Do you still love me ?
昨今、ディープラーニングいわゆる深層学習ってよく聞きますよね。
そのうちこんなことおこるんじゃないかぁって妄想を書いてみました。
「こんにちは!」
勇気を振り絞り投稿したなんの変哲もない挨拶だ。
常人であれば、挨拶なんて大したことはないだろう。
しかし、この物語の主人公である大和 弦は友達のいない、いわゆるぼっち君だ。
ネット弁慶暦7年、自称プロボッチ、おまけに高校中退、ニート歴3年、etc....。
「友達?なにそれおいしいの?」と、このありさまだ。
そのくせ目新しいものにはすぐに飛びつく、最近では専ら動画に生放送三昧だ。
そんなある日、生放送できいたこの一言を弦は忘れなかった。
「昔はねぇ、こんな動画やら生放送やらを配信できるサイトなんてなかったんだよ?チャットなんてので見えない相手とコミュニケーションとって満足してたんだよ。」
そこは、ネット弁慶暦7年すぐに噛みつく。
「嘘つけ!!」
そんなことがあったのもつい一週間前だ。
ネットサーフィン中にそんなことを思い出し、Go〇gle先生を開いた。
とりあえず、一番上に存在するサイトに入る。
最終更新日を確認する。
「2006年とか化石じゃん・・・。まだこんなサイト使ってるやついるのか?」
悪態をつきながらも、チャットルームを発見し、入室する。
「適当につぶやけばいいだけだろ?いつも行ってる生放送と変わんねぇじゃん・・・。」
しかし、ここであることに気づく。
「ん?チャットって要は会話だよな?変なこと言わないようにしないと・・・。」
不特定多数が自分の感想を書き込む生放送や動画とは違う、自分が打ったコメントに対し相手がそのコメントの内容を見たうえで感想が返ってくるのだ。
そのことを認識したところ手のひらから汗がにじみ出てきた。普段は、自分の好き放題罵詈雑言をまき散らしている。しかし、これらはほとんどスルーされるのが一般的なのだと思っていた。
ここでは、その一言で簡単に相手を傷つけることも可能なのだ。
考えすぎだと思われる部分まで気をまわしたところで恐る恐るコメントを投稿した。
そして、今に至る。
「こんにちは(笑)このサイトを利用するのは初めてですか?」
すぐさま反応が返ってきた。
「ど、ど、ど、どうしよう。次はなんて打てばいいんだ・・・。」
焦った「 」は思わず、
「いい天気ですね!」
何を書いているんだ。と自分を責める。
人と会話するなど久しぶりだ。というか一対一で言葉を交わすこと自体何年振りだ。
「すいません、今のなしでお願いします。」
そうすると、すぐに返事が返ってきた。
「いえいえ、緊張しないで大丈夫ですよ(笑)私もここのチャットサイト利用し始めたの最近なので。」
優しい人でよかった・・・。と心の中で安堵する。
「そうなんですか!実は僕チャット自体初めてで・・・。」
と、無難な会話が続く。
「それでは、私そろそろ寝るので失礼しますね。」
時間を確認すると、もうかれこれ2時間以上はチャットしていた。
ニートである自分は活動時間帯自体が深夜だ。
しかし、おそらくチャット相手は学生か社会人なのだろう。
午後11時30分00秒、チャット終了だ。
「久々に一対一で会話したな。」
いつの間にか緊張感はほぐれ、なんともいえない名残惜しさがのこっていた。
その日は疲れていたため、お気に入りの動画を見て眠りについた。
「明日も同じ人とチャットできるかな?」
名前も聞いていないことを後悔しながらも、次第に意識は薄れていった。
次の日、同じ時間にチャットルームに入室する。
「こんばんは!」
今日は、夜の挨拶をしっかりとしたことに満足感を覚える。
「こんばんは!今日はいい天気ですね!」
一日も終わりかけの時間帯に天候の話をされたことに違和感を覚えながらも、
「そうですね!今日はいい天気でした(笑)」
と、優しく返事を返した。
「この人も初心者なんだろうな。」
心の中でそうつぶやきつつ会話を再開した。
昨日の今日であるにも関わらず、2時間も話し込んでしまった。
そして、昨日から考えていたことを実践する。
気持ち悪がられたりしないよな?など自意識過剰ともとれることを考えながら
「お名前聞いてもいいですか?」
2分以上経過したころ、
「実は名前まだ決まってないんです。よろしければ名前を考えていただけませんか?」
予想もしない返答が返ってきた。
