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第3章-22 お姉様はスキンシップ激し目じゃないですよね?

第三章


二十二 お姉様はスキンシップ激し目じゃないですよね?




「うわぁ、マジででっかい森だなぁ。これが北の賢者の森なの?」


 タシャとトマスの村を出発して数日。

 いよいよ、目的地まであと僅か、北の森はもう直ぐそこ。

 ってか、まだ北の森どころか、その手前のノルド村にも入ってないというのに、もう森が存在感を放ちまくっている。

 流石に僅かな山道を残して国境をほぼ塞いでいるだけあって、本当に広大だ。


「ヴィオ様、でっかいじゃなくて、大きいですよ」


 馬車の窓を開けて叫ぶオレに、メイドのエミリィちゃんが軽く咳払いをしつつ注意する。


「うぅ、ごめん」


 ホント、申し訳ないんだけど、やっぱり十六年間男子として生きてきたわけで、しかも一般庶民だったわけで、突然異世界のお姫様に転生させられても、中々順応できないわけですよ。

 特にキツいのが言葉遣い。

 うっかり出ちゃうし、後は気の許せる相手がいると、砕けちゃう。


 でも、お姫様という立場上、好ましくない言葉遣いなのは間違いないので、どうにかしないとヤバいよな……やっぱり。


 ……と、考え込んでいると、エミリィちゃんがもう一度咳払いをしてから、窓の外を覗く。


「ですが……マジででっかいですね」


 そう言って真っ黒な瞳を細めて悪戯っぽく微笑む。


「エミリィ……」


 顔を見合わせて笑ってしまう。


 オレが言葉遣いの注意を受けて落ち込んでいると心配してくれたのかな?

 転生したての頃に比べて随分お互いに打ち解けてきた気がする。


 特にこの道中は同じ馬車の中でずっと一緒だったし、色んな話をした。


 一番興味深かったのが、エミリィちゃんの留学話。

 メイドの養成機関とかなのかな?

 話の腰を折るのも悪いから、詳しいことは聞いていないけど、例の投げナイフの技などは留学先の学校で行われた授業の一環だったらしい。

 他にもお茶とかお料理の他にも体術とか色々面白い科目があったそうだ。

 ってか、本当にメイドの学校なのかな?

 王族付のメイドになるのって、大変なんだな。


 だけど、話すばかりでなく、無言の時間も決して気まずくない。


 元の身体の時に男友達とだったらお互いスマホ見てたり、何かしていたりで、集まってはいるんだけど、無言の時って有ったけど、女の子相手ではまず考えられない。


 そう考えると、オレってばちょっと大人の階段を登っているのか?

 ……違うか、女子の階段を登っているんだな。

 女子として、女子と打ち解けてきているんだよな。

 ぐすん。


 でもでも、それだけじゃない気がする。

 オレにだけは言われたくないだろうけど、エミリィちゃんって女子っぽくないんだよな。

 いや、美人だよ。

 フワフワな鶯色うぐいすいろの髪に、ちょっと釣り目がちな真っ黒な瞳。

 体型もスラッとしていて、モデルさんみたい。


 ……なんだけど、気質の問題なのかな?

 まぁ、オレにとっては変に緊張しないし、有り難いことなんだけどね。



◆ ◆ ◆



「ベージュ様、ヴィオーラ様、皆様、お目にかかれて光栄でございます。女将のイメルダでございます」


 ノルド村に着くと、そのまま宿屋に通された。

 村と言っても、割と大きな村だ。

 村と町の間くらいの規模かな?

 馬車の窓からチラッと見た感じだけど。

 正直、もっとずっと小さな村だと思っていた。


 タシャとトマスの村を出てから立ち寄った村は、全て小さな村だったし、男手も少なくどこも苦労していた。

 しかし、ここは普通に働き盛りの男性も居るようだ。


 実際、この挨拶を交わすまでにも何人も若い男性とすれ違っている。


 ってか、挨拶ね。

 挨拶。


「第二王子ベージュに、第五王女ヴィオーラ、そして婚約者候補のロッソ=レオーネ殿だ。暫く世話になる」


 ベージュが代表して挨拶をするその相手は――


「うわぁ、そっくり」


 ――思わず小声が漏れてしまうくらい、第四王妃イザベラ様にそっくり。


 女将のイメルダさん。

 事前情報だと、イザベラ様のお姉さんらしいけど、そんなに年は離れてないんじゃないかな?

