太后
「王妃がいれば王府の家政は心配ないわ。それに呂妃は聡明と聞いている」
「家政は唐孺人に補佐をしてもらっております…なんせ樊孺人が家政を仕切っておりましたから…」
呂妃は控えめに言った。
「樊孺人…先帝の貴妃の姪ね。樊家の横暴さには目に余るわ」
「先帝の貴妃とおっしゃいますと、華貴妃娘娘でしょうか?」
「そうよ。子どもが公主で良かった。先帝もそうおっしゃっていたわ」
華貴妃は樊孺人の伯母である。先帝との間に上谷公主を設けたが男子には恵まれなかった。樊孺人の母である蔡国夫人は伯母である華貴妃の引き立てがあり、正一品国夫人に封じられた。
鎮国公の弟、樊富と結婚する前に封じられたものだから、前代未聞だった。それだけ先帝は彼女を可愛がっていた。
「ところで、哀家を訪ねたのには理由があるでしょう?聞いたけれど、王妾の位号を整えようとしているとか」
「失礼ですが、どなたからお聞きに?」
「劉醇よ」
「劉殿でしたか」
「石邑が劉醇と正室夫人に収まって哀家は安堵してね、何かと劉醇は王府の話もしてくれるから色々と耳に入るのよ。さっそくだけれど、新たな位号を教えてちょうだい」
太后に促されて呂妃は瞳を輝かせながら自分が考えた位号を説明した。
「まずは王妃、次に夫人、美人、孺人、姫妾、侍妾とすれば簡素にできます」
「孺人の位を低くするのね。哀家は賛成よ。帝にお話しましょう」
太后がそういうと見計らったかのように掌事宮女が現れて午睡の時間を告げた。
「帰っていいわ」
「感謝します」
呂妃は一礼をして慈慶宮を後にした。慈慶宮から前方にある後宮を見渡した。それはとてもいい景色だった。