はぐれ悪魔
「………ほ、ほんとに、やめてくらさい……。」
ベッドの下でぐったりとしているサキ
「て言うかさ、朝頃に俺達を眠らせたんだろ?で、今って夜じゃん?もしかしてお前、俺が寝てる間ずっとここに居たのか?」
「………うん」
「アホなのか?まぁいいや、次からはこうなる前にイタズラはやめろよ」
「イタズラじゃないもん……あたし、頑張らなきゃ……認めてもらわなきゃ……お姉ちゃんと……ルシフェル様に……」
「ーーー!?」
驚いた。
サキからルシフェルという単語が出てくる事に
つまりは、サキもルシフェルの眷属で、また俺の命を狙いに来たのだろうか
「お前、今ルシフェル様って……。まさかあいつの眷属なのか!?」
その質問に対して、意外な答えが返ってきた
「………元……ね。今は……違う」
どういう事なのだろうか
眷属に元とかあるのか?
「あたし、サキュバスのくせに恥ずかしがり屋だしサキュバスとしての仕事ができなくて、いつもあがっちゃって…いざ頑張ろうと思っても頭の中がパニクっちゃって……だから、その……ルシフェル様にお前はもう要らないって言われて…」
「それで練習してたのか……、俺で」
「でもよく殺されなかったわね?今のルシフェルなら使えない眷属は問答無用で殺されてるはずなんだけど」
「………。お前は殺す価値もない……とっとと目の前から消えてくれ…。そう言われたんだ…」
なんだか急に可哀想になってきた。どうしてルシフェルはそんなに酷いことを言えるのだろうか?
「待って!じゃあ、サキよ今の主は誰なの!?」
サキがルシフェルの眷属を解雇されていた事をしり、リリスは何かを思い出したかのようにサキに問いただす。
「今?居ないよ?主様」
その刹那、リリスとレヴィが警戒態勢に入った。
「動かないで!」
「魔王様、こいつから離れてください!危険です」
レヴィとリリス、二人ともが言う
「ど、どうしたんだよ!主が居ないだけだろ?」
「それが危険なのです、魔王様。私達悪魔は必ず上級悪魔の眷属になってなくてはいけないのです」
「どういう事だ?魔王はルシフェルなんだろ?」
「はい。現在魔王はルシフェル一人、その下にルシフェルの直属の眷属となる上級悪魔のレヴィと後二人の悪魔がいます。他の下級悪魔達は必ず魔王か上級悪魔の眷属になってなければならないのです!」
「この前会ったセイレーンも一応ボクの眷属なんだ」
「なんか、ややこしいんだな。悪魔の世界って。リリスはどれに当たるんだ?」
「私ですか?私は上級悪魔です!私も眷属を従えていますが、みなルシフェルの下に行きました…」
色々と説明をしてくれたリリスだが、未だサキへの警戒は解いてなかった
「な、何!?あたし何か悪い事した!?…いや、確かに練習としてみんなを眠らせたりしたけど…」
「違う!そこじゃないんだ。ボクとお姉様がお前を警戒する理由は、サキ…お前が"はぐれ悪魔"だからだよ!!」
はぐれ悪魔……初めて聞いた。経験値とかたくさん貰えたりするのかな?
「はぐれ悪魔とは主を持たない悪魔の事を称して言います。はぐれ悪魔になってしまうと、いずれ理性を失い、最終的にはただの化物同然になってしまうのです…そうなるともう、殺すしか方法はなくなり…」
「……そんな。嫌だよ!あたし死にたくない!ルシフェル様の眷属に戻っていっぱいご奉仕するんだ…!」
「そんな時間ある?はぐれ悪魔になってから今で何日目?」
「わかんない……。もう三週間くらい前……かも?」
「……。サキに言っておくよ。はぐれ悪魔になって理性を失うまで…基本的には約一ヶ月だ。つまり後1週間でサキは理性を失い、ただの化物になる」
「………そんな…。どうしよ…」
「基本、はぐれ悪魔になると化物になる前に消されます。…魔王様どうしましょうか?ご命令があれば今すぐにでも消しますが」
リリスから溢れ出る殺気。やる気のようだ
「いや、そこまでしなくてもいい。それに俺はサキを化物にするつもりはないからな」
「と言いますと?」
リリスは首を傾げた
「なぁサキ、俺の眷属にならないか?そうすれば大丈夫なはずだ!」
そうなればサキがはぐれ悪魔になる事はなくなる。我ながら名案だと思う
しかし、
「嫌だ!あたしはルシフェル様だけのもの!他の悪魔の眷属になんてならない!」
サキの決意は本気だった。自分がどうなろうが、ルシフェル以外に付く気はないようだ
「頑固だな…。まぁいい、後一週間猶予がある。それまでに決めろ」
たった一週間という短い時間だが、もうこれしか方