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第4章-4 お姫様は装備品を手に入れた!

第四章


四 お姫様は装備品を手に入れた!




「あれ? 随分コンパクトにまとめたんだね」


 宿屋の前で馬車に荷物を積むエミリィちゃんを見て、後ろから声をかける。


「はい。途中から馬車も通れない道になるので、荷物は最低限にしています。森の入り口までは自分も、騎士団の皆さんも付いていけますが、果たしてどれくらいの人数が森に入れるかは行ってみないと分かりませんからね」


「そっかぁ。まぁ、私も荷物持つから、安心してよ」


「そんな! ヴィオ様にお荷物を持たせるなど……と言っても、人数次第ではお願いする場合もあるかも知れません」


 申し訳なさそうに俯くエミリィちゃん。


「エミリィのせいじゃないのに、そんな顔しないでよ。自分の荷物くらい持てるからさ、大丈夫だって」


「ヴィオ様……」


「あっ、まだ何か仕事中だったよね。手を止めさせちゃってゴメンね」


「いえ、ですが、予備の荷物も一応積んでおきたいので、一旦失礼いたします。ヴィオ様は出発までゆっくりお休みになっていてください」


 本当に忙しかったのだろう、パタパタと宿屋に戻っていく。

 この北の森ツアー一行は明らかに女手が不足しているのだ。

 って言うか、エミリィちゃんとオレしか居ない。

 他の女官も同行させる話が出ていたが、これ以上馬車を増やすと不都合だったし、最終的に人数を絞る可能性が多かったこともあり、こういう人数配分になったらしい。


 オレ自身は、中身は男子高校生な訳だし、男ばっかりでも全然気にならないけど、エミリィちゃんは大変だよな。

 気も使うだろうし、オレの世話は殆ど一人でやるわけだし、特に下着とかも入るから、荷造りなんて重労働に違いない。

 けど、手伝わせてくれないんだよなぁ……。


「ゆっくりと言われても、いよいよ出発だと思うと落ち着かないなぁ」


 周りを見渡すと、ベージュは村長と話しているし、ロッソとルーカはアメジスト騎士団と何やらミーティングっぽいことをしている。

 雑談だったらお邪魔できるんだけど、ミーティングっぽいから、入りづらい。

 イメルダさん達もお弁当を運んでくれたり忙しそうだし……。


 元は委員長気質だから、自分だけが暇って言うのはマジで落ち着かない。

 ああ、天気は良さそうで良かったなぁ……。


「姫様」


 暇すぎて伸びをしていると、不意に声がかかった。


「へ?」


 慣れない呼び方に驚いて振り向くと、村長の次男セルジョが荷物を小脇に抱えながら立っていた。

 多分、年齢的にはオレとそんなに変わらないんじゃないかな。

 精々、一つ二つ上くらいに見える。

 短く刈った栗色の髪に、日焼けした肌、大きな荷物を抱える姿は妙にしっくりくる。


「突然お声がけしてしまって、申し訳無いッス」


「いやいや、そんなに畏まらなくて良いから。これから森の入り口まで案内して貰うんだし、よろしくね」


「姫様……」


「あっ、あのさぁ、さっき一瞬、驚いちゃったのはさ、城だとあんまり姫様って呼ばれて無くて、聞き慣れなかっただけなんだよね」


 幼い妹も沢山いるしね。


「そうだったッスか」


「出来ればヴィオって呼んで貰えると、助かるんで、よろしくです」


 何か、セルジョの口調がちょっとうつってしまった。

 学生ぽい喋り方なので、懐かしくなる。


「承知しました。……それではヴィオ様、もう少ししたら出発しますが、何か心配事とか有りませんか? 俺で答えられることでしたら答えるッスよ」


「心配事かぁ……。まぁ、考え出すとキリがない気もするんだけど、馬車って途中までなの?」


「はい、多分今日の夕方くらいには舗装されていない道に出るので、そこからは馬になるッス。乗ったことありますか?」


「あるよ、一応……」


 ロッソに抱えられてだけど……。

 思い出すと心臓に悪いので、完全に思い出す前に記憶を追い払う。


「それは良かったッス。初めての乗馬でいきなりデコボコが激しい道だと辛いッスからね」


「そっかぁ」


 とは言え、ほぼ初めてなんだけど、大丈夫かな?


