はいばるのつち 1
ようやく第1章も中盤に突入ですっ!
(当初の想定よりも文字量が倍増えていることは秘密…)
(追記10/4)前に前書きで報告した気分転換の新作を先程投稿しました!
*新作*
俺でなきゃ見逃しちゃうね ~圧倒的なモブ感満載な俺が異世界で旅団を作ろうとしたんだけど誰か助けてっ!~
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「はいばるのつち、ですか?」
「あぁ。あのハイバルがここを訪れるそうだ」
鍛冶屋の親父はそう言うと何やらニヤついた顔を見せた。
「親父さん。その気持ち悪い笑顔を隠して僕にもう少し分かり易く説明して頂けませんか?」
「気持ち悪い笑顔で悪かったなオイ。ハイバルの槌っていうのは鍛冶士の中でも頂点中の頂点と呼ばれる鍛治士の血盟でな。鍛治士の憧れでもあり目指す場所とも言える超凄腕、いや神の御技といっても良い技術を持っているのさ」
「ふぅん。神の御技ですか」
「おうとも。坊主もその歳でその技術、いやまどうれんきんだっけか? オリジナルの鍛治技術を持っているのは正直驚いたが奴らは違う。世界最強血盟の大地や赤の閃光に専属で武器防具を作成しているんだ。特に奴らが作る魔導外装は異次元の能力を持っているという話しだ。一度見てみてぇなぁ」
「魔導外装、ですか?」
初めて聞く武装の名前に神鋼は首を傾げた。
「坊主は鍛治士の常識ってやつは全く知らないよな」
鍛冶屋の親父はそう言うと簡単ではあるがこの業界の常識というものを俺にレクチャーしてくれた。
簡単に言えば鍛治に限らず錬金技術や調合など生産系職には全てライセンスによる管理がなされており、勝手に武器防具の作成を行うと罪となるそうで。そう考えると俺がやったことはこの世界では重罪となるらしく、それを勘案した鍛冶屋の親父が形式的に取り込んだということだった。顔に似合わず配慮は出来るみたいだ。
生産系職業だけで無くこの世界では大半が届出制を含んだライセンス管理が徹底されており、自由気ままに生きると言うことは難しいみたいだった。
「ブレイバーや魔狩人などの冒険者系職種がこの世界の王道といってもいいだろうなぁ。誰しも一度はブレイバーに憧れるもんだが、全員が戦闘職に向くわけじゃねぇ。それに生産系の技能を生まれ持った奴も大勢いるし、一族代々受け継いだ鍛治士一族ってのも結構ある。表の花形職がブレイバーだとすれば裏の花形職は魔導錬金鍛冶士ってのがこの世界の常識だな」
「魔導錬金鍛冶士、ですか」
ゲームでは聞き慣れない鍛治系職種に少しだけ眉根に皺が寄った。
「魔導錬金鍛冶士は鍛治士にとっての花形、いや目指す頂点だな。鍛治技術はもちろんだがその他にも錬金術、魔導論士、調合士など複数の技術を高レベルに修めなくちゃなんねぇ。一つ修めるだけでも大変なんだがそれぞれのライセンスを複数取得した上で更に超難関の国家試験に通ってようやくライセンスが発行される超狭き門だな」
「へぇ。それはまた大変そうですねぇ」
「そうさ。俺は央国立魔導大学校に通って卒業までに何とか錬士の資格を取ったが、学生時代はそれこそ全てを鍛治に傾けて辛うじて一つの低級資格が取れたのみだった。坊主ならわかるだろう? この難易度が。それに裏付けされたライセンスこそがこの魔導錬金術鍛冶士ってわけだ」
人生を賭ける程に頑張った成果がコレか…と少しだけ心に影を落としそうになったが、この世界のレベルは俺が求める基準にすら達していない状況でそれを言ってもしょうがないだろう、そう思い直した俺は目の前に差し出されていたお茶を一口啜った。
「先程言っていた魔導外装なるもののことなのですが…」
「あぁ。魔導外装はこの第一域から外界に遠征するために必須と呼ばれている武装のことでな。それを作ることができるのは魔導錬金術鍛冶士なんだ」
鍛治屋の親父の言葉に新たな疑問が神鋼に芽生える。
「それは資格持ちで無い者が作ると罪になると言うことですか?」
俺の言葉に鍛冶屋の親父は微妙な顔を見せる。
「ううむ。まあ間違っちゃいねぇが、それだと半分正解だな」
「半分ですか?」
「あぁ。確かに魔導外装を資格持ちで無いと罪にはなるが、そう言うこっちゃねぇ。そもそも魔導錬金術鍛冶士程の知識、経験が無いと作ることなど不可能なんだよ」
「そう言うことですか」
それ程までに高度化した武装ということなのだろう。神鋼は魔導外装に興味を持ち始めていく。
「ここは人界の安全域と呼ばれる地域の中でも端だが、魔導外装が必須かと言われればそこまでじゃねぇ。危険な地帯であることには間違げぇ無いんだが、性能過多過ぎてコスパ悪過ぎなのよ」
「へぇ。魔導外装という武装は消費が激しい武装、ということなのですね」
