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神鋼のソウルスミス  作者: こぬさん
第一章  陸王の息吹は春の訪れと共に吹き荒ぶ
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第126拠点防衛戦 1

お待たせしました!


 けたたましく鳴り響くサイレン音。

 その音に拠点の誰しもが何事かと外に出て来て周囲を見渡した。


 『緊急事態発生!! 現在魔物が大群がこの第126拠点へと向かっていることが確認されたっ! 速やかに指定された避難場所へと移動を開始せよっ!! 繰り返すっ!』


 拠点のあちこちで兵士が民間人に対して避難場所へと向かうよう大声で駆け回っていた。

 魔物が大群でここへ目指してくる。

 この事実に住民は驚き、即座にパニックへと発展していった。



 サイレン音は鳴り響く。

 第126拠点に詰めている兵士達は勿論、ブレイバー協会も臨時の緊急招集クエストを発動し、防衛線に加わるように指示を出していた。勿論魔狩人もだ。


 「くそっ! ヨウはどこに行ったんだ?!」


 「多分…鍛冶屋のとこかしら?! 私見てくるわっ!」


 「ネリサっ! ヨウのことは頼んだっ! 俺は協会へと行ってくる!」


 そう言い終わるとマディとネリサは抱き合う。


 「貴方…生きて帰ってきて…私を未亡人の妻にさせないで…」


 「当たり前だ…生きて必ずお前とヨウを迎えに行く…ヨウのこと、頼んだぞ…」


 そうしてマディは協会へと向かった。

 ネリサはその後ろ姿を見えなくなるまで見送ると、踵を返す。


 「まずは…ヨウを迎えに行かないとっ!」


 家を出ると周囲は半ばパニック状態となっていた。

 慌てて避難場所へと向かうお隣さんを始め、周囲の住民は血の気が失せる表情を見せていた。

 この拠点が築かれてから初めての大事件にネリサも不安な気持ちに駆られて行く。

 だが、表情を引き締め人々の流れとは逆方向へ駆けだした。

 元魔狩人であるネリサは自慢の脚力を駆使して鍛冶屋へと向かう。


 「ヨウ…ヨウ…っ!」



 一方ハイム達も戸惑いを隠し切れてはいなかった。

 立て続けに起こる問題にお互い見やって困惑の表情を見せあう。

 一旦は鍛冶屋へと戻ってこの有事にどう対処すべきか話し合うべくこの場を離れるとそこに神鋼しんこうの母親と思われるネリサとばったり出くわしていた。


 「ヨウっ!!!!」


 ハイムは背負っていた神鋼しんこうに視線を向け、そして「あぁっ!」と一人納得する。


 「師匠の御母堂でいらっしゃいますか?!」


 聞きなれぬ言葉に、見慣れない若者と老人、そして鍛冶屋の主人と思わせる三人を見てネリサは「ええっ?」と怪訝な声を上げる。


 ハイムは神鋼しんこうを引き渡すとネリサは会釈をしてそのまま立ち去る。

 それを三人は呆気に取られつつも鍛冶屋の中へと入るのであった。


 「あれが師匠の母上でいらっしゃいましたか。なんとも聡明そうな方でしたね」


 「俺も初めて見たぞ。意外にも普通だったなぁ」


 「それよりも今後のことぞ。お主達」


 デリンデムの言葉に二人は居住まいを正して真剣な表情を見せる。


 「今後の流れ次第だが恐らく協会経由で防衛戦の参加を義務付けられるだろう」


 「でしょうねお祖父様。我らは鍛冶士です。防衛戦に際しての矢玉や武器防具の修繕などやることは山積みです」


 「だよなぁ。取り敢えず炉を熾して準備だけはしておくか」


 「まぁしかしながらギリギリのタイミングで魔法障壁が修復出来て助かったな。あのままだったら場合によってはこの拠点も陥落してたかもしれねぇ」


 鍛冶屋の親父のその言葉に深く頷いた。


 「少々タイミングが出来過ぎな気もするが…なんにせよハイム、お主は大規模戦闘の初陣じゃ。気を引き締めよ」


 ハイムは深く頷いた。


 「ハイバルの槌の名にかけて最高の仕事をこなして見せましょう!」




 各々が準備に入る際にハイムは鍛冶屋の親父へと声を掛ける。


 「親父殿、少々借りたいものがあるのですが…」


 「なんでぃ? こっちが用意出来る代物か?」


 「師匠が使っているのをここで見ましたのであるとは思いますが」


 神鋼しんこうが使っている物、というフレーズに鍛冶屋の親父は眉根を顰めた。


 「あのスペースにあるもんか? しかしおめぇ使えるのか?」


 鍛冶屋の親父の疑問混じりの言葉にハイムは頷く。


 「先日使い方だけは教えてもらいました」


 「そうか。しかし…アレをどう使おうってんだ? そもそもあらぁ武器防具作る設備じゃねぇぞ?」

 

