とりあえず加護を実験してみる
ランディール家から、定期的に寄付という名の生活保護を受けられるようになり
安定した暮らしができるようになった。が、外食がいまいち微妙なのだ。
教会のある街は、貿易中継地点だけあって宿屋が多い。
宿屋と料理屋、酒場はだいたい一緒になっており、結構多様な料理が楽しめるのだが
ぶっちゃけあまりおいしくない。
たぶん、素材の鮮度がいまいちなのと調味料が少ないせいだ。
修復魔法でおいしくならないかなー、と思ったので、近くの店で買った料理を持ち帰り
味をかえられないか実験してみた。
一品目 塩を振っただけの焼き魚(鮎みたいな川魚)
鮮度が微妙で臭みがある・・・。修復魔法で鮮度が良くならないか試す。
・・・結果、変わらず。
鮮度とはつまり時間の経過だから、修復ではだめなのか・・・
これによって修復は時間を巻き戻すものではないことがわかった。
また、焼いた魚が生魚に戻ることもなかった。
二品目 味の薄いスープ
人参っぽい野菜、ジャガイモっぽい野菜、豚肉?だけの簡素なスープ。
味付けは塩だけ。鮮度は変えられないので、スープの味そのものを変えられないか
試してみた。
結果、やはり何も変わらなかった。
三品目 ぬるいエール
冷やして飲みたかった。
しかし一応立場は聖職者だ。でも気にしないことにした。
聖職者ではない、神様のパシリなだけだ。
てか神様にも酒好きいるからかんけーないだろ。
結果は、凍った。すごく落ち込んだ。
調整すれば冷やすことはできそうでちょっとテンションあがった。
実験結果から、修復魔法には結構制限があることがわかった。
結論からいうと、回復ではなく具現化する力であること。
無機物と有機物では大きな違いがあること。
教会を掃除した時もそうだったが、キレイにするのに固体の時間を戻してるわけじゃなく
キレイになったものを具現化しているんだろう、と。
ただし、そこには制限があり、加工されているものは加工後にしか変えられない。
加工する前の状態には戻せないのだ。
例えば、壊れた木のイスを新品同様にはできるが、木そのものには戻せない。
ひびの入ってかけた石壁を整えることはできるが、石を加工前の形には戻せない。
それらは良く見ると、新品になっているのではなく、あくまで修理されていること。
また、埃や汚れがなくなるのは、物質そのものに効果があるのではなく
イメージした一定の範囲に効果があるのではと仮定した。
まだまだ矛盾があると思うが、おそらくこれは「無限」を発生させないための制限だと思った。
つまり、できないことは絶対にできない、という制限。
リディアの足を治すことができたのは、エクスヒールという魔法が実在するからだろう。
エクスヒールを具現化することで、治療することができた。
逆をいえば、存在しなかったら治す事はできなかったのだ。
そしてもうひとつの疑問が沸いた。
そもそもオリュンポス十二神にはこういった力を持つ神はいないのだ。
この力は・・・具現化、いわば制限された創生。
それは創生神ウラノスの力だということ。
ゼウスが言った加護は、オリュンポス十二神の加護のはずだ。
俺は手にした力が、解決できない疑問と共にあることを知った。
そして料理もどうしようもないことに気づいた。