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神鋼のソウルスミス  作者: こぬさん
第一章  陸王の息吹は春の訪れと共に吹き荒ぶ
23/40

魔法障壁魔道具<イージス> 6

前に前書きで報告した気分転換の新作を先程投稿しました!


*新作*

俺でなきゃ見逃しちゃうね ~圧倒的なモブ感満載な俺が異世界で旅団を作ろうとしたんだけど誰か助けてっ!~


ページ最下部にリンク張っておきますので皆様よろしくお願いいたします。

 「やはり専門外のことをするととても疲れますねぇ」


 「こ、このレベルで専門外…ですか…」


 ハイムはこの規格外の師匠こどもに苦笑いする。


 神鋼しんこうはいとも簡単に金属を錬成し、それを思うがままに形状を変化させて行くのだ。通常なら魔導高炉を使いながら粗鋼を溶かし、そして形を成型することから始まるのだが、神鋼しんこうは目の前でいとも簡単に成型まで持っていくのだ。そしてその出来上がりの精度は抜群に高く、寸法が違うことは一回も無かった。


 とても順調に進んでいるようにも見えるが、当の神鋼しんこうの内心は常に迷いが生まれていた。


 (これ…本当に動くんですかねぇ。理論的には僕が生まれてからの5年である程度確証は得られているのですが、こんなぶっつけ本番で本当に想定通りの効果を生むかは自信がありません)


 神鋼しんこうはそもそも魔道具を専門にしていたわけでは無かった。自身が目標としていた装備品を作成するためにどうしても魔道具領域に手を出さないと作成が出来なかったからしょうがなく、といった具合で手を付けていただけなのだ。


 そんな状況の中、神鋼しんこうは珍しくハイムへ多く語り掛けていた。


 恐らく自身の不安を悟らせないため、そしてそんな不安な気持ちを紛らわすためなのだろう。

 そんな気まぐれな出来事が思いもよらぬ形でハイムへ影響を与えてしまうとは誰も想定していなかっただろう。


 「へぇ…そんな魔物がいる…のですね?」


 「多分、ですが。まだこの世界で目にしたことは無いのですが実体の無い敵と言うのは本当に厄介極まりないです」


 「霊系等は結構有名ですが、神聖系統で払うことは出来る位しか知り得ませんでした」


 「単純に実体を持たないのであれば苦手な属性で攻める、それは定石でしょう。ですがスキルと言う形で物理攻撃に抵抗がある敵がいたときはその限りではありません。それ以外の手段で攻撃を相手に伝える必要が出て来ます」


 「しかし師匠、それですと魔法攻撃で押し通すしか道は無いのでは?」


 「ハイムの言う通りです。そう言った敵を倒すには単純に飽和攻撃で仕留めるしかないのでしょう。ですがもし、満足のいく飽和攻撃が出来ない場合はどうでしょうか。我々鍛冶士と言う人種はそういった状況に真摯に向き合わなければならないのです」


 「…ですが、それは使い手次第、そうなりませんか?」


 「確かにそうかもしれません。ですがそれは凡百の鍛冶士が導く答え、僕はそう考えています。それは僕にとって最善の道では無いですし、そんなところに世界の頂点は無い。そう思いませんか?」


 神鋼しんこうの問いかけにハイムは押し黙ってしまう。


 「使い手を一段も二段も上げてくれる武器、防具。そう、導いてくれる、そんな物を僕は作りたいのです」


 その言葉にハイムはハッとする。


 自身がなぜ、この世界に進んだのか。それは家が代々名門鍛冶士の家として歴史があるが故の跡取りとしてこの世界に身を委ねたのか。そうじゃないだろう。世界の頂きに、そこから見える光景に憧れてこの身を投じたことをまるでフラッシュバックのように思い出していく。


 そして二人は会話を重ねる。

 初めて師が弟子に鍛冶士とは何か、そんな哲学染みた言葉を交わしていく。


 そして夜は明けた。




 魔法障壁魔道具<イージス>の修復、及び向上計画を開始して3日が経った。


 その間は通常稼働していたが、次また強い魔嵐が発生してしまうと同じことが起きてしまうため央軍、協会総動員して魔法使いによる小規模魔法障壁を重要な場所に24時間展開させ、それを保険としていた。そんな中、外は魔嵐が強くなる傾向が確認され、関係者は全員緊張を帯び、ピリピリとした状況を作りだしていた。


 一方、神鋼しんこう達であったが、出力向上するための周辺部品アップデートは順調に進み、残すは要の心臓部分、いわゆる魔導動力部分のアップデートに移っていた。


 「ここからが最後の関門にして、最大の難所、ですね。師匠」


 「そうですね。とは言えそこまで大したことはしないのですが」


 魔法障壁を生み出す心臓部と言えるこの大型魔導炉はワールドゲート内で広く普及していた魔導炉と機構は同じであった。この辺りが現実世界とリンクして少しだけホッとしていた神鋼しんこうであったが、問題はその出来上がりの精度であり、その部分を今回は大幅に手を加えようと計画していた。


 初日に点検をしてみて分かったことは様々あるが、全てに言えることは『作りが甘い』、この一点に尽きるだろう。神鋼しんこうはこの作業の間終始もどかしい気持ちで一杯だった。

 ここまで考えてこの魔法障壁魔道具を設計出来るのだからもっと追求してみてはどうか、何度そう思っただろうか。


 この世界でようやくワールドゲート内でも通じる魔導ロジックを駆使した作品であるのに全てが中途半端な味付けで終わっている、そんな状況に神鋼しんこうはまるで先生になった気分でお手本となる修正を行っていた。本人はまるで気付いてはいないが。


