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オッサン令嬢の婚約破棄

作者: 猫派

開いてくれてありがとー

誤字脱字多いかも、気になる人はごめんね。

「エリザベート・ノーナイフ貴君との婚約を破棄させて貰う!」


煌めく眩い金髪に蒼穹を宝石にして嵌め込んだような青い瞳、健康的な肌は刈り取り前の小麦畑を思わせる。


光沢のある夜会用の礼服に包まれた黄金比に均整が取れた肉体は芸術的でさえある。物語から抜け出たと言われても納得の美男子。声さえも天上の楽。だが今は少しくたびれて色彩を欠いていた。


そして語る内容は穏やかからぬ。この国の王太子である。


「ど、どうしてですか殿下」


王太子の瞳の色のドレスを纏いはち切れんばかりの胸は高々もちあげられみちみちとコルセットにおさまり、ブルネットの豊かな髪は結い上げられ一房だけ垂らされた鎖骨に落ちるその毛束は艶々としている。

隙の無い装いの令嬢の顔は青ざめ、二の腕迄ある絹の手袋に包まれた手は震えていた。


「何故?!?何故と問うのかこの私に!貴君がオッサンだからだろうが!」


そう、一分の隙もない完璧な令嬢ファッションに身を包んだ公爵令嬢エリザベート・ノーナイフは巨漢である。

3メートルに迫ろうかと言う身の丈を持ち、はち切れんばかりの筋肉は胸筋のみならず上腕三頭筋、広背筋など鍛えにくい筋肉も鍛えられたボディービルダーなら必ずトレーニング何してるんですかと聞きたくなるムキムキボディーなのだ!


ハイヒールは乙女の嗜みでも大好きな殿下をこれ以上見下ろしたくない、だからスカートの中はいつもスクワットなの!と言う乙女心も搭載したハイスペックなオッサン。因みに令嬢のお友達はなぜか多い。


「王太子の仕事の内に世継問題がある、貴君はオッサンだ!物理的にも精神的にも無理!と言うか何故我々は婚約したんだ陛下も公爵も何で行けると思ってるんだ!嫌がらせかよ。友達以上になれるかよー」


あ、友達にはなれるんだと、見守る貴族たちは思った。


フラストレーションの持って行き場が無くストレスの余りに王太子は髪を引きちぎった。

シャンデリアの灯りにてらされ煌めきながら髪が結構な量足元に散らばる、このままでは皆の憧れが禿げるけど日も近いだろう。


彼は思い出す。初めて婚約者に引き合わされたあの日の絶望を。


彼は十才。すれ違った人間の半分以上が天使かなと錯覚するほど眩い少年だった。

その日は婚約者と顔合わせがあると王宮の庭で軽いガーデンパーティーが催されていた。


パーティーと言っても内々の事王家が主催するには地味で内輪の気楽なものであった。



そこに現れたのは、美しいドレスのオッサンである。


いかに王太子とはいえ、じゅっ歳そう、じゅっさいなのだ。まだまだ平仮名が似合う歳なのだ。


彼は震えた。至近距離で行われたカーテシーは覇王が気を溜めてるのかな?な雰囲気で、その覇道の前に立ってしまった幼気な王子は巨軀の影下でプルプル震えた。


怖い、これは怖い!大人でも怖い。何も文句言えない、てか、声が出ない。


引き合わせた王妃は扇子で口元を隠し優雅に微笑んだ。

「挨拶なさい、貴方の婚約者よ」

王妃の無茶振りと言う悪夢はここから始まった。


「エスコートしなさい」(自分より遥かにでかいオッサンをどうやってエスコートするんだよ。人攫いと被害者にしか見えねーよ)

「お手紙を出しなさいな」(ストレートに絡みたく無い)

「遠乗りに誘ってデートなさい」(アレと?デート?斥候の練習じゃなくて?)


お母様、実の息子に何か恨みでもあるのですか?

王子は悩んだ。毛根にダメージが来た。枕に落ちる抜け毛が物語る。



もう少し遡り、所変わって、ノーナイフ公爵家。

公爵の弟チャールズが執務室に呼ばれていた。


輪作農業を提唱し、自らも治水工事や農業に従事する変わり者の天才肌、筋肉ムキムキマッチョマンなどと陰口を叩かれる貴族ぽく無い高位貴族代表の弟を、兄は深く信頼し、この腹違いの弟に甘え、困った事が有ればお願いを繰り返していた。


