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転生したら神様代理にさせられた  作者: 海老の味噌汁
3/4

とりあえず生活できるようになった

もらった寄付金で生活服を何着か買い、残りは食費にしていた。

教会にはキッチンみたいなのはあったが、料理できないので外食だ。

ちなみに教会のある街は小さいながらもある程度の物資があり

貿易の中継地点のような街だ。

なぜここに主神の教会があるのかは謎だったが、どうやら歴史上では

この地は重要な地だったが、時代とともに過疎になったようだ。


そして、先日治した車椅子の少女、リディアは今日も祈りに来ている。


「リューイ様、私の父がお礼をしたいので食事にお誘いしたいと

言っているのですが、いかがでしょうか?」


リューイとは隆一、前世での俺の名前である。

発音のせいなのか ち が略されてしまうようで、リューイになってしまった。


「そうですね、どうせリディアさんしか来ないですし・・・

せっかくのお誘いですから、お受けします。」


祈りに来るような信者は今のところリディアしかいないのが現状だ。


リディアの家、ランディール家は伯爵といえど地方領主。

教会から馬車で2時間ほどいった、そこそこの街中にあるようだ。

道中、旅人や商人、冒険者風の人たちとすれ違い

異世界にきたんだなーという実感を今更ながら感じていた。



「ようこそ、ランディール家へ!」


肩幅広めの50代くらい、しぶいおっさんが笑顔で迎えてくれた。


「私はランディール家当主、デューク・ランディールと申します。

リューク様はエクスヒールを使える高位の神官様だとお聞きしました。

この度は娘の足を治療していただき、感謝の言葉もございません。」


神官っていうより神様のパシリみたいなもんなんだが・・・

とはいえ、無碍に否定はできないので、いえいえ、と返した。


「立ち話もなんなので、リビングまでおこしください。

食事の用意は済んでおりますので、どうぞ心ゆくまでお寛ぎください。」


俺は言われるままに屋敷の中に案内され、貴族らしい大きなテーブルの

部屋で豪華な食事を堪能した。


「しかし、無人だったはずの教会におられたリューイ様。

いつこの街にこられたのでしょうか?中央神殿からもなにも

通達もなかったので、まさか神官様がおられるとは思ってもいませんでした。」


中央神殿とは、この街が所属する王国の帝都にある神殿。

十二神全てを奉る大きな神殿・・・と神の知識にあった。

知識はあるがいったことは当然ないのでどんな建物かはわからない。


「たまたま掃除をしに来ていただけです。そうしたら、たまたま

リディアさんが礼拝しに来たので、たまたまヒールをかけました。」


リディアが可笑しそうにクスクスと笑う。

「たまたまなんですね。」


「たまたまです。」


笑顔で話すリディアとは違い、神妙な面持ちで

デュークが話しを始めた。


「全ては神の思し召しというのでしょうか・・・

しかし、リューイ様のような方があの教会にいたことを

失礼ながら中央神殿に問い合わせたところ、そのような

神官はいない、と返答が返ってきました。

おかしいと思い、領内の住民登録にも照合しましたが

リューイ様の名前はありませんでした。」


あ、やばい、身元調べられてる・・・どうしよう。

住民登録なんてあるはずがない、そもそもこの世界の住民ではなかったのだから。

どう答えていいものか悩んでいると、デュークは俺を疑う目で

更に話を続ける。


「正直リューク様がどこの誰なのかが全くわからないのです。

中央神殿にも巡礼記録がないことから、他国の神官というわけでもない。

旅人や冒険者だったとしても、普通の人にエクスヒールなど使えるわけがない。

そもそも、今の世界には使えるものは、ほとんどいない・・・。」


「えー、それはその・・・・」

ヒールは神の力を借り受けるといわれいるようだ。

魔力を使う魔法とは違い、神聖力と言われる力を行使する。

それは信仰によって神の加護を得てできる特殊な魔法らしい。


「ただ、私の娘をたまたま、という理由だけで治療してくださった。

長年無人だった教会も驚くほどキレイになっていた。

身元がわからなくても、リューイ様は加護を得ていて、悪人ではないのは確か。

私どもとしては、何かを感じずにはいられないのです。」


もしかしたら神の使いぐらいに思われてるのか・・・?

状況を考えればそうだよな。

どうするか、ガチで神の使いとして活動してしまうか・・・

いや、おおっぴらにそんなことをすれば、下手すると混乱が起きる。

信仰が集まるのはいいが、色々面倒も増えそうだ。


「あの・・・俺としては、細かいことは今は言えません。

それに、あまり名前を広げてしまうと、本当に困っている人達を

助けることができなくなってしまう恐れがあります。

なので、リディアさんを治したことはここだけの話にして欲しいのですが・・。」


俺の言葉を聞くと、デュークは感心したような顔で


「私が予想した通りのお方だったようだ。

つまり、こういうことでしょう。

リューイ様は、かの聖ルミナス神殿からお忍びでこの国に訪れ

一般市民のために加護を与えるためにやってきた。

そういうことでしょう?」


聖ルミナス神殿とは、この世界の中心に位置した十二神が生まれたとされる聖地。

どこの国にも属さず、戦力も持たず、ただ神々のためだけにある国の神殿。

ただし、信仰のなくなりかけている今、形だけの神の国となっているらしい。


「そ・・・そういうことにしていただけるとありがたいです。」


ちょっと曖昧な返事になってしまった。

ん?とデュークは首をかしげた。俺の態度がちょっと不思議に思われたようだ。


「そういうことであれば、私どもも口を噤みます。

エクスヒールのことは、私と家内、リディア、あと従者の二人のみが

知っていますが、口外しないことを約束いたします。」


王都の中央神殿には、熱心な信者がボランティアで掃除をしていただけだったと

伝えることと、とりあえずこの領地の民として登録することもしてくれた。


「リューイ様があの教会におられるのなら、定期的に寄付をします。」


これもありがたかった。とりあえず食いっぱぐれなくてすみそうだ。

帰り際に、デュークから寄付金として結構な金貨を頂いたし

安定した生活がおくれるようになって、安堵した。


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