんこうのその言葉にショウマとハイムは表情が真剣な物へと変化していく。


 「主のことは任せろ。この身が盾となってお守りする」


 君みたいな若者が何を、と言いかけた言葉を飲み込んだ。

 ショウマの身から発する存在感が尋常では無いのだ。

 恐らく…この若者も…普通では無いのだろう。何せ支障が侍らせることを許したのだ。それも戦闘の分野において。


 悔しさが心を埋める。

 今までのハイムだったら文句を言って、そして喚いて、何とかすがろうとした。

 今までの…俺、だったら。


 ハイムは自身の傑作、とここに来るまで信じて疑わなかった自称魔剣を神鋼しんこうの前に差し出した。


 「師匠…これが…これが付いていく資格、となりませんか?」


 目の前に突き出された直剣のロングソードを見て、神鋼しんこうは一か所だけ変わった箇所に気付く。


 「…なるほど」


 一言だけ短く発すると、剣を受け取り、そしてまじまじと剣の鍔部分に埋め込まれた魔石を見た。

 その魔石は色が付いており、不思議な波長を放っていた。


 「この短期間で…人工魔石にコレ(・・)を込めたのは称賛に値します」


 いつも辛口の師匠がまさかの褒め言葉をハイムへと送る。

 その言葉に我が耳を疑うような仕草を取るハイムだがすぐに顔色が変わっていく。


 「ですが…力の込め方が甘いですね。まだ余裕が魔石側にあるのに十分な収束が出来てません」


 「そ、それは…調整値の絞り込みが…甘かったかもしれません」


 冷や汗を掻き始めたハイム。それを真顔で神鋼しんこうは見つめた。


 「まぁ…ギリギリ及第点ですか。帰ったらもう一度みっちりと仕込まないとですね」


 俯いていた顔を上げたハイムの視界にはにかみながら視線を逸らす師匠しんこうがいた。


 「師匠っ!! それではっ!!!」


 嬉しさ満面のハイムを神鋼しんこうは自身の言葉で遮った。


 「ハイム…これから向かう先は生きて帰る保証がある場所ではありません。それで良いのであれば…付いてきなさい」


 ギュッと拳を硬く握りしめた後、ハイムは表情を引き締めた。


 「はいっ!」


 その言葉に神鋼しんこうはニヤッと笑みを見せた。


 「では二人とも行きましょう」


 「「御意っ!!!」」


 二人の未熟者が返事したその言葉に神鋼しんこうは顔を顰めるのであった。





 直撃した訳では無かった。

 天空に向けた強烈な一撃の余波で王の領域はまるで爆撃を受けたかのようなクレータ状の痕跡を残していた。


 周囲には若干の煙が立ち昇っていた。

 芳醇に含まれていた土の水分が枯れ果て、そして乾いた音共に崩れていく。


 先程まであった小高い丘はその余波で表面の土が全て消し飛び、そして異様な光景を見せていた。


 「うぬぬ…波よ…生きて…おるか?」


 地中から籠る声で発せられた後、勢いよく土が弾け飛んだ。

 大柄の男、いや武装をした大柄の猿が周囲を見渡した。


 すると同じように瓦礫が弾け飛び、そしてそこから勢いよく出て来る細身の男、いや軽装の猿が飛び出して来る。


 そして大柄の猿、いや猿鋼の側に降り立った猿波は土埃を払う仕草を取った。


 「何とか…な。それよりも…アレを見ろ。鋼」


 先程まであった小高い丘は見る影も無い。


 「完全にお目覚めのようだ」


 首を横に振る猿鋼。


 「それどころか…見ろ、あの濃い魔力の波動を…いや…アレは…チャクラか」


 「ウチの悪戯小僧よりも偉大だな。濃度は元より規模が桁違いだ」


 鋭利に波立つ甲羅から迸る圧倒的な命の根源(チャクラ)に二体は思わず寒気を感じてしまう。


 「これだけ強化の術を施しているのにも関わらず突き抜けて来るこの波動…これが王種最強の王獣、いやこれは神獣の域か。猿尽様も同じ王種なのに…まるで桁が違う」


 「これが完成された王種、この世の全ての種の頂点に立つ生命体であり唯一の王級…陸王<伊邪那岐>」


 周囲が高層ビル並みの高さを誇る木々を悠々と超えるその体高に二体は見上げるような視線で呟いた。


 陸王<伊邪那岐>


 この地を統べる王獣は完全にその姿を現していた。そして甲羅から太くたくましい首を伸ばして晴れ渡った大空を見上げて動かない。警戒を解いていない陸王は視線を空へ固定したままだった。


 「陸王が警戒を解いていない。先程まで攻撃で仕留め切れていないということか」


 「…そんな生命体がこの世にいるとは思えんが…この緊張感を感じるとそうもいってられんのぅ」


 二人は顔を見合わせた。


 「逃げるぞ。この機会を逃すと巻き添えを本格的に喰らってしまう」


 「そうだな。命を優先するべき、だな」


 そんな二体を逃がさない、とは言ってはいないのだが逃げるには遅すぎた、その事実をこの直ぐ後に突き付けられるとは思ってもいなかった。


 突如として雲一つない空に黒い染みが滲み現れた。

 それを二体は凝視してしまった。


 気が付いた時には遅かった。

 晴れ渡った空は暗転し、闇が訪れる。


 < 随分と物騒なお出迎えだな…伊邪那岐よ >


 心揺さぶられる波動に二体は顔を顰める。


 < だが…ようやくここまで来た…そろそろ鍵を渡してもらう時が来たようだ >


 黒い染みから零れる闇の波動が具現化した靄、としか言いようのない純黒の靄が零れ落ち、そして形を形成していった。


 ≪ ふん…カナタの残りかす如きが我を倒すとは…随分と思い上がりが過ぎるようだな ≫


 純黒の靄がぶるりと波打つ波動を見せた後、人型を成形していく。

 もし、神鋼しんこうがその姿を見たら…こう言うだろう。


 ――死神


 純黒の鎌を携えた死神は禍々しいまでのチャクラを放つ。


 < 我が創生主、カナタ様を封印せしめし鍵、今日こそ返してもらうぞ >


 ≪ やってみろ…小童よ…今日はただで帰す気は無い ≫


 周囲に特大のエネルギーが集まり始めた。

 その様子に猿鋼と猿波は歯を食いしばってただただ耐えていた。


 ≪ 無に帰れ。第一魔 ガロスよ ≫


【※ここまで読んで頂いた皆様へ大事なお願いがあります※】


ここまで読んで頂きありがとうございます。

拙作ではありますが、少しでも「面白い!」や「続きが気になる!」等々


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