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第1話 魔術師は想う

ここは、深い森の中にあるエルフの集落……その中でも数が少ない、闇魔法を得意とする一族の里。

闇エルフと呼ばれる彼らは、今代の長の指示のもと団結し、打倒水エルフを掲げていた。

その理由は、先代の長の弟が、水エルフの娘と駆け落ちしたことに端を発する。

水エルフの娘は、水の里……水魔法を得意とするエルフである水エルフの集落のこと……の、長の娘だった。


エルフという種は、得意魔法が髪と瞳の色彩という形で見た目に色濃く表れる種族。

ゆえに、というべきか、違う色彩を持つエルフ同士で結婚することは忌み嫌われていた。生まれてくる子供が、両親の色を混ぜたような色彩を持って生まれるからである。


――混ざった色は美しくない。

エルフたちは彼らをハーフエルフと呼び、そう蔑んだ。

それが、エルフにとっては当然だった。


だからこそ……闇エルフと水エルフの駆け落ちは、双方の里を騒がせた。

2人は森を出て、遠く、砂漠の町で暮らしていたところを捕らえられた。生まれていた子供ともども。


そういうわけで、闇エルフは水エルフを憎んでいるし、水エルフは闇エルフを憎んでいるのだ。

今はありていに言って、一触即発の状態。

いつ水エルフが攻めてくるから分からないからと、闇エルフたちはせっせと魔法陣を描いていた。


――異世界から人を召喚するという、決して褒められたものではない手段を実行するために。


(ああ、嫌だなあ)


僕だったら、突然異世界に呼ばれても……ここから離れられるなら喜ぶけど。

父様と引き離された時のような心地はもう二度と味わいたくはない。

だから……召喚されてしまうであろう子に、僕は同情している。

永遠にしろ一時的にしろ、大切な人と引き離されてしまうのは確かだろうから。


でも、僕は同情するだけで、何もできない。

こんなことしたくない、と言う権利さえ、僕にはない。

こんなことになった原因の駆け落ちカップル、その息子であり……闇と水のハーフエルフである僕には、およそ人権らしいものがない。

殺されなかったことが奇跡なのだ、というのは、わかっているけれど。

……こんな奴隷のような生活をしてまで、生にしがみつく意味がどこにあるのだろう。

他人様に迷惑をかけ続けるぐらいなら、いっそこの里を巻き込んで自爆でもしてしまった方がいいのではないか……。

最近、そう思う。







「成功だ!」


その声に、反射的に僕は顔をあげた。


「…………」


きょろ、と辺りを見回す、黒髪の幼い子供。

その子と、目があった。


「……っ」


しっかりとこちらを見て――ふわりと、花が綻ぶように笑った彼女に。

僕はその時初めて……一目惚れ、というものを知った。

補足コーナー

・エルフについて

尖った耳に、年若い見た目で数百年を過ごす、魔法が得意で長命な種族である、というのは王道のファンタジーと変わらない。

が、髪と瞳の色に、得意な魔法が色濃く出るのがこの世界のエルフの特徴。


風魔法が得意だから緑、水魔法が得意だから青、闇魔法が得意だから黒……というような感じで、髪や瞳の色が決まっている。

この髪もしくは瞳の色合いが鮮やかであるほど魔力が強いということになり、一際鮮やかな色を持つ血筋が長として集落を治め、彼らは「エルフの王族」と呼ばれている。


そして、水エルフと闇エルフなど、異なる属性を得意とするエルフの子供は概ね、両親の属性がどちらも見た目に現われる。

複数の属性を使えるエルフは色が混ざる(例:水と風のエルフは青緑の髪を持つ)か、メッシュを入れたように綺麗に色が分かれる、という設定。

1つの色が突出しているこそを尊ぶエルフたちにとって、2つ以上の色を持つ彼らハーフエルフは忌み嫌う対象であり、彼らを「混ざりもの」と呼び蔑むことを当然とする風潮がある。


ちなみに、この話の視点キャラである魔術師さんは、美しく濃い黒髪に、紺色(青と黒が混ざった色)の瞳を持っています。闇属性が強く、水魔法はそれほど強くない、というわけですね。

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