 今回は基本設計に大幅な修正を加えるには時間や素材等、圧倒的に足りて居ないためベースを生かしたアップデート計画を練っていた。


 既に動力部分へのエネルギー供給部分についてはアップデートを終えており、今回は燃費をよくして尚且つ全体的な魔法障壁向上のための出力上昇、この2点に絞って手を加える計画である。


 「まずはこの魔法障壁魔道具<イージス>を完全に動力を落とします。皆さん準備は良いでしょうか」


 そう神鋼しんこうが言うと、周囲にいる管理保守員達は頷いた。既に準備は万端、そう言うことなのだろう。


 「とうとうここまで来たか…」

 「僅かこの数日でここまでの改修を施してしまうとは」

 「ハイバルの槌は伊達では無い、そういうことか」

 「あの子供、ハイバルの槌当代の孫だそうだぞ?」

 「てことはあの二人は…親子??」


 とあらぬ誤解が既にこの施設内で蔓延していたが、その方が都合がよさそうだと神鋼しんこうは考え放置していた。

 一番この誤解を受けてしまった被害者の一人、ハイムは「子持ちに見える程年とっているように見えるのかな…」と悲しい顔をしていたことは秘密である。


 「では動力を全て落とします」


 その掛け声に次々と動力を落としていき、数分後には重い駆動音が消えていった。


 「では早速中枢プログラムから書き換えて行きましょう」


 神鋼しんこうはこの数日でこの魔道具を動かしている中枢魔導プログラムの中身をコピーし、最適化と同時に拡張箇所をリンクするための修正を行っていた。エネルギー効率の向上も同時に行っており、計算上では元の魔法障壁強度を優に3倍以上向上させ、使用するエネルギーを三分の一以下まで圧縮させることに理論上では構築に成功していた。


 「アップデート開始……終了。続いて物理的なアップデートを開始します」


 動力部の解体をハイムや施設保守達と行い、核部分である人工魔石を取り出した。


 「これが…魔導炉の動力核…凄まじい魔力の波動を感じる」


 ハイムの言葉に口々に同意する施設保守達に対して神鋼しんこうは全く違う感想を抱いていた。


 (成りは大きいですが随分とスカスカですね…予想通り人工魔石の収束が上手く行っていないのでしょう)


 この核となる人工魔石の収束した高密度魔力を動力部が引き上げて魔法障壁を生み出すのだが、思った以上に人工魔石が魔力を収束しきれていないことは予想しており、それが立証された訳だが神鋼しんこうは難しい顔を見せる。想像以上に収束率が低いのだ。


 (恐らくこの人工魔石を作成する理論が出来上がってもまだ改善が進んでいないのでしょう。ここにいる間に人工魔石について資料庫で概要は何となく掴めましたが研究が進んでいない印象を受けました。その理由も何となくわかります)


 神鋼しんこうは魔導錬金モードを立ち上げてて人工魔石の解析に入る。

 解析結果を見て、神鋼しんこうは「むむむ」と呟いた。


 (組成が雑ですね…魔物由来の魔石と比べて随分と粗い構成です。先ずは構成の組み直しに着手しましょう。幸いなことに人工魔石自体無駄に質量だけはあります。これを使って行きますか)


 宙を浮いている人工魔石が発光し、グニャリとまるど柔らかい透明な物質へと変化していく。

 その光景を見ていた周囲の人々は一様に驚きの声を上げた。


 (可能な限り魔石の構成へ寄せつつ、密度を高めていきましょうか)


 魔導操作空手動アクティブエアキータッチをせわしなく動かし、そして密度調整を行っていく。神鋼しんこうの目には膨大な魔文字と、構成情報が現れ、それを手動で組み替えていった。


 神鋼しんこうが行っているのはこの5年間で新たに研究していた魔石の組成についての結果披露であり、この分野は経験に乏しい故に今、まさしく練習兼本番を行っているのだ。

 

 作業は綱渡り状態が続く。

 魔石の根源を弄っているのだ。一回でもミスをすれば即座にゴミとかすこの作業に徐々に神鋼しんこうの顔は僅かに笑みを浮かべ始めていた。


 「師匠が…笑っている」


 ハイムは師匠である神鋼しんこうが笑っている所は見たことは無い。

 この鍛冶錬金分野について語る時はいつも儚げな表情を見せているのだ。

 まるで世間の常識があまりに未熟、そう訴えているかのように。

 

 興味を持っていない子供の冷めた顔にいつも違和感と共に、その領域に至っていない不甲斐なさを出会ってからずっと感じていた。


 その師匠が笑っていた。

 それはどれだけこの作業が未知の領域を走っているのかをハイムは理解した。


 (組成変更終了…固定化に入ります…成功)


 先程まで宙に浮かんで様々な色を放っていた形の無い人工魔石が縮み始め、そして手のひら大のボール形状まで縮小していった。ぱっと見では水晶玉にも見える。


 「ふぅ。……これで、完成です」


【※ここまで読んで頂いた皆様へ大事なお願いがあります※】


ここまで読んで頂きありがとうございます。

拙作ではありますが、少しでも「面白い!」や「続きが気になる!」等々


と心の中に少しでも抱いて頂けましたら


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ぜひこの拙作のモチベーションを維持して頂くためにも、何卒宜しくお願い致します。


(追記10/4)前に前書きで報告した気分転換の新作を先程投稿しました!


*新作*

俺でなきゃ見逃しちゃうね ~圧倒的なモブ感満載な俺が異世界で旅団を作ろうとしたんだけど誰か助けてっ!~


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