 双子とまでは言わないけど、かなりそっくりだ。

 それに髪の毛も……イザベラ様より若干青みが強いけど、青紫色。

 紫の申し子(アメジスト・レイン)だ。

 転生して結構日も経っているし、こうやって旅もしてきたけど、王族貴族以外で紫の申し子(アメジスト・レイン)を実際に目にするのは初めてだ。


 っつーか、細かく言うと初めてではない。

 初めては村を走る馬車で済ませている。


 何故かこの村、青みがかった髪の者が多いのだ。

 そもそもこの異世界自体、かなりカラフルな髪や目の色の人間が多いんだけど、紫は言うまでもなく少ないし、青系の髪もかなり少ない印象なのだ。


 だけど、このノルド村は違うみたい。

 そのせいなのか、青い髪に混じって、かなり青みが強いけれど、青紫っぽい髪の女性を何人か目にしたのだ。

 細かい基準は知らないんだけど、多分、ギリギリ紫の申し子(アメジスト・レイン)なんじゃないかな?


 因みに馬車から見た村人達と比べると、イメルダさんの髪の毛は紫が強いかも。


 な~んて、マジマジとイメルダさんを見つめていたら、不意に微笑まれてしまった。

 流石、イザベラ様のお姉さん。

 美しい。


「お疲れでしょうし、お茶でも如何ですか?」


「有り難い申し出だが、北の森について色々確認したいこともある。直ぐに打ち合わせの席を設けて欲しいのだが」


 イメルダさんの申し出をベージュが少し申し訳なさそうに、却下する。

 と言うか、ベージュだって本当は疲れてるから、休みたいのかも。

 でも、そうも言ってられないのかな?


「承知しました。それでは、この者が対応いたします」


 お茶の提案を断られるのは予想していたのか、ずっと隣で控えていた丸顔で人の良さそうな男性がお辞儀をした。


「パオロでございます」


 年齢はイメルダさんと同じくらいだろうか?

 身長も女性の中では高身長なイメルダさんと同じくらいだ。


 外見的には派手めの美人なイメルダさんと、素朴な容姿のパオロさんだとしっくりこない気もしないでもないんだけど……。


 でも、夫婦……なのかな?

 何となく、そんな感じがするんだけど……。


「そうか、ではご主人、よろしく頼む」


「いえ、私は使用人頭を務めております」


 ほら、ベージュも夫婦だって思ったみたいだし、そういう感じがしたんだけどな。

 でも、違っていたみたいだ。

 ベージュも若干気まずそうに頭を掻く。

 ってか、この変態兄貴はオレに絡まないときは、本当にビックリするくらいまともなんだよな。

 いつもそうしていて欲しい限りだよ、全く。


「そうだったか。失礼した。それでは、パオロ殿、よろしく頼む。……あっ、エミリィはこちらで詳しい説明を一緒に聞いておくように。後でヴィオにかみ砕いて説明してやってくれ」


「承知いたしました」


 えー、エミリィちゃん、承知しちゃうの?

 オレだって一応元優等生だし、自分で会議の話聞いて理解できると思うよ、多分。

 信用ないなぁ……。

 普段、好き勝手やり過ぎているせいだとしたら、オレの自業自得なんだけどさ。


「それと……女将。妹の相手をお願いできるか? 妹は城ではイザベラ様(第四王妃)に随分世話になっているので、土産話もあるだろう」


「イザベラ……様の……。はっ、はい! 勿論でございますわ! では、ヴィオーラ様、参りましょう」


 あっ、イザベラ様がお手紙を渡したいって話がベージュにもちゃんと通っていたんだな。

 オレが自由行動できるって言う裏取引まで承知しているのかは、定かではないけどね。


 それにしても、実の妹でも王家に嫁いだから、様付けで呼ぶんだな。

 何か複雑。

 それでも、妹の名前を聞いて嬉しそうなイメルダさんに連れられて、オレはホールを後にした。


 っつーか、イザベラ様と違って、胸揉んできたり、激しいスキンシップはしてこないよね?

 エミリィちゃんも居ないし、オレ、大丈夫かな?

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― 新着の感想 ―
[一言] 王族付きの使用人っていざとなったら身を挺して王族を逃がす役目もあるはずだからねぇ そしてこのお姉さんは……( ˘ω˘ )
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