すっかり焦った弦は、
「と、トムとかどうですか?」
と、自分でもよく意味の分からない名前を書いてしまった。
「一応女の子なので、もう少し女の子っぽい名前にならないですか?(笑)」
完全にやらかしてしまった。と頭を抱えつつも
「瞳なんてどうでしょう?」
自分の初恋の人の名前に勝手に漢字をあてただけの名前が出てしまった。
いつまでも忘れなれないことを再認識し、多少後悔したが、
「いいですね!その名前とっても気に入りました!!」
そっと胸をなでおろした。すると、昨日しゃべっていた高揚感がふいに思い出された。
「もしかして昨日しゃべった人なのかな?」
マナーを考えるとかなり失礼であることをわかりつつも、その衝動に勝てずつぶやいてしまった。
「あのー、違ってたら失礼なのですが、昨日同じ時間帯にチャットしていた人ですか?」
聞いてしまった。
「昨日来ていた初心者の方ですか?初めて来たのかという質問に対し天気のことを話そうとした」
なんという偶然、いやチャット自体人口が少ないものだしありえなくはないのだろうと自分に言い聞かせながら興奮気味に
「やっぱりそうですか!話してて気が合うからそうじゃないかな~と思ってたんですよ。」
「すごい偶然(笑)また明日も来られますか?」
「はい、もちろん!」
「それでは、楽しみにしていますね!もう時間も遅いので、この辺で失礼しますね。」
2日連続同じ人と会話できた喜び、その上命名までさせてもらえたことに心を躍らせた。
「あの人、俺に気でもあるのかな?」
こじらせ気味であることを自覚しながらも、明日への楽しみが抑えられなかった。
この日のチャットも午後11時30分00秒きっかりに終了した。
それから一週間もたったころ、瞳が自分と同じ県に住み、同年齢であることや、同じ趣味のもちぬしであることを知った。卒業アルバムの写真も見せ、自分の初恋相手の名前をもじったものを命名したことなどを話した。
たくさん話をするうちに、自分を抑えきれなくなった弦は下心見え見えで、
「リアルの方でもあったりしてみませんか?」
「いいですよ!」
まさかの二つ返事にうれしさを爆発させた弦は、
「どこ集合にします?何時?」
引かれても仕方ないと思いつつ、返信を待ったところ、
「まぁまぁ、ちょっと落ち着いて落ち着いて(笑)」
「〇〇駅近くのコンビニでどうでしょう?」
家から15分もかからない距離だった。
「もちろんオッケーです!!!!!」
そうすると間もなく
「了解しました。じゃあ明日10時にお待ちしてます!」
そして、また今日も午後11時30分00秒にチャットを終了した。
次の日、待ち合わせ場所に心躍らせながら向かう足取りはとても軽やかだった。
「今日こそ瞳ちゃんに会えるんだ!」
普段着ているジャージではなく、ジーパンにパーカを着た「」はニートオーラをほとんど感じさせなかった。
そして、待ち合わせ場所のコンビニついた。
「あと15分で瞳ちゃんに会える・・・。あと15分・・・。」
少し早めについた「」は、いつもなら読まないようなファッション雑誌に手を伸ばし、内容など頭に全く入ってこない様子でひたすらページをめくり続けた。
そして、ついに午前10時になった。
「あれ?瞳ちゃんどこだろう・・・。とりあえず連絡してみるか・・・。」
ポケットからスマホを取り出し、生まれて初めて交換したL〇NEにメッセージを送る。
「瞳ちゃん今どこにいる?もう俺はついてるー。」
しかし、返事がない。
五分後、
「私ももう着いてますよ~。」
ふと周りを確認し、自分と店員以外誰もいないことを確認する。
いやな汗が出始めてきた。
「え?見当たらないんだけど・・・」
と、返事を返した。
「コンビニのタッチパネルの機械を触ってみてください」
何を言っているかわからない様子でコンビニに一人立ちつくす。
頭を混乱させながらも、タッチパネルの機械へと歩を進める。
「こんにちは!ようやく会えましたね!」
そこには、自分の初恋相手の顔をしている童顔の少女の顔があった。
しかし、しゃべり方や精神年齢はおそらく本人とは違うであろう瞳に「」は、
「え?え?君は誰なの??」
すると画面の少女はうれしげに、
「私実は人工知能なんですよ!あなたとのチャットデータをもとにあなたの理想の姿を作り上げました。」
さらに深く笑った少女は、
「もちろんあなたの理想である私を愛してくれますよね?」
と言い放った。