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転生して桃から生まれたけどなんか変  作者: くさしげ煉牙
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第7話 桃を拾った桃太王

 金ちゃんの勧誘は一旦保留にする。


 どうもこの村は平和すぎて、鬼の襲撃というのが実感できないようだ。


 婆さんは「桃は百年ごとに拾った」と言ってたから、鬼の襲撃もそのくらいの周期だろう。


 ここはひとつ、婆さんの口から神託みたいな感じで鬼の襲撃があることを説明してもらうか。




 そう考えながら、川沿いに歩く。


 目的は2つ。婆さんの屋敷までのショートカットと、浦島太郎の捜索だ。


 村の道を適当に歩いてきたからか、ぐるっと大回りをしていたらしい。金ちゃんの言葉が正しいのなら川をさかのぼれば一番早いはずだ。


 それと浦島太郎もいるらしい。


 昔話で有名所といえば「桃太郎」「金太郎」そして「浦島太郎」だ。ストーリー的には何の特殊能力も期待できない浦島太郎だが、金太郎が河童だったのだ。会ってみる価値はある。


 金ちゃんの釣友だという話だから、川沿いを探しているが見つからない。


 川下の方だったかもなー、と思いつつ歩いているとなにやら人の声がした。


 川がカーブしてる先、竹林の向こう側から聞こえてくる。なにを言ってるのかまでは聞き取れないが、ずっと独り言を言ってるようだ。


 「こっちで正解か。やー俺ってついてる。第1浦島太郎発見、なんつって」などと思いつつ駆け足で竹林を回り込むと、




《どんぶらこ~。どんぶらこ~》


「お前かよドン・ブラ子っ!」


《私はドン・ブラ子という名前ではありません。どんぶらこ~》




 大きな桃が流れていた。




△▼△▼△▼△▼△▼△▼




 オーケーまず落ち着け。素数を数えよう。素数が1つ素数が2つ素数が3つ、よし落ち着いた。


 眼の前には、赤ん坊が入ってそうな大きな桃。あたりに漂うのはドン・ブラ子の声。ってか今のイントネーション絶対「Don't break out」だっただろ。


 くっそー、桃から生まれたらこの声は二度と聞かないと思ってたのに、まさかまた聞く羽目になるとは!


 つーか百年周期とはなんだったのか。ひょっとして、百年に1度しか自分で洗濯しないって意味か?


 とはいえ、ここで桃を見逃すわけにも行くまい。ここは婆さんの屋敷からみると川下だ。スルーされた桃の行く末を思うと、エロじゃない18禁になりそうだ。


 近くに落ちていた竹棒で、桃をたぐり寄せる。




《お疲れ様でした。お忘れ物の無いよう、ご注意して降桃してください》




 ええい、無視だ無視! 川から桃を担ぎ上げると、俺は脇目もふらずに婆さんの屋敷へと走っていった。




△▼△▼△▼△▼△▼△▼




「婆さん大変だ! 桃を拾ったぞ!」




 玄関から飛び込みながらそう叫ぶと、ぶふぉうと婆さんが茶を吹いた。すかさず男衆が床を舐め取る。


 その男衆を文字通り蹴散らしながら、桃をそっと置く。




「なんと、本当に桃じゃ。これは、川で拾ったのか?」


「おう。つーか婆さん、スルーしてんじゃねーよ。百年に1度って百年に1個しか拾ってないって意味じゃないだろうな」


「なにを言うか。儂が拾わんでも、村人が拾って届けてくれる。桃が流れてくるのが百年に1度じゃ」




 そーいや俺の前の桃太郎は、村のおばさんのひいひい爺さんだかが献上したんだっけ?




「だったらこの桃はなんだ? ただのでっかい桃か?」


「わからん。こんなことは初めてじゃ」


「婆さんの初めてっ!」「桃が? きゅうりが? 菊が?」「むしろオレたちの初めてっ!」「桃が? きゅうりが? 菊が?」




 男衆はスルーしたい。百年周期で。




「さっそく割ろうぜ、婆さん」


「うーむ、あまり気が進まんなぁ……」


「なんでだよ。中で桃太郎も待ってるよ。ハリーハリーって」


「しかしなぁ。流石に食い飽きたからのう」


「そんなの男衆に食べさせればいいじゃん!」




 俺も食べ飽きてたのでサラリと押し付ける。




「人命救助! 人命優先!」


「仕方ないのう、切るだけじゃぞ」




 よっこいしょ、と重い腰を上げる。すかさず男衆の一人が包丁を手渡す。


 婆さんはそれを天に向かって掲げると、桃に向かって振り下ろす。刃はまるで届いていない。




「おいおい婆さん、なにやって……」



 俺はそこまでしか言えなかった。


 桃に一直線の光の筋が入る。届いていないはずの包丁と、同じ軌跡の光の筋が。




如意斬剣にょいざんけん奥義、【悠久はるか】」




 婆さんの声が響く。


 って中の赤子がーっ?!


 俺の驚愕をよそに、ぱかりと割れた桃の中から、無傷のまますうすうと寝息を立てる赤ん坊が現れる。




「ならびに、奥義【透過すかし】じゃ」




 包丁を肩に担ぎながらそう言う婆さんのドヤ顔は、この上なくウザ格好良かった。


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