Little Red Hood。
光はただそこにある在るものだと、思っていた。
純粋に、美しいものが美しい輝きを放つのだと、
疑いもしなかった。
思いのままに形作られたものは、
やがて、砕かれ、細かな破片と成り果てた。
在るべきものが、崩れ去る。
その千切れた破片へと伸ばした指先が、
輪郭を失い、冷たく、灰色に滲んだ空に侵されてゆく。
匂いたつ、群青。
閃光にも似た、大海の青き飛沫は、
魂を縛りつけていた、鼠灰色の鎖を断ち切った。
見ること叶わぬ海の王者は太陽の匂いを孕み、
冷え切っていた手に、一本の筆を握らせた。
すべては、光を、自らを取り戻すために。
少女の色彩は、ここから始まった。
--もう二度と、描く事を止めない。
--描き続ける。この鼓動がやむまで。
祖母が伝えた物語のように、この一筆が、
未来に繋がることを信じて、
想いを刻み込む。
母なる大洋に抱かれ、
飛沫が朝日の祝福を受けて七色に輝く。
魂が鼓動した、
あの煌めきと、ざわめきを永遠に忘れない。
さあ、六弦を爪弾こう。
鳴りやむことのない、魂の鼓動のままに。
壱宮凪さま作「写楽」に寄せて
https://ncode.syosetu.com/n4494df/
パン大好き