はいばるのつち 2
お昼投稿です。
最近のお気に入りBGMは藤井風。聡太のほうじゃありません。
(追記10/4)前に前書きで報告した気分転換の新作を先程投稿しました!
*新作*
俺でなきゃ見逃しちゃうね ~圧倒的なモブ感満載な俺が異世界で旅団を作ろうとしたんだけど誰か助けてっ!~
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「長々と説明ありがとうございます。要するにブレイバー協会まで出頭しろと言うことで間違っていませんか?」
鍛冶屋の親父の隣に立っているヒョロ長くいかにも不健康そうな男性はその言葉に顔を僅かに顰めさせ、そしてそれに呼応するかのように鍛冶屋の親父の顔色土気色から赤みがかかった微妙な色へと変化していく。
「意味的には外れているとは言わねぇが…」
「はははは…出頭と言いますか、君が作ったとされる武器について聞きたいことがあるのでこれからブレイバー協会まで来て頂きたいと申し出ている次第で」
ブレイバー協会から来たというこの不健康男は主任という職位らしく、支部長からの遣いとのことで。鍛冶屋の親父も「行かなきゃマズいだろこれは」と俺に促している。
「具体的には僕が作った武器の何が聞きたいのでしょうか? 性能についての不満ですか? あぁそれなら作った僕自身がよく理解しています。何せ思った以上に腕と言いますか、想像を遥かに下回る性能の武器が出来てしまって本当に落ち込んだのですよ? 誤差というレベルじゃないんです。それはもう容認出来ないレベルの差が出てしまっていまして。ええ、もちろんこのまま黙って何もしないわけはなくってですね、今後に向けた…『とりあえずブレイバー協会まで移動をお願いします!』」
と闊達に喋り倒す5歳児の言葉を遮るように俺の手を掴んで強制的に連れて行く。
「お、おい!! ま、待てよ!!」
慌てて鍛冶屋の親父も後を追いかけ、そして俺達は第126ブレイバー協会支部長の部屋でお茶を飲みながら座っていた。
「この剣…銘は何という?」
ぱっと見で現役ブレイバーと思わせる程に隆々とした筋肉が腕から肩、胸板にまで走っている。短く揃えた銀髪の髪にまるで巌と呼ぶにふさわしい顔付きをしており、昔漫画で流行った世紀末覇者、マオウにそっくりだ。てっきり『うぬは』とか言いそうな感じで俺の数倍はあろう手のひらから光るみかんを投げつけそうな勢いである。
「銘、ですか。うーん。そんなことを第一声で聞かれるとは思いませんでした」
世紀末覇者マオウ、じゃなかった支部長は俺の言葉に眉根を顰めた。
「これだけの逸品に銘も付けないとは」
支部長はそう短く発すると後方に控えている鍛冶屋の親父へと目を向けた。
「ガンディアよ。これはお前が作った、もしくは所蔵している物ではないのか?」
急に声を掛けられた鍛冶屋の親父、いやガンディアはほんの少しだけ唾を飲み込んだ。
「……支部長の仰りたいことは理解してるんですがぁ…そのなんて言いやすか。紛う事なき坊主の作品ですぜ。そいつは」
ガンディアの言葉を受けた支部長は視線を神鋼へと戻す。
「俄かに信じられんな。こんな坊主がこのような代物を…」
「まぁその辺りは別に信じようが信じまいが正直僕にとってはどうでも良いのですが。話はそれだけでしょうか。特になければ失礼しますが」
神鋼はそう言うとソファーから降りる。まだ幼児のその身体は座面から床まで足が着かないせいか少しだけ飛び降りるような仕草を取った。
「待て。話は終わっておらぬ」
「そう言われてもですね。支部長は見たいもの、信じたい物を見た、そう思えばこれで終了なのでは?」
可愛く首を傾げながら言う神鋼へ「此奴…」と協会支部長は短い台詞を吐いた。
その直後だった。利き手を束にかけるや否や流れるような所作で抜刀し、刃面を神鋼の首へ添えた。鍛冶屋の親父、ガンディアは咄嗟のことで息が詰まり、目の前に起こったことに何も動けずにいる。
そんな中、涼やかな声が支部長室内に響き渡る。
「一流の所作ですね。だが貴方が使うには重さはもちろん剣身の長さやバランスが軽すぎて歯応えがないでしょう」
神鋼が言い放った言葉に支部長と鍛冶屋の親父の身に戦慄が走った。
(……此奴…本当に見た目通りの子供なのか?!! まさか魔物が化けているのではあるまいか)
少しの間逡巡が神鋼と支部長の間に走るも直ぐに手の力を抜き、剣を下げた。
「ならば…俺に一つ剣を作ってみろ。お主は鍛治士なのだろう?」
支部長が剣を打ってみろ、その言葉に鍛冶屋の親父は目をまるで飛び出すかのような表情を見せていた。
そしてそれを聞いた神鋼は薄らと笑みを浮かべると、
「丁重にお断り致します」
と頭を下げてその場から出て行くのであった。
まさかの行動にリアクションが取れない2人だけがその場に動かず固まっていた。
そのままの足でブレイバー協会支部を後にするとようやく後ろから鍛冶屋の親父が神鋼の小さい後ろ姿を見つけて駆け寄って来る。
「おいおいおいおい坊主!! ちょっと待てって!」
「煩いですねぇ」
「お、おめぇなんで支部長の依頼をこ、こ、断ったんだってんだこの野郎!!」
その言葉に神鋼は横目で鍛冶屋の親父を見やり、溜息を吐いた。
「はぁ…そんなこともわからないんですか。あの場で受けるわけが無いでしょうに」
そう言うと神鋼は小さい手のひらをギュッと握り締めて、そこから指を三つだけ立てる。
