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第2話 幼女は見聞きする

瑠華視点です。

視界を塗りつぶすような光が落ち着いて、私がまずしたことは、周りの観察でした。


――召喚された時は、まずは周りを観察して敵と味方を見定めること。


光お祖母ちゃんから教わった通りに、ぐるりと辺りを見回して、足元に魔法陣があること、周りにローブ姿の人……魔術師が居るのを確認して。

木々に囲まれた中、ちらほらと素朴な作りの家が見えますね。周りの人の耳も尖って居ますし、ここはエルフの集落でしょうか。

離れたところには、ちょっと豪華な服を着たリーダーらしき男性が居ますが……あの人、目が怖いですね。

他の人も、目がギラギラしてるか、道具でも見るような目で私を見ている人ばかり。


(これ、もしかして早めに逃げた方がいいやつですか?)


態度には出さないように気を付けつつ、そんなことを思いました。




でも、その中で、ひとりだけ。

心配そうに、申し訳なさそうに、唇を噛む黒髪の青年を見つけて。

ちょっとだけ安心して笑顔を向けたら、真っ赤になってわたわたしている彼が可愛くて。


――あっという間に、彼に心を奪われた。







エルフさんたちの説明を聞いて、この世界がお祖母ちゃんがかつて召喚された世界であり、私の叔父……アルおじさまが移住し、お嫁さんと一緒に暮らす世界なのは分かった。

でも、召喚された理由は、「ふざけんな?」と笑顔でぶっ飛ばしたくなるようなもので。


「せつめいはいじょうですか?」


頷かれ、私はにっこりと笑顔を見せた。


「ただのぶぞくあらそいに、ぶがいしゃのこどものちからをかせ……なんて、おことわりです」

「な……」


絶句してしまったエルフの皆さんに、私は素で首を傾げた。……あ、彼が「そうだろうと思いました……」って顔で頷いてる。

あの、こんな悪意に満ちた説明で騙されるのは本物のおばかさんぐらいですよ……?


「おわかりいただけましたら、わたしはいえにかえりたいのですが」


とりあえず、ウィアさん……アルおじさまのお嫁さんに、会いに行くのがいいかな。

お祖父ちゃんの部下として働いていた風エルフのウィアさんは、召喚魔法の研究をしていたはず。

何か方法を考えてくれるかもしれないし……。


と、そこまで考えて、なにやら奥の方に連れ去られようとして抵抗している彼の姿が目に入りました。


「僕は間違ったことは言ってないはずだ……!」

「うるせえ! 長様の言葉に逆らう気か!?」


声を荒げたエルフが拳を振り上げて……彼は、ぎゅっと目を瞑りました。


「――そこまでです」


「は?」

「……えっ?」


慌ててシールドを張って割り込む。

……実は、赤ちゃんの頃にこっそり練習していたのがバレて、事故が起こりにくい簡単な魔法はお母さんに教えてもらっていたのだ。

今使ったシールドは、単純に魔力を固めて盾の形にしただけの、魔法と言っていいかも迷うもの。

でも、人間としては多めらしい私の魔力と、約3年の練習の成果は、しっかりと応えてくれた。


「だいじょうぶですか?」

「え、あ、う、うん……いつものことだし……」


へえ。

いつものことなんですか。殴られるのが?


「ちがうイケンをくちにしたからといって、かれをチカラでしたがわせるような、やばんなことをするかたのトコロにはいたくありません」


まだ3歳になったばかりの子供の身では、いくら難しい言葉を使っても中々威厳が出ないのが悔しい……。

最後に殴ろうとした彼だけではなく、それに気づきながらも目を逸らした他のエルフも睨んで、私は彼に手を差し伸べた。


「あなた、おなまえは?」

「え、えっと、ジークナート、です。ジークナート・キュリニクス」

「ジークナート……いいなまえですね」


それは本心だった。綺麗な響きで、子のことを想って付けたのだろうな、と思える名前。


「あ……ありがとうございます」


私の手を取って、嬉しそうに微笑んだ彼は、やっぱり可愛かった。

――うん、決めた。

彼を攫ってしまおう。

補足コーナー

・エルフたちの苗字事情

エルフの王族(長の家系)は、苗字に各属性と関係した意味を込めた名を持ちます。

闇エルフの王族なら「ニュクス(夜)」が由来。風エルフなら「リベルタ(自由)」が由来、という風に。

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