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3-6 ハンドルネーム

 ラセツの顔色が変わった。父親の安否は、彼女が最も気にしていたことだ。

『生きていますよ、国王は。王宮内部に幽閉されているようですが』

「本当に!?」

『えぇ、生きていることの裏は取っております』

 淡々とした口調の《メロウ》の言葉を聞いて、ラセツは心底ホッとしたような表情を浮かべてみせた。だが、ティムの顔に安心の色は浮かばない。

「国王は、どのような状態ですか? 普通に閉じ込められているだけ、と言う認識で合っていますか?」

『さぁ? 依頼内容は『生死の確認』と言うお話だったので、『状態』に関しては調べておりませんね』

 つまり、国王が拷問などを受けている可能性も考慮しなければならないと言うことだ。

 亡国の王が敵の手に落ちた時の処遇など、良い物とは考えにくい。ティムは再び問いかけた。

「それをお調べいただくことは可能ですか? 国王が、現在どのような状態なのか。そして、幽閉された場所はどこか」

『……危険度が増すので料金は跳ね上がりますが、問題ないですか?』

「幾らですか?」

『五千万、いただけます?』

「――」

 ラセツの顔色が変わった。情報だけで、五千万。それがふっかけられているのだと、金銭感覚の薄いラセツにすら分かる。

 しかし、ティムは朗らかに笑った。

「えぇ、問題ありませんよ。それでは、五千万。お支払いさせていただきます」

「本気……っ!?」

 戸惑うようなラセツの声に対して、ティムが笑みを張り付けたまま答える。

「ここで引くのであれば、僕は僕をやっていられないんですよ」

 ラセツの蒼の目が大きく、丸くなる。

 電話先のメロウが笑った。

『ふふっ、良い取り引きができそうですね。それでは、情報を掴み次第またご連絡させていただきます。ティム様、いえ――ハンドルネーム』

 そう言って、メロウは言葉を切った。

『――『にゃんにゃん侍』様』

「このタイミングで、そのハンドルネームで呼ばないでいただけます!?」

 電話が切れる。プーッ、プーッと言う乾いた電子音が鳴り響き、後に残ったのは言葉を失くしたティムとラセツのみだった。ティムは一つ咳払いをして、ラセツへと向き直った。

「とのことらしいです」

「…………にゃんにゃん侍?」

「突っ込まないで下さい。スルーして下さい」

「ごめん。情報量が多すぎて、今、頭の中が凄い混乱している。最後のは特に」

「はい。すみませんでした」

 ラセツは頭を左手で抑え、深く溜息をついた。

「ひとまず、父上が生きていることが分かって安心したわ……。あとは、アーティファクト・ラビリンスの二級をクリアして、プレートを入手できれば……。敵の懐に潜り込むことができる。と言うことね?」

 ティムは浮かない表情をしてみせる。

「……その前提条件が、まず危険すぎると言わざるを得ませんね。二級のアーティファクト・ラビリンスは、熟練した探索者ですら、非常に高確率で命を落とします」

 二級から上のアーティファクト・ラビリンスは『高位』と言われている世界だ。そこから入手できるアーティファクトの値段も、桁違いに跳ね上がる。

「でも、他に有益な情報がないのも事実だわ」

 ラセツはただ、真っ直ぐにティムを見つめた。覚悟を決めた、信念が宿る綺麗な瞳だ。ティムは生唾を飲み干した。

「ラセツさんの考えは分かりますし、理解もできます。決して、否定をするものではありません。しかし……」

 ティムは考え込むように視線を落とした。どう言ってラセツを止めようか考えているのだ。しかし、ラセツは蒼の目でティムを見つめ続けている。

 この目で訴えかけられたら、ティムは何も言えなくなってしまう。

「本気ですか? 二級のアーティファクト・ラビリンスに、行くつもりですか?」

「行きたい。ううん、行かなければならない。――お願い」

「……」

 ティムは、嘆息したように言葉を吐き出した。

 遅かれ早かれ、二級のプレートは情報収集の為に欲しいと思っていた所だ。

「分かりましたよ……。リトル・マーメイドに、電話をかけてみます。あそこのような、政府の認可を受けた場所で、二級のアーティファクト・ラビリンスをクリアする。それが、プレートを受け取る条件できますから」

「ティム……!」

 ラセツは安堵したような、嬉しそうな声を上げる。ティムが携帯を操作して、耳に当てると、数回のコールの後に女主人が電話口に出た。

「はい。リトル・マーメイドです」

女主人マスターですか? ティムです」

「まぁ、お久しぶりです!」

「お久しぶりです。二級のアーティファクト・ラビリンスに潜って、プレートを頂きたいのですが……。今って、そう言った探索募集はおこなっておりますか?」

「えぇ、おこなっておりますよ」

 女主人はあっさりと、そう答えてみせた。

「と、言うより……。こちらからティムさんに電話をかけようとしていた所でしたので、素晴らしくタイミングが良かったです」

「タイミングが良かった?」


「えぇ。ちょうど、明日、二級のアーティファクト・ラビリンスへの探索を募集していた所だったので」

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