「そういや、丁度馬車から乗り換える辺りに、小さな湖があって、綺麗な青紫の花が咲いてるんッスよ」


「へぇ、珍しい花なの?」


「森の中までは分からないッスけど、この辺じゃあ、湖のとこだけッスね」


「おいセルジョ!」


 急に背後から声がかかる。


「あっ、兄貴!」


 ちょっと行儀は悪いんだけど、顔だけで振り向くとセルジョの兄、ジョルジョが神経質そうに眉を吊り上げて立っていた。


「何、手を休めているんだ……って、姫様!?」


 怒っている途中で話し相手がオレだと気付いたらしい。

 急に表情を和らげる。


「ああ、改まらなくて大丈夫だよ」


 こちらも、顔だけで振り向き続けるのも失礼だし、首も痛いので、身体ごとちゃんと振り返る。

 それにしても、第一印象では顔は女性的だし、少し癖のある銀髪で、色白、背は高いけれど、もっとおっとりしている印象だったのに……分からないものだな。


「いえ、失礼しました」


「弟さんに用事があったんだね。私の話し相手をしていてくれたんだ」


「左様ですか、愚弟がお役に立てたなら光栄です」


 愚弟って……。

 こっちの世界での謙遜文化は分からないけど、オレ自身はあんまり謙遜って好きじゃ無いんだよな。

 こういうのも地域差があることだろうし、単純に好き嫌いで語れないことも理屈では分かるんだけどさ。


「私もそろそろ支度するし、セルジョ、この後もよろしくね」



「はいッス!」


 でも、やっぱりわざわざ愚弟って言う必要の無い場面で言う辺りが感じ悪いので、ジョルジョでは無く、セルジョの方を向き直って挨拶を交わす。


 オレもまだまだ大人げないな。

 実際、高校生だけどさ。



◆ ◆ ◆



「ヴィオ様、森の中は不測の事態も考えられますので、こちらをお持ちください」


 イメルダさん達から激しく見送られてから暫くした頃、馬車で同席しているエミリィちゃんが包みを渡してきた。


「ん? 何これ? ナイフ?」


 綺麗な意匠が施された薄紫色の布を外すと、これまた美しい短剣が現れた。


「はい。護身用と言うより、つたが足に引っかかった時などに使うと言う意味でお渡ししています」


「成程ねぇ……すっごい綺麗」


 鞘やが煌びやかなのは勿論、そっと鞘から外してみた刃も美しい模様をしている。

 しかも、鞘とかには所々宝石が使われている。

 宝石にはあまり詳しくないんだけど、紫水晶アメジストをはじめ、色んなものが施されているようだ。


「王家の伝統品ですからね」


「え? そんなのオレ……じゃなかった、私が持って良いの!?」


「姫なんだから、良いに決まっています! ネーロ様からお預かりしていたのですよ」


「へぇ、あの兄貴がね」


 あの仕事人間がオレの心配なんて……。

 正直ちょっと意外。


 でも、王家の伝統品なのは納得。

 だって、これ、高級品感溢れすぎだもん。


「第一王子ってお立場なので、こちらに付いて来られないのを、大変気にされていましたよ」


「マジで?」


「これ以上言うと、自分が叱られる気がしますので、勘弁してください」


「あはは、確かに。……それにしても、エミリィはネーロ兄様とどういう関係なの?」


「はっ!?」


「だって、ナイフだったらベージュ兄様に渡すように頼んでも良くない? 王家の伝統品な訳だしさ」


 それ以外にも、結構接点のある二人なんだよな。

 以前、ブラジャーを作る話を進めたときも、元々の知り合いっぽかったし。

 ってか、結局ブラジャーは商品化されたのかな?