「一つ目はあのマオ…いや支部長の得物は剣では無いと言うことです。得意の得物でも無いのに作れとは可笑しいでしょう? 補助武器として持つと言うのなら理解は出来ますが支部長は『剣を打て』と言いました。だったら答えはNO、これだけです」
「え、い、いや、し、しかし…ってか何であの支部長の得物が剣でないって知っているんだ?? おめぇ支部長のこと知っていたんか?!」
鍛冶屋の親父の言葉に神鋼は盛大な溜息を零す。
「あのねぇ。さっきの一振りでバレバレでしょうに。あれだけ軽い剣を振った癖に剣先の抜けが非常に重かったんです。てことは常日頃から先端に重心を置いた武器を使っている、つまり打撃武器系か斧系の二択しかないでしょう。束を握る前にも手の平を確認しましたが、タコの位置が均等ではありませんでした。つまり、重心のバランスが傾いている武器を常用していることは明白でしょう。その二種であえてどちらかと言えば斧ですね。振り抜く際の肘抜きに癖が見えましたから」
神鋼のこの解説に鍛冶屋の親父は開いた口が塞がらなかった。
そんなことはお構いなしに神鋼は続ける。
「二つ目はあのレベル、高レベルのブレイバーに見合った武器を作れと言われれても手持ちの素材が無いですからね」
「だ、だがオメェなら魔鋼を作り出せるじゃねぇか!」
「パワータイプに魔鋼なんて使えませんよ。すぐ刃を潰してしまうのが関の山です。魔鋼は硬さという部分ではニ線級、超鋼金属などからするとかなり見劣りしますからね」
「お、オメェ…超鋼金属と比べたらどんな金属でも粘土みたいなもんだろうに…」
「硬さだけでいいのなら圧縮鋼の方が良いでしょうね。ただあの支部長がそんな鈍を使いたがるかは分かりませんが」
そうして神鋼は最後の指を折った。
「三つ目は単純にムカついたからです。なんですかあの偉そうな態度は。なぜ上から目線で言われて剣を打たなければならないのか理解できませんね」
「お、おい…支部長はこの第126拠点の中で上から数えた方が早いレベルの偉い人なんだが…」
プンスカ気味の神鋼は若干速足気味で歩いていたせいか直ぐに鍛冶屋の親父の店前に着いてしまう。
「時間の無駄でしたね。まぁ気を取り直して研究に取り掛かります…か?」
「…か?? どうした坊主?」
神鋼の視線の先には鍛冶屋の親父の構えるお店がある。微かに開いてある扉から独特の空気を感じ取ってしまう。
(ターゲットレーダー確認…人を二体確認。…これは)
無言のまま扉をゆっくりと開けた神鋼の眼前には二人の大人が剣を熱心に値踏みしていた。
侵入に気付いた白髪の老人はこちらをチラリと見やる。それとは正反対に赤髪の青年は熱心に剣身を見続けブツブツと呟いていたままだった。
「この鍛冶屋に何の御用でしょう?」
「おぅおぅ。童や。ここはお主の父が開いているお店だったかのぅ。ところで父親は一緒ではないのかのぅ?」
「私の父が開いているお店では無いのですが」
そこに続いて鍛冶屋の親父が店内に入ってくる。
「なんだ客か? すまねぇがまだ開店前なんだ。申し訳ねぇがまた後で来てくんねぇか?」
鍛冶屋の親父が登場すると神鋼には一切目を向けなかった赤髪の青年の視線がそちらへ向いた。
「これは君が打った代物かい?」
そう言うと赤髪の青年は手に持った剣を差し出した。
「ん? お、こらぁおめえ最上段に飾ってあった展示専用のロングソードじゃねぇか。それは売りもんじゃねぇ。返してくれ」
「売り物ではない? これは君が打った作品では無いのかい?」
「あ、あぁ。それは俺の師匠が打った作品さぁ。オメェもその剣の良さが分かるってことは…」
そう言うと赤髪の青年を上から下まで値踏みをする。
そして腰元に差してある長剣と短剣が目に引っ掛かる。
「魔狩人…にしては線が細いというか剣を使うようには見えねぇが…」
「私は魔狩人では無いさ。こう見えても私は…」
「同業者ですよ。鍛冶屋の親父さんと」
視界の外から可愛らしい声が発した事実に赤髪の青年は一瞬だけ口吃ってしまう。
「…なぜそう思ったのかな?」
隣に立っている白髪の老人も長く蓄えた髭を手に取りこちらを伺いながら見やった。
「人差し指と親指。槌を振るう人の特徴がありありと見えますし、一見ひ弱にも見えそうですがその実、見事なまでに鍛え込まれた肉体。他にも剣を見る箇所など一杯ヒントが隠されているのではないですか」
神鋼の言葉に短く『ふむ』とだけ切る赤髪の青年は口の端を僅かにだが釣り上げた。
「まさか幼子に半分言い当てられるとは思いもよらなかったよ。鋭い観察眼だね。坊やは」
「半分…?」
神鋼の疑問にしたり顔を見せる赤髪の青年は、人差し指を頭上に掲げる仕草を取ると勢いよく喋りだす。
「私は錬士でもなければ錬金術士でも無い! 未来の魔導錬金鍛冶士ランキング一位を取る男さっ!!」
隣では白髪の老人が顔を少しだけ俯かせると『はぁ』と短い溜息を吐いた。
【※ここまで読んで頂いた皆様へ大事なお願いがあります※】
ここまで読んで頂きありがとうございます。
拙作ではありますが、少しでも「面白い!」や「続きが気になる!」等々
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(追記10/4)前に前書きで報告した気分転換の新作を先程投稿しました!
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