夢の終わり、時の始まり
長く、否、永く眠っていた気がする。
どれほどかなんて分からない。知りようもない。覚えていないのだ。あの時彼に連れてこられて繋がれた、あの時から私は―――
目が醒めてしまった、ということはもしや誰か入ってきたのだろうか。この結界に?
「有りえないわ…」
命一つ分の結界。全てを拒絶し私を眠らせる完全無欠の防壁。事実、今回を除いて一度も起きることは無かった、と思う。
手を引かれるまま、追っ手から逃げ、理由も知らぬ状態で鎖に繋がれた。その後に彼は命を燃やしてこの結界を成したのだ。そのことだけを覚えている。
もしかしたら、助けに来てくれたのだろうか。頬に冷たい床、光の入らない牢。そこから解放しに来た王子様。
嗚呼、なんて淡く馬鹿らしい幻想なのでしょう。此処で繋がれている私はきっと罪ある身。来るとしたら私を処刑しに来た者だろう。
扉が開く音がした。かすかな足音が響き、空気が動く。
唐突に聞こえる剣戟の音。きっと、彼だ。私を此処に繋いだ彼に違いない。
本当に、一体何処へ行っていたのかしら。私をこんなにも待たせて―――
違う。誰だ、お前は誰だ。
ごとり、鳥かごが揺れる。
酷い頭痛だ。割れる様に痛い。
ステンドグラスが照らし示すその先に青年が一人。
「…ユリウス?」
私を守って。どうか置いていかないで。
「大丈夫」
此処にいるよ。ゆっくりお休み。
温もりに身を委ねる。ガコン、世界の閉じる音がした。
***************************
どうしたものか、光溢れる檻の中で途方に暮れた。眠り姫の隣に腰を下ろす
とりあえず、起きるまで待つしかない。意識のないレディに手を触れるのも憚れるし。
それにしても―――
床一面に広がる濡羽色の髪、長いまつ毛、華奢な体に纏う髪色と同じ服。見目は幼く、未だ十四、五歳といったところか。可愛いと美しいを足して二で割ったような容姿に思わず見とれてしまう。
しかし、先刻垣間見た紅い瞳はまるで全て吸い込んでしまうような怪しい魅力を孕んでいた。
その瞳がいつの間にか開かれている。ばっちり目が合ってしまった。
沈黙が横たわる。
「えっと…おはよう」
横たわったまま動かぬ沈黙、あと彼女。
小さな口が開くのを待つ。一度空気を吐き出して、確かめるようにして
「おはよう、ございます」
透き通る声が甘く響く。心地のいい余韻の中で、何処から話そうかと思案する。
「あの…騎士様」
怖づといった様子で口を開く。
「私を、助けに来たのですか?」
そうなのだろうか、この子を助けるために来たのか?彼の亡霊はここで守り続けた、俺が現れるまで。
「俺は…」
如何すればいい。俺は此処に残るべきなのか。彼女はそれで幸せなのか。幸せだったのか?
「俺は、此処から君を救いに来た」
手を差し伸べる。
そういえば
「俺はヴィリ・ヴァインツィアル。君は?」
重なる手は暖かく、小さい。
暫くの逡巡。綻び開く眩しい笑顔。
「私は、」
再び硬直する時間。抜け落ち漂白される微笑み。呆然とそのまま座り込んでしまう。
「ユリアーナ…です。」
再び顔をあげて見上げる瞳。その目に光は無くただ紅い。
掛ける言葉が見当たらなかった俺は、もう一度彼女の手を取った。
インフルになりまちた(´・ω・`)
つらいでしゅ