「…………」


 気まずいのか、押し黙るエミリィちゃん。

 そこでオレはハッとする。


「もしかして、個人的に親しかったりするの? だったら、応援――」


 言っている途中で、エミリィちゃんの大きなため息で続きを遮られる。


「はぁぁ、あのですね、そう言うんじゃ無いですよ! ベージュ様に頼んでも、あのシスコ……妹思いの方が大人しく刃物をヴィオ様に渡すとは思えなかったのでしょう。だから、ヴィオ様付のメイドである自分に託したのです。それに、自分Mっ気は無いので、お断りですよ。大体、ネーロ様も自分もヴィオ様のことが……いえ、何でも無いです」


 何か後半、ネーロ兄貴がボロクソ言われてた気がするけど、気のせいじゃないよな?

 第一王子なのに、酷い言われ様だ。

 きっとエミリィちゃんは玉の輿とかには興味が無いんだろうなぁ、そういうストイックなところも可愛いんだけどさ。


 うんうん、と妙に納得したところで馬車が停まった。

 どうやらちゃんとした街道はここまでらしい。

 ってか、ここまでもちゃんとした街道だったかは怪しいところだけど、結構デコボコしていたし。

 でも、この先はこれとは比べものにならないのだろう。


 こういう道路事情とか考えると、元の世界って本当に文明が進んで都市化していたんだなぁって思い知らされる。


「では、自分は荷物の移し替え等して参りますので、ヴィオ様はこちらでお待ちくださいね。あっ、お待ちの間にお茶とか飲みますか?」


「いや、良いよ。行ってらっしゃい」


 やっぱり、下着とかデリケートな荷物はエミリィちゃんの担当なんだろうな。


 外を覗くと、馬車から何頭かの馬を外したり、荷物を移したり、あと休憩の準備をしたり、皆それぞれ忙しそうだ。


 ふと、反対側の窓を覗くと、小さな湖が少し遠くに見える。

 遠くと言っても大した距離じゃ無さそうだし、今のうちに珍しい花とやらを見に行ってみようかな?


 青紫の花を鏡の中のお姫様に見せてあげたい。

 本当は花をプレゼントしたら喜ぶと思うんだけど、鏡の中だしなぁ……せめて愛でて貰いたい。


 鏡の中のお姫様と話していると、本当に箱入りで驚かされる。

 まず、まともに出かけたことが無い。

 城も結構広いし、中庭とかに綺麗な花は咲いているけど、自然に咲いている物も是非知って欲しい。


 と言うわけで、善は急げ。


 幸い皆忙しそうだし、サクッと皆からは見えない方の扉を開けて、湖へ向かう。



◆ ◆ ◆



 あまり見通しの良くないあぜ道を少し歩くと、程なくして湖に着いた。

 湖が先程居た場所よりやや下ったところだったので、少し離れたところからでも見えたようだ。


「うわぁ、綺麗な湖。えっと花は……これか!」


 結構色んな色の花が咲いていたけど、よく見ると確かに青紫の花が可愛らしく咲いていた。

 小ぶりな花だけど、結構咲いているので何本か摘んでポシェットに入れる。

 後で押し花の栞を作ろう。


「ほら、お姫様。メッチャ綺麗だぞ」


 ポシェットからお姫様の魂が入っているコンパクトを取り出そうとしたその時――


――ガサッ。


 物陰から複数の影が現れた――

ブックマークや感想、評価など、とっても嬉しいです。

凄く更新の励みになっています。


お陰様で24万アクセス突破しました!


あと、誤字脱字報告もありがとうございます。

またコツコツ更新していくので、続きも読んで貰えると嬉しいです。

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