眷属として
「魔王様、準備が整いました。いつでも出発できますよ」
今日は待ちに待った姫咲さんと海に行く日。
レヴィを除く三人は準備を終え、玄関前に集合していた。
「レヴィ早く早く!」
レヴィを呼ぶリリスはとてもいい笑顔だった。
しかしレヴィのテンションは優れていなかった。
それもそうだろう。海はレヴィの大切な場所、そこに今から遊びに行くっていうんだからな、気分が良い訳が無い。
本当に悪いとは思っている。
けど……
"姫咲さんの水着を見るためには仕方がないんだ"
レヴィには悪いけど、恨まないでくれよ
いや、恨むも何もレヴィにとって俺は殺害対象だから大丈夫だろう。
大丈夫という表現も可笑しいが…
玄関を出ると既に姫咲さんがいた。
「姫咲さん!?何で俺ん家知ってるの!?」
「リリスちゃんに教えてもらったの」
「すみません、魔王様…魔王様に許可なく勝手に教えてしまいました…。如何なる処罰も受けます」
「いや、いいよそこまで、寧ろありがとうな、リリス」
「えっと…それはどう言った意味なのでしょうか?」
「いや、特に深い訳はないから気にすんな」
「わ、わかりました…」
リリスが気を利かせてくれたお陰で、全員が集まり、直ぐに出発できた。
今回、向かう海は電車一本で行くことができる場所。しかも駅を降りたら目の前が海という素晴らしい場所である。
しかし電車で一時間掛かるデメリットもある。
「これが電車という物なのですね!子供の頃にサタン様と一度、人間界に遊びに行った時に見たことはあったのですが……乗るのは初めてです!」
「リリスの住んでる所にはないのか?」
「はい。私たち悪魔は大抵が空を飛べるので、それに、こういった便利なものは悪魔は使いません」
「あの…氷上くん?何の話してるの?」
あ、忘れてた。姫咲さんがいる前でいつも通りの会話をしてしまった。
「いや、これはリリスの中二病設定に合わせてやってるんだよ」
「あ、そうなんだ。優しいんだね、氷上くん」
いや、素直に褒められたら恥ずかしいのでやめてください姫咲さん
「ねぇ、兄さん!海に着いたらさ、私の水着ちゃんと見てよね!今日の為に新しく買ったんだから!」
唐突に水着アピールをしてくる遥
「いや、誰が好き好んで妹の水着見なきゃいけないんだよ」
「えー!別に変な意味はないよ?似合ってるかどうか見て欲しいの!やっぱり男の人に見てもらわないとわからないもん」
「仕方ないな…。見てやるよまったく…」
「氷上くん、私もお願いしてもいいかな?ちょっと恥ずかしいけど…」
「魔王様!私もお願いしてもいいでしょうか?菜月さんに選んで買って貰ったので…その、魔王様の眷属として似合ってるかどうか…知りたくて」
「あー!わかった!みんなの見るから!」
でも、姫咲さんのだけは全力で見ます!
「………ボクのは見たら殺す…」
「はいはい、見ないよ。」
レヴィも嫌がってはいるけど、一応水着を買ってはいた。なんだかんだ言って楽しみにしていたのだろうか?
電車の中での話は思った以上に盛り上がりを見せ、気がつけば目的地に付いていた。
電車を出ると、そこは既に潮の香りが漂い、眩しい太陽の光が俺たちを照らす。
辺りは海を満喫する人々で賑わっていた。
「……こいつら、全員殺してやる…」
「リリス、レヴィが暴走しそうになったら止めてくれ」
「わかりました!魔王様!」