察しの良い方ならばお分かりかと思う。彼こそ令嬢の身代わりなのだ。



兄は弟に相談した。娘を王家に嫁がせる事になったのだが、ウチの娘はお転婆でな王子にシバキ入れたりして不敬罪でいつ首を刎ねられるか不安過ぎる。

何とかしてくれ。兄はアバウトに頼んだ。


弟は生真面目天才ではある、あるのだがいささか何と言うかーこう覇王の気質と言うかアーサー王と言うか、ぶっちゃけ人心は解さぬお人、人の心が分からない方


斜めに突き抜けてしまった。


チャールズは考えた、


令嬢が礼儀を学び王子不敬を働かなくなる然るべき日まで身代わりを立てよう。

たが、身代わりの若い女性に時間を無駄に過ごさせるのは可哀想だし、ウッカリ恋が芽生えると困る。


1、確実に恋が芽生えない人間である

2、礼儀作法が公爵家として間違い無い人間である

3、婚約破棄されても困らない人間である


俺かな?

確実に王子と恋とか芽生えないし、公爵家次男として礼儀は一通り知ってる。女性のマナーも覚えれるだろう。守るべき個人のメンツなど無いので婚約破棄されても微塵も困らないしよしんば追放とか処刑宣言とかされても筋肉が有ればなんとかなるし。


俺しかいないな!


ツッコミ不在の恐ろしさが加速する。そして下手に有能な彼は、王と王妃に計画の片棒を担がせる事にした。

まずは王妃に面会を希望して、薔薇作品(BL)を献上した。幅広い人間関係への理解を持って貰うため。選び抜かれた薔薇本だ。選んだのは公爵家侍女長引き入る使用人達。意見の対立で血も流れたらしい。


次に王に面会して、新たな技術とその運用方法を献上資金不足の王家の財布を潤したが、定期的なメンテナンスが必要な問題点のあるシステムを勧め、そのメンテナンスを一手に引き受け自分の有用性を上げた。


暫くして色々な効果が出た頃、再度登城して、おもむろに身代わりの計画の許可を求めた。

笑いすぎて苦しむ王妃、困惑の王。絶句の宰相を説き伏せ許可をもぎ取る有能天才


最後にその計画を知り遅ればせながらツッコミを炸裂させたー公爵

家の娘が王子に手を上げるより不敬になることになってるけど!?コレ原因で娘が嫌われたらどーすんの

えっ本当に大丈夫??許可を得てる?大丈夫本当に?な、ならヨシ

公爵はチョロく丸め込まれた。


チャールズは娘を心配し焦る兄を見て、再度完璧にやろうと心に決めた。俺を一時封印、そうアタクシはエリザベートよ!期間限定の乙女心がチャールズに搭載される。

そして、姪と共に実家公爵家で淑女教育と王妃教育をうけはじめたのだ!

メキメキと淑女力を上げるチャールズのドレスに包まれた広い鬼の様な筋肉を見つめエリザベートは憧れた、覇王に。


彼女の中では何でも出来て偏見を持たず好奇心だけで生きそして結果を残す、そんな破天荒な叔父、誰よりも筋肉ゴリラなのに、目元すら筋肉で洞窟なのに誰よりも淑女力を持つ覇王に憧れ勉強を頑張り始めた。

やる気になった彼女の能力は高くまた、サポートする教師陣も有能、ありとあらゆる分野を楽しく食い散らかした。そう、知識を食い散らかした為に美しい小覇王に成長。


己の、覇道礎の第一歩となる王子との出会いを槍を素振りしながら待ちこがれていたりする。

本人はノリノリではあるが父公爵は不安過ぎて入れ替わりを元に戻すゴーサインが出せない。




時は戻り、婚約破棄のその場。


息切らし婚約破棄への思いを叫んだ王子に、チャールズは問う。


眼光鋭く凛とした風情の女装ゴリラが誠心誠意込めて問うた。


「女なら、ワタクシが女なら良いのですか?」


ノイローゼ寸前王子も疲れを馴染ませ誠心誠意答えた


「女性なら、欲を言えば賢く有れば文句は無い」


最低でも性別が女ならよいとの余りの低いハードルに未婚女性は色めき立った。


王子は、賢さより良識を上げるべきだった。


「ならばならば!ワタクシ王子の言いつけ通りになって参ります。ですが王子様、私は思い出を失うでしょう。共に培った友情を失うでしょう。ですが、ですが貴方にお似合いのワタクシになって戻って参ります。1時間後に!」


早いな、と周りの人達は思った。

あ、無理だわこれ割り込めねぇと未婚女性は悟った。

身代わりの事情を知るものは、余りの力技な流れに慄いた


チャールズには時間が無かった。早く姪のエリザベートを会場に戻さねば、ピラニアの様な女豹どもが王子に大胆にアタックをかけてしまう。

そうなると女なら良しという低いハードルが災いして敵の人数が増え乱戦になる。乱戦になれば長引いて王子が正気に戻ってしまう。判断力がお出かけ中な、ちょっとノイローゼな今入れ替わらねば!!


