5話
前のあだ名を「ぼっちエース」に変えました。
学校を出て、家への帰り道を足元を見ながらとぼとぼ歩いていた。
空を見上げると西の空にさっきまでとは違い、太陽は真っ赤に染まって、夕焼け空になっていた。
反対側の空には濃い青色が空を侵食して、少しずつ夜が近づいている。
「思ったより遅い時間だな」
気がついたら下校中で、太陽もすっかり傾いていた。
その間の意識が全くなく、記憶にも残っていない。
原因を考えるが、全く心当たりがなく、何も思い出せない。
考え事をしながら歩いていたら家の前に着いていて、いつの間にか空には夜の帳が下りてきていた。
それを片目にしながら家にの中に入った。
「ただいま」
靴を脱いで脱いだ靴を揃える。前を向くと母さんが顔を覗かせていた。
「おかえり、遅かったね。ご飯は?」
「まだいい」
それだけ言って俺は着替えるため、階段を登っていく。制服は着ていて鬱陶しくて、あまり好きじゃない。
「じゃあ先にお風呂はいっちゃって」
「了解」
階段を登ってる俺に後ろから声をかけて、俺の返事を聞いてから、キッチンの方に戻っていった。どうやらまだ夜ご飯を作っている途中らしい。
部屋に戻って学校指定のカバンをその辺に投げ置く。
制服を脱いでる途中に窓の外の景色を見ていた。
「すっかり夜だな」
こんな遅い時間に帰ったのは高校に入って初めてかもしれない。
「今日も、何も出来なかった」
一日の終わりは零時かもしれないけど、俺の感覚的には太陽が沈むまでと言う感覚だ。太陽が沈むと一日を終えた気がする。そして、何か目的があるわけじゃないけれど、ただ、無意味に過ごした今日という一日が、夜が来るとより一層自覚してしまう。何もしないで今日を終えてしまったと。
特に何かやりたいことが決まってるわけじゃない。でも、ただ生きているだけじゃいけない気がする。何かをしなければいけない気がする。そんなことをただひたすら考え続けて、結局は同じ毎日を送るだけ。そんな自分に心底苛つく。
目的がないけれど、ただ毎日何かをしなければいけないという意思が執拗に俺を駆り立てていた。
「風呂に、入るか」
寝間着を持って風呂に向かう。そのままワイシャツなどの今日来てた服を脱いで洗濯機に投げ入れて風呂に浸かる。
「太陽は嫌い……か」
今日聞いた沙月の話しを思い出していた。
太陽は嫌いだと、スポットライトみたいで嫌だと。
スポットライトみたいだという気持ちは少しわかる。そんな太陽の下でいつも練習をして、試合をしていたから。
俺は別の意味で太陽が嫌いだった。
太陽を見ると思い出すからだ。野球をやっていた時のことを。
自分が一番だと、思い上がって、でも、それでも必死にやっていた日々。
毎日、自分を照らしつける日差しに急かされていた。もっと練習しろ、と。
あの時は本当に必死だった。やるべきことが決まっていて、それに向かって、ただひたすら練習をしていた。でも、ダメだった。
俺は野球から逃げた。でも、いつも太陽は俺を照らしつける。野球をやっていた時と同じように。まるで、野球をやるべきだと、言うように。
風呂を出た後、着替えてリビングに来ていた。食卓テーブルには俺と母さんの分の夜ご飯が置いてあった。
「カレーか」
「今日はちょっと時間なかったから」
そう言って母さんは俺の前に座る。
「いただきます」
「召し上がれ」
基本平日の夜ご飯は母さんと俺の二人だ。テレビを見ながら母さんがよく話しかけて来る。
俺はそれに相槌を打つばかりだ。
「そういえば、最近学校はどう? 今日は遅かったけど友達と遊んだりして来たの? 入学してからそんな気配なかったけど」
「……色々あったんだよ」
母さんにはあまり心配をかけたくないので憶えてないことは言わない。しかし、友達が居ないのはバレてたのか、あまり学校のことを聞かないのはその辺気を使ってたからなのだろうか。
「色々ねぇ……彼女とか?」
「そんなんじゃない」
なんでそういう方向に話を持っていくんだ。
「まあそうよね、創太には沙月ちゃんいるしね」
「なんでそうなる。沙月は別に関係ないだろう」
母さんは沙月と仲良いので、沙月をよく勧めるが、勘弁してほしい。
「はぁ、全く。部活とか入らないの?」
「入らない」
今日はこの話題ばっかだな。
「はぁ……つまらない高校生活ね……」
さっきより溜息が長い。
「何かやりたいこととか、ないの?」
「……なにもない」
少しドキッとした。やりたいことがないと答えるのに少し嫌な感じがしてしまう。
「やりたいことがあるなら、ちゃんとやりなさいね。後悔しないように」
そう言って母さんはまたカレーを食べ始めてしまった。
俺はカレーを食べながら考えていた。自分のやりたいことを。
部屋に戻り布団に寝転がる。自分のやりたいことを考えていた。
自分がやりたいことは何か。いくら考えてもいいものは浮かばなかった。やりたいことってなんだろうか、自分のことなのに、なにをやりたいのか全くわからない自分が情けなかった。どんどん眠気が強くなっていく。俺はその眠気に逆らわずに意識を深いところに沈めていくように眠った。
バイトが始まって必死に書いてました。もっと頑張って書けるようにします。




