もう一つの疑問
レヴィが俺を殺しに来てから二日目の夜。
何故か家に居候している。
「お前、ずっとここにいるつもりなのか?」
「いるよ。その方がいつでも殺せるから」
「……まだ諦めてなかったのかよ」
必要以上に命を狙われる。
「レヴィ…私の魔王様に近づくなって言ったでしょ?守れないの?」
「お、お姉様!違うんです、この人がボクに殺されたいって言うから」
「言ってねぇーよ」
リリスの拳骨がレヴィの頭に入った
その光景を見て遥が笑っている。こんな日常が続く。
「よし、風呂でも入るか。レヴィ行こうぜ!唯一の男同士だし、仲良くなりたいからな」
「えっ?」
何故か三人ともが驚いた表情を見せる。
「ま、魔王様……。その、レヴィは女の子ですよ」
「…………」
「………え?」
衝撃が走った。ずっと少年だと思っていた。
「兄さん…本気で言ってるの?普通気づくでしょ…バカなのかな?」
「最低だな。ボクと一緒にお風呂?別にいいけど、これから死ぬ奴に見られるくらい何とも思わないし…行こうか」
「いや、ごめん。本当にごめん!」
「殺させてくれたら許してあげる」
何とも卑怯な取引なんだ…
しかし、一つ疑問がある。
「なぁリリス、一つ聞いてもいいか?」
「なんでしょうか?魔王様」
「この前言ってたさ、不死鳥の力って具体的にどんな能力なんだ?」
「不死鳥の力ですか。それはですね、死ぬ事がないんです。先日レヴィに抱きつかれて普通の人間なら全身骨折で死んでいました。しかし魔王様にはサタン様の持っていた不死鳥の力が受け継がれていた為に蘇る事ができたのです」
「え?じゃあ俺は不死身って事だよな?」
「そうなりますね」
「ふーん…なるほど。わかった。…レヴィ、ちょっと俺を殺しに来い。試してみたい」
「だ、ダメです!魔王様!危険すぎます!私も完璧に不死鳥の力を知っているわけではないので、万が一の事があったら」
ものすごい勢いで止めに来るリリス
「大丈夫だって、たぶん。でももし生き返らなかったらその時はルシフェルとやらの所に戻ってやってくれ」
慌てふためくリリスの頭をポンポンと叩いて宥める。
「兄さん!ダメだよ!お願いだからやめてよ…。私…怖いよ…」
遥も泣きながら止めてくれた。相変わらずよく泣く。
「ふふふ、いい度胸じゃないか。けど、生憎ボクはルシフェル様の命令じゃなかったら動かないから今は殺さないよ!残念だったな」
なんだろう…レヴィのドヤ顔がとても腹立つ。
「そうか、じゃあリリス、頼んだ」
「嫌です…」
即答された。
「命令だ」
「…………っく。魔王様…本気なのですか…」
「あぁ、本気だ。本当に死なないのか、それが知りたい」
「もし、死んでしまったら…私も死にます。ルシフェルの元に戻るくらいなら死んだ方がマシです」
「そうか…。じゃあそうならない為に頑張らないとな」
リリスは覚悟を決めて、鋭く尖った爪で俺の腹を貫いた。
「兄さ"ん!嫌だよぉ!」
辺りには血が飛び散る。
「……魔王様…。すみませんでした。私も死にます」
「リリスちゃん!私…許さないから…兄さんの敵!」
包丁を握る遥
それを見て何も言わないリリス
「お姉様に何する気だ!」
リリスを庇うレヴィ
そして、何故か生きている俺。
「すんげぇ痛いわ。でもこれで確信した。俺…死なねぇわ」
「魔王様!?」
「兄さん!?」
「…ちっ」
泣き叫びながら抱きついてくるリリスと遥
柔らかい何かが俺に当たっている。
遥も大きくなったんだな。
「ちょっと落ち着けお前ら」
「よかった、本当によかった…魔王様」
「それにしても血で汚れちゃったな」
「安心してください、魔王様! レヴィ、飛び散った血を綺麗にしといてね」
「ちょっ!なんでボクが!?」
「何?文句あるの?」
「うぅ…お姉様の意地悪…」
しぶしぶ了承するレヴィ
やはり俺は不死身だった。
しかし、痛みはあった。感じた事のない激痛が腹部周辺を走り、そして一度気を失う。
そして直ぐに目が覚める。
そんな感じだった。
不死鳥の力を確信した瞬間、もう一つの疑問が浮かび上がった