イン・ザ・ドリーム
ーーー夜中ーーー
一人の少女が寝ている優理斗の前で立っている。
サキュバスのサキだった。
「………あたしは、認められなきゃ……いけないんだ!」
そう呟くサキ
サキはスカートの中からシッポをスルスルと出した。
「……大丈夫!あたしならできる!」
自分に喝を入れ、シッポの先端を優理斗の頭にあてがう。
「……ふぅ。いくよ…イン・ザ・ドリーム!!」
そう言うと、サキは立ったまま意識を失う。
そして、数秒で帰ってきた。
顔を赤らめて
「な、なな、なんて夢みてんの!?は、裸の女性が……あわわわわ」
動揺が隠せない。
サキの頭はパニックになっていた。
サキュバスとして、その性格を治さない限りルシフェルの元には戻れない。
それを知っていても尚、治せなかった。
そんなサキに追い討ちを掛けるように、寝ている優理斗は頭にあてがうシッポを握り、擦り出す
「……んっ、また…やっ……」
またしてもシッポを触られるサキ
我慢をしても声が出てくる。
今大きな声を出すと非常にマズイ事になるのは目に見えているため、必死に口に手を当て、我慢する
「…………はなしてっ!!もぅ、……っんあぁ…」
しかしこれは優理斗の寝相の悪さ故に起きた事故
サキの思いは届かなかった
涙を流しながらも耐え続けるサキ
口からは涎も垂れている
目がとろけて、鼓動も早くなり息切れもしてきた
「……いただきまぁ〜す」
「はっ!?…ちょ…それは、や……らめ…し、しっぽ……舐めないでぇ!!」
アイスクリームを食べる夢を見ているのか、サキのシッポを口に頬張り、舐め回す
「……………あっ……あっ………」
もう声すら出てこなくなる
「………もう、いっそ……ころしてくだひゃい…」
死をも願う程に辛い
悪魔にとってシッポの弱点は仕方がなかった。
特にサキュバスは他の悪魔よりも倍以上敏感になる
遂にサキの意識が吹き飛んだ。
ピクリとも動かない
そして、朝を迎えた。
目が覚め、起きる優理斗
「んあ?……なんだこれ?」
口に含んでいた物を取り出す
ベチョベチョになった黒い何か
その何かを辿ると、力の抜けたサキを見つけた
「サキ!どうした!大丈夫か!?」
慌てる優理斗の声で目覚めるリリス
「魔王様!?どうされましまたか!?」
「いや、サキが倒れて動かないんだ!」
リリスは直ぐにその場の状況を見回る
「………ま、魔王様……おそらくですが、魔王様が寝ている間にサキのシッポが魔王様によって握られ、それで失神をしているのかと…」
その状況分析はかなりのものだった。
たった数秒見渡しただけで、そこまで考え出し、結論を出した
「……もう、許してください……」
小さく呟くサキ
なんとか意識を取り戻した様だ
「……あの、あたし……もうダメ……ほんとに、生きてる価値ない……サキュバスなのに、何も出来ない……お願い…殺して…」
涙を流し、泣き崩れる。
「……何言ってるのよ…サキュバスだから?そんなの関係ないないんじゃない?私もサタン様を守れなかった悔しさを持ってる。なんど死のうかとも考えた!けど…死ねなかったんだ!…どんなに辛くても生きていこうよ!魔王はルシフェルだけじゃない!ね?」
「あたし……は、ルシフェル様……だけの眷属……だから…」
「なんで!?なんでそこまでルシフェルに拘るの!?あいつはサタン様を殺して魔王の座を奪った最低な奴なんだよ!?」
「……そんな事情知らない……あたしはルシフェル様に認めてもらいたい……だから、そのために…」
床に這いつくばり、話すサキ
しかし何処かおかしい…
「あたしは!!…そのために……サキュバスとして…悪魔として!……」
だんだんと怒りの声に変わっていく
そして、それはサキの体を纏う。
怒りのオーラがサキを包み込む
「だからぁ……あたしの為に……」
ゆっくりと立ち上がる。
まだ足はふらついていた
「ーーーお前達を殺す!!」
その時のサキの目に意思はなかった。
一週間も待たずにサキは
ーーーーーはぐれ悪魔になってしまった!