城と公爵家は近いだが往復で45分はかかる支度には15分しか取れぬ。

彼の巨軀を載せれる黒い軍馬にドレスのまままたがるチャールズ。門付近に設置された篝火を台ごと引き抜き、淑女の仮面を脱ぎ捨て、今走り始めた


あかりを掲げ、単騎夜をかけられる武人は少ない。土煙上げ走りくる軍馬をエリザベートは館の窓から見た。


あの速さ本気の叔父上だ!コレは入れ替わるその時が来たに違い無い。


彼女の側に控える侍女は、主人に目線で合図され、全てを察しニヤリと笑った。


吹き鳴らされるラッパ

戦闘態勢に入る美容部隊


そう、覇王との長きにわたる接触が使用人さえも一騎当千の武将メンタルに変えてしまったのだ


あの急ぎ用、多分ゆっくりする時間は無い、彼女はエスパー並みに推測した。


風呂に入りコルセットを締めるのは不可能

故に、戦う土俵を変えるだけよと、不敵にエリザベートは笑った。

きりりとした、女騎士風か、其れともしなやかな清楚系聖女か、原石系町娘か、瞬時に判断する。

そう、今宵起こるのは入れ替わりイリュージョンある意味奇跡!ならば女神の装いがふさわしい。


引き出されるのは青みさえ感じる程の白毛の愛馬。

髪を解き水を被る、女神の名を冠する花で作った叔父特製香油を四肢に垂らし、化粧?いやいや、してないですよ風メイクを数人がかりで施してゆく。


叔父の駆る軍馬と松明の灯りが近づく。


「叔父様入れ替わりの時が来ましたか」


「そうだ今こそ、其方の女子力で王子の心を射止めてくるが良い」


ひらりと、鞍を置かぬ裸の白馬にまたがり、隊列を組み見送る使用人達、一つ頷き彼女は馬が汗を滴らせない程度に駆けた。白いトーガが尾を引いて棚引く、掲げた化学反応を利用した松明はさながら流星。燃え上がるマグネシウムの閃光


彼女は淑女でありながら覇王そして今宵は女神

度肝を抜く必要がある。

女神は度肝を抜く登場の必要がある。大切なので2回言う。


割れるステンドグラス、上がる悲鳴。

眩い光(残ったマグネシウム全部燃やした)をまとい飛び込んでくる白馬。彼女は馬で現場に乗りつけた。

父公爵が心配した破天荒は全く治って無かった。


キラキラとシャンデリアの光を受け落ちるガラス、しばしの時を置き立ち直りかけた王子は白馬にまたがる女神を見た。


彼女の叔父によく似たブルネットの髪、ふわりと花の香りを纏う四肢、覇王の意思を秘めた瞳。

計画を知らぬ者はエリザベート(チャールズ)は本当に女になったと錯覚した。


古の時代のような衣装に今では見ない裸馬、鞍どころか手綱さえない

女神は王子を一眼見て、ふっと不敵に笑う。そしておもむろに馬を降りて跪き、手首へ口付きを落とした。


エリザベートは考える、ここまでの流れはよく分からない、喋るとボロが出るだろう。なら黙れば良い、動きで伝えるのだ。手首へのキスはストレートな愛の告白、情欲さえも意味に含む。


そして不利な戦場に長居は無用とばかりに、唖然とする周りを丸っと無視して、王子をお姫様抱っこ、そして彼を連れ去ってしまうのであった。


暫くしてズタボロで帰ってきた王太子、婚約破棄理由がオッサンは嫌!立ったので女のエリザベートとの破棄話は流れ、新生エリザベートの無茶振りに悩まされる毎日。確かに彼女は賢い、古今東西の知識に精通しているが無茶苦茶をする。


彼方に映えありーーとか言いつつ海を見るために隣国に騎馬隊で突入しようとしたりする(勝てる用意はしてる)

覇王の血が騒ぐとか言って聖帝十字領計画案とか出してくる。 

国民総会兵案とか思わず破り去って殴り掛かった程だ。

民には、エリザベートと違い女子供も弱い者もいる慈悲を持って治めよと教育する日々。


毎日の尻拭いに、オッサンである事以外は模範的淑女の旧式エリザベート(チャールズ)を懐かしく思うがコレを野放しにする訳にはいかぬと婚約は続行し結婚した。


のちにストレスで王子、王、宰相、公爵はハゲたがエリザベートの愛の化学力で育毛に成功したりもする

ハゲた原因もエリザベートだったりもする。



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[良い点] タイトルめちゃ笑いましたwww 姪っ子の身代わりに叔父さん自らがなるとかwww
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