 「えぇ。それは分かっています。ですが…今使うべきだと思うんです」


 ハイムは袋の中からある物を取り出して鍛冶屋の親父に見せた。


 「こらぁ…なんだ? 見た感じ…魔石に見えるが…色が付いてねぇぞ?」


 ぱっと見で欠けたガラスの塊にも見えるその物だがハイムは力強い口調で言葉を発した。


 「これは…師匠からの試練、なのです」


 「試練…??」




 人が頻繁に出入りする司令室は臨時の防衛本部として機能し始め数時間が経過していた。

 そこに集められた情報に全員が難しい顔を見せていた。


 「狼系魔物にゴブリンの集団…空からは密になった鳥系魔物…ここまで種がばらけた魔物がこちらを目指してくる、か」


 現時点で集められた情報はとても厳しい内容となっていた。

 斥候部隊を何度か派遣してはいるが魔嵐が止まないこの環境下では満足に魔獣の森へと侵入させるのが難しい状況にあった。それでもブレイバー協会と連携して小隊編成で送りこんだ結果、多少ながらも現時点の状況について収集出来ている。


 魔獣の森は南に進むの魔物の群れは本来ならば縄張り争いをする敵同士であるにも関わらず、大きな諍いも起こさずまるで何かに追われているかのように進んでいるのだ。

 数はおよそ1000程度。これは可能な限り接近して得た情報であり、まだ多くの気配や音から察するに最終的な数は数千に上ると思われていた。


 「外壁の修繕はどうなっている?」


 「はっ! 現時点において接敵予想場所の北側はほぼ終わっております。接敵予想時間には完成すると思われます」


 「ギリギリか。人員の割り振りを変更してでも前倒しで完成するよう急げっ!」


 「はっ! すぐに変更し対応します!」


 「矢玉や回復薬などの戦時物資はどうなっている?」


 「既に確認は終わっており、こちらに纏めております」


 差し出されたレポートに目を通してロロノマは深く頷いた。


 「……持って一週間、といった所か。魔物の圧がどれだけのものにもよるが…中々厳しい状況だ」


 ロロノマは今回の一報を受けてからまずは近くの拠点へと応援依頼を投げていた。

 だが現時点でいい返事はもらえてはいない。


 ブレイバー協会にも緊急依頼を発行してはいるものの、この魔嵐の時期が全てを難しくしていた。

 近づけないわけではないのだが、十分な装備を行ってから出ないと満足な体力を残してたどり着けないのだ。


 恐らく応援が到着している時はそのまま戦場へと突入することになるだろう。

 その時に満足に戦える状態でなければそもそも応援の意味が無い。

 何せ他の拠点ではこういった魔嵐という現象が無いのだ。この特殊装備を揃えるにも相当の時間がかかってしまう状況が故に少なくとも1週間は孤立することが確定的であった。


 この第126拠点は環境が厳しい故に外壁を始めとして通常の地方拠点にしては相当頑丈に作られていた。

 それが今回に関しては良い目として出てはいるものの、こういった魔物の集団に襲われる想定にはなっていない。魔嵐以外の時期であれば早々に討って出るのだが、それも出来ず、結果として籠城策を取らざるを得なかった。


 「やはり…集まり切る前に各個撃破に討って出るべきとは思いませんか?」


 「この環境下で障壁外の戦闘を満足にこなせる者がどれだけいると思っているのだ?! それこそ各個撃破されて無駄死によっ!」


 「ですが、魔嵐がいつ収まるとも言えないこの状況下で籠城策は無謀です! 本来であれば籠城策とは援軍がくるからこそ成立するのです」


 「であれば早々に打って出て全滅して来いとでもいうのか?!」


 「そうと言ってはおりませんっ!」


 「じゃあどうするのだっ?!」



 このようなやり取りを何回も繰り返しては話は元に戻る。

 先の見えないこの状況に全員がイラ立っている。

 それもそうだろう。この第126拠点は死と生の狭間で揺らいでいるのだ。


 そして…魔獣の森と平地の境界で魔物の群れを発見する一報が飛び込んでくる。


 「来たか……総員戦闘準備を急がせろっ!!」


【※ここまで読んで頂いた皆様へ大事なお願いがあります※】


ここまで読んで頂きありがとうございます。

拙作ではありますが、少しでも「面白い!」や「続きが気になる!」等々


と心の中に少しでも抱いて頂けましたら


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