「そうだ。勘の良い坊主ならわかると思うが、こいつは魔石を大量に消費するんだ。魔力を動力とした一体武装なら尚更だ。凄まじい能力を持っているが大飯喰らいで使い場所を制限しなければあっという間に破産ってわけさ」
「なるほど…ちなみにそれってどこ行けば見れるんですか?」
「どこ行きゃあ見れるかって言われれば…魔導外装を所持する血盟のとこに行かないとまずお目にかかることは無理だろうなぁ。第二域へと遠征に行ける血盟はこんなとこは来ねぇだろうが」
「見れないのは残念ですねぇ。ちなみにさっき言ってたハイバルの土でしたっけ? そのトップ鍛治士集団とやらは持っていないんですかね?」
「ハイバルの槌だっ! …まぁ持っていてもおかしくはないだろうが」
鍛冶屋の親父の言葉に神鋼は目を爛々と輝かせていく。
「いやぁライバルの何とかって集団が来るのが楽しみですねぇ」
「ハイバルの槌だっ!」
ニチャついた笑みを零す神鋼はまだ知らない。
このハイバルの槌との出会いが今後の人生を大きく変えるきっかけになることに。
「これが魔嵐か。噂には聞いていたが随分と魔素が荒れ荒ぶのだのぅ」
周囲には猛烈な風と共に魔素が乱れ飛んでいる。だが踏み出す一歩が轟音を周りに響かせる丸太ほどの太さの足が八本もある巨大な馬と思われる生物は黒色の立髪を揺らせながら鋭い視線で周囲を警戒しつつ客車を引いていた。
「アレスが随分と警戒してますね」
「それはそうだろう。いかにスレイブニルと言えどもこの魔素の嵐は堪えるじゃろうて」
髭にたっぷりと蓄えた白髭を撫でながら応える老人は窓へ視線を向けた後、手元にあった分厚い魔導書へと目を落とした。
「はぁ。やっぱりギルドに発注すれば良かったなぁ」
対面に座る白髪に長い白髭を蓄えた老人とは相対して赤色の髪が印象的な若者は深い溜息を吐いた。
「何事も経験じゃよ。自ら経験しなければ辿り着けない真理もあると言うことじゃな」
「……はぁ。僕は魔導錬金鍛冶士であってブレイバーじゃ無いんですけどね」
「最近の若人はすぐに楽な道を選ぼうとする。お前はもっと外の世界を経験せねばならぬのじゃぞ」
「……はぁ。お祖父様の時代とは違うんですよ。学ばなければならない知識が増える一方なんですから。僕にはくだらないことにかける時間は無いんですよ。あぁ早く帰って研究に没頭したい…」
「困ったやつじゃて」
「お祖父様はそう仰いますが、本当にこんなとこで僕に本当に必要な経験とやらが転がっているのでしょうか」
「つべこべ言わずこのミッションを達成して周りを納得させるのじゃ。お前が得なければならない立場と言うものはお前が考えている以上に重いものだと知れ」
その言葉を聞いた黒髪の若者は白髪の祖父に向かって大仰な溜息を吐いた。
「あぁそんな立場など錬金分解して無かったことにしてしまいたい」
―――――――――――
「明日には来るそうだ」
さっきから緩みっぱなしの表情に俺は冷ややかな視線で応じる。
「そもそも何でこんなど田舎に鍛治士の頂点集団が来るのですか?」
俺の質問に緩んだ表情が僅かだが引き締まる。
「ギルドからは錬金に必要な素材を取りに来るため、だそうだ。恐らく王魔の森に用があるんだろう」
「王魔の森、ですか。ここから北に位置する魔獣の森のさらに先に在る場所でしたっけ。でもあそこって魔嵐が最も酷い場所って聞いていますが」
「そうだな。この時期の王魔の森は魔物は居ねぇがその代わり魔乱状態が酷い環境となり人を拒むんだが、全く入れねぇかと言われればそうじゃねぇ。何事も例外ってのがあるんだよ」
「ほうほう。例外、ですか」
「と言っても簡単なことだ。要するに金を踏んだんにかけて魔素の魔乱対策を行うだけさぁ」
「あぁ、札束で頬を引っ叩くアレですね」
俺の返しに鍛冶屋の親父は若干引き気味な表情を浮かべる。
「オメェはどこからそんな知識を覚えてくるんだぁ? 本当はその形で中身はオッサンでしたって言われても俺は妙に納得してしまうぞおい」
鍛冶屋の親父のその言葉に内心ギクリと心の汗をかいてしまう。
「…こんな天使の顔した僕の中身がオッサンだとしたら、それはさぞ美しい美丈夫が居座っていることでしょうね」
「ああ言えばこう言うの典型的なタイプだなおめぇは」
鍛冶屋の親父は大仰に溜息を吐いた。
その時鍛冶屋の入り口から「店主はいるか?」と声が居間まで鳴り響く。
「お客さんみたいですね」
「まだ開店前だってのに。ったく」
そう言うと「まだ開店前だぁっ! もう少し外で待ってろこの野郎!」と言いながら店内へ向かう。
だがすぐその後「坊主っ! こっちに来い!!」と怒鳴る声が店内に鳴り響いたのだった。
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ここまで読んで頂きありがとうございます。
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