鋼と波 2
またまた鋼と波が登場です!
*新作*
俺でなきゃ見逃しちゃうね ~圧倒的なモブ感満載な俺が異世界で旅団を作ろうとしたんだけど誰か助けてっ!~
ページ最下部にリンク張っておきますので皆様よろしくお願いいたします。
魔獣の森を抜け、更に北上した先には【王魔の森】と呼ばれる森林地帯がある。
ここは第一域屈指の生存環境が悪化した地域であり、それは第二域よりも酷いとまで言われている。
過去に央軍は何度か探索隊を派遣しているのだが、生還率が5割を切る事態に探索隊の派遣を中止して以降、大規模派遣は行われていない。
何がこの地域をここまで生還率を低い物にさせているのか。
それは魔嵐が大きな原因であるが、それだけではない。
王魔の森は年中魔嵐で荒れているが外縁部はそこまで酷くは無く、冬から春に駆けて周囲へまき散らすいつもの魔嵐に少しだけ勢いがついた程度である。
凛響石が獲れるのもこの外縁部で、協会経由で依頼に基づきブレイバーと魔狩人が採集を行っているのだが、近年は魔嵐がこの外縁部まで強く吹いており、中々素材採集が出来ずにいた。近年の不足はこれが原因であり、央国ロドではここ数年凛響石不足の解消に重い腰を挙げ、久しぶりの探索隊を結成することが決まっていた。
そんな王魔の森、外縁部に鋼と波は居た。
「随分と荒む風よの。波よ。話とは大分違うのではないのか?」
怪訝そうな顔付で自分よりも頭三つ程低い細身の男を見やった。
「確かに。これは最悪のことも考えておかねばならぬやも知れぬ」
そう言うと波は人差し指を立て、何やら言葉を紡ぐ。
「蒼天を座し、伏せる馬が如し、征くは無天、晴れるは顕現」
手を前方へ突き出した波は、そのまま天へと指を差すかのように頂へ手を伸ばした。
「猿王仙術 快猿天即っ!!!」
その直後、鋼と波の周囲に赤みを帯びた煙に近い何かが周囲を覆い、徐々に形作っていった。
そしてそれが脚のように伸び、それが複数形作られる。
「結!」
言い切った直後、脚の様な赤みを帯びた煙がまるでそれぞれの身体全体から4本づつ伸びていく。
「ふむ。悪くない。さすがは波よの」
「世辞は良い。この術は燃費が悪い故、急ぐぞ」
そう言うと赤みを帯びた脚のような煙の先が4本の指が形成され、それが伸びて王魔の森へと向かっていく。魔嵐の影響を感じさせない力強さを持ち、そのまま先に生えている木々の枝を掴むとそのまま身体を木々まで勢いよく寄せていく。
「我も行くか」
そうして王魔の森の木々を4本の脚の様な手が順番に枝部分を器用に掴み、器用な猿渡をしながら進むこと1時間が経過した。周囲は未だ暴風と魔素の嵐によって過酷な状況だが二人は意を介さずに進んで行く。
王魔の森の木々は魔獣の森のそれとは大きくサイズ感が違う。
10メートル級の木々に対して王魔の森の木々はその5倍以上あり、幹は太く、この環境に見事に適合していた。そのため鋼と波はまるで空中を駆けるかのように猿渡でこの森を誰よりも早く駆けていく。
「しかし静かなものよの。これだけ命に満ち溢れながら生命体が存在せぬ。その濃さ故、生命を寄せ付けぬとは皮肉なものよ」
これだけ見事な自然が形成されているのに魔物はおろか、獣や虫すら存在せぬこの場所に違和感を覚える鋼。前からこの状況であるとは知っていたが、改めて目の前にすると違和感を感じられずにはいられなかった。
「久しぶりに来たが…随分と魔素が濃くなっている。術を強化せねばこの先は進めぬか」
進めば進む分だけ魔素が濃くなるこの状況に嫌な予感を感じ取っている波は更に速度を上げていった。
それから数時間が経過した。
二人は足を止め、目の前の大きな大樹を見上げていた。
その大樹は万年生きる古木の中の古木、古大樹は高さが数百メートル程あり、遥か上空に木の傘が見えるが濃霧でその姿をハッキリと見せることは無かった。
「ここが境界か」
鋼が呟くと波が頷いた。
「我は猿王猿尽様が配下、猿波と申す。陸王様へ我が主猿王猿尽様から言伝を届けに参った。開門願うっ!!」
目の前の古大樹に向かって叫ぶ波だが数十秒が経つも一向に何かが起きる気配が無かった。
「どういうことだ?」
鋼は周囲を見渡した。
「場所はここで間違っていないはず」
「あぁ。こんなにまで力を感じる場所を間違いようが無いな。これは王の力。間違うはずが無い」
周囲を探っていた波だったが、もう一度口上を述べようとした時であった。
「波よ。変だぞ。ここら一帯結界が張られておらぬ。ここは王域であるにも関わらず何も張られてはおらぬ」
鋼の言葉に顔色を変え、丁寧に周囲を探った。
「……確かに。王の力は感じるのに何も施されてはおらぬ。それにいつも甲斐甲斐しく世話をしていた樹木精霊の気配が感じぬ」
波はそのまま進み古大樹の根元へ向かう。
そこには大きな空洞があった、過去の謁見ではここを通ったのだが王域に至る入口の場所にも関わらず門番はおろか、何も封印がされていなかった。
「波よ…これは…」
「あぁ…何かあった事だけは確かだ。急ぐぞ」
空洞を通り、抜けた先に鋼と波は思わず立ち止まってしまう。
「な、なんと…これは…」
「これは本覚醒…か??!」
古大樹を抜けた先、古大樹に囲まれたその広大な領域の中央、少し小高い丘にも見えるその場所には想像を超える濃密な命の気配が漂っていた。
「まさか…本覚醒は相当先では無かったか…」
「尽様の話では仮覚醒の時期、そう仰っていたが…これは不味い…まだ創生の時期ではないはず」
「だとすれば何故本覚醒に入っておるのだっ!」
「知らんっ!! まずは陸王様に接触を試みるぞっ!」
波の言葉に鋼は苦渋の顔を見せる。
「アレに近づくというのか…本当に骨が折れる…」
「時期を先延ばしにすれば近づくことすら出来ぬっ!」
二人は意を決して接触を試みようと近づいた時であった。
【 何奴じゃ…ここは王域…何人も存在を許さぬ孤独が支配する王の間 】
深く、それはとても深く心に響く言葉に二人は身を震わせた。
「陸王様っ!! 我は猿王猿尽様が配下、波と申すっ!! 猿尽様から言伝があり参った次第!! ですがこれは何事でしょうぞっ!!」
【 猿尽…あぁ…あ奴か…しょんべん臭い猿の子が何用ぞ… 】
しょんべん臭い猿の子という言葉に顔を顰めながらも、表情を作りなおし小高い丘へ見据え直す波。
「言伝をっ! お納めくだされっ!!」
波は印を結び、何やら言葉を吐くと目の前にポンっという音と共に弓矢が宙に飛び出して来る。それを掴み取ると波は力を込めて小高い丘へ向けて矢を放った。
矢が丘の表面に至った瞬間、光の屑を発し、中空へと消えていった。
矢文という古典的な仙術での意思疎通方法を選択した波だったが、そこから数分経っても何らリアクションの無さに鋼と波は不安が募っていく。
そこから数分後、小高い丘は軽く身震いと共に魔力の波動をまき散らす。
咄嗟に防護障壁を張る二人だが全身汗だくで無意識に身震いを行っていた。
【 くっくっく 】
重苦しい笑い声が二人の精神を揺さぶっていく。
この王の領域は領域主が何かするだけで濃い魔力の波動をまき散らす。
それに耐えようとすればする程精神をまるで粗い鑢でガリガリと削られ消耗して行くのだ。
これ以上は耐え切れない、鋼と波は伝えるだけ伝えて里へと帰ろう、そう決意を固めていく。
【 我が三つの願いの一つが小僧の所に行ったか…これも何かの縁、そう言うことであろう…猿尽よ 】
三つの願い?
二人はその言葉に顔を見合わせる。
【 ヤ*▽〇…×…様…●×▽…◇◆□●… 】
言葉に雑音が入り混じったような言葉に二人は顔を顰めさせ、何を言っているのかを聞き取ろうと試みるも、最後まで聞き取ることは出来なかった。
「……これは…伝わった、と解釈して良いのか?」
困惑気味の鋼の言葉に波はぎこちない動きながらも頷いた。
「現状ではこれ以上望むまいよ。まずはこの状況を一刻も早く尽様にお伝えせねば」
「…そうだな。ここからは時間が勝負、ということか。これは…荒れるな…」
そう言うと二人はその場を後にしようとした時であった。
何やら強大な力の近付きを感じ取り、空を同時に見上げた。
「なんぞっ?! 何か…得体も知れぬ何かがここに近付いてきおるぞっ!」
「あぁっ!! これは今までに感じたことのない力の波動…っ!!」
中空の【 何か 】に気を取られていた二人は気付かなかった。
陸王がその【 何か 】に対して向けられた殺意の入り混じった戦意を。
「?!っ」
気付いた時には遅かった。
小高い丘が身震いをしたと思いきや、恐ろしいほどまでに濃縮されていく魔力に鋼と波は死の匂いを感じ取る。
「鋼っ!」
「退避だっ!!! 王が…殺る気だっ!!!」
一目散にその場を退避しようとした直後、この世界を壊そうとする程の金色の波動が収束し、そして中空へ放たれた。
「「……ッ!!!!!!」」
辺りは強烈な光と共に包まれ、あまりに音量が大き過ぎた結果、無音になると言う矛盾染みた事象を二人は味わうことになった。
轟音ならぬ、超音。
時空すら破壊する程の威力を放った陸王は破れた空を見上げて呟いた。
【 カナタ…ここでお前を討つ… 】
【※ここまで読んで頂いた皆様へ大事なお願いがあります※】
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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◇◆ 前に前書きで報告した気分転換の新作を先程投稿しました! ◆◇
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