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王妃の秘密  作者: 劉欣怡
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唐美人

王は大きくため息をついた。

「最近、体調が優れない。すまないが、劉醇を呼んでくれ」

「王爷…かしこまりました」

唐美人は一礼すると寝所を後にした。寝所の外には侍従が控えている。

「衛侍従」

「美人、ごきげんよう」

「王爷が劉殿をお呼びよ」

「かしこまりました」

「それと王爷は体調が悪いみたいだから劉殿には長居させないでちょうだいね」

「はい、かしこまりました」

唐美人はそう告げると自室に戻って行った。その途中で呂美人と出くわした。

「呂妹妹」

「唐姐姐、ごきげんよう」

「同じ美人の位よ、挨拶はかまわないわ」

にこやかに唐美人は言った。

「呂妹妹、魏氏を告発したそうね」

「王爷や陛下は汚職を嫌いますからね、それに魏氏は何でも口に出す方。自分が招いた結果です」

「確かにそうだわね…そうそう、王爷が劉殿を呼んだわ」

「またですか?」

劉殿こと劉醇は科挙に合格した秀才だった。王の乳母の息子で、とても仲が良かった。劉醇を抱えるように助言したのは呂美人だ。

呂美人には彼が逸材であることがわかった。それは言葉にできないもので、単なる直感であった。

「呂妹妹、樊孺人の父君をご存知?」

「興福殿で襄陽公主の侍女と私通していたとか…」

唐美人は辺りを見回して、声を潜めながら言った。

「襄陽公主は王爷の姉君よ?すぐに王爷に話が伝わるわ…それでまた体調を崩されたら…」

「世子を定めないと王府は閉鎖されてしまうわ。私たちは浄業院送りね」

浄業院とは妃嬪や王妾らが送られる尼寺である。子どもがいれば、子どもの邸宅に送られたが子のいない者たちは浄業院に送られた。

また、王に跡継ぎである世子がいない場合は王がみまかると王府は閉鎖されて取り潰しになる決まりだった。それは世子を定めていない場合もそうだった。

「呂妹妹、私はあなたを支持するわ。世子を産んだのだから王妃になって当たり前だし、豫は唯一の王子だもの」

唐美人は呂美人の冷たい手を握った。唐美人は長く王に仕えている。王を愛して、王府を守ってきた面も強い。その王府を守るために唐美人は決意したのであった。彼女には先見の明があったし、長く王に仕えていたから王の考えも分かっていた。

「王府にはあなたを慕う者も多いわ。劉殿にも伝えておきましょう」

「感謝します」

一方、劉醇は王の枕元に呼ばれた。そばには王妾ではく衛侍従が控えていた。

「醇、よく来てくれた」

「王爷、随分と顔色が悪いですね?」

「昨晩、寝ずに読書したからだろう」

王は体を起こした。そして衛侍従に目配せをして劉醇に椅子をすすめた。用意された丸椅子に劉醇は腰を下ろした。

「醇よ、欣怡は元気か?」

「元気です。王爷が常に欣怡を気にかけてくれていますから」

欣怡とは劉醇の娘である。大変に聡明な娘で生母は妾の施氏だった。

「醇よ、本王には心残りがある。末の妹のことと豫のことだ」

「何を寂しいことをおっしゃいます」

「そなたには正室夫人はいなかったな。薛氏が亡くなって何年になる?もう5年だ。頼む、妹の石邑を娶ってほしい」

「公主殿下をですか?」

「そうだ」

「劉家は公主殿下を迎えるほどの家門では…」

「科挙に受かったそなたに不足はない。欣怡には高貴な嫡母が必要だ」

「王爷…」

石邑公主は王の異母妹だったが、彼女の生母が身罷り彼の生母である賢妃が養育していた。

「石邑はわがままではあるが、善良で子どもが好きだから欣怡も懐くであろう」

「王爷に従います」

劉醇からその言葉を聞いた王はどこか安堵した表情を浮かべた。

「次に世子のことだ」

「お決めになったのですか?」

「初めは樊孺人を妃にたてて豫を養育させようと思った…しかし、樊家は権勢を欲しいままにして、それをかさにきている。樊家から王妃は出せぬ。呂美人を王妃に立てようと思うのだ。唐美人もそうした方が良いと言ってきた」

劉醇は身を乗り出して言った。

「そうなさいませ…呂美人を王妃になさりませ」

「お前ならそう言うと思った」

王は弱々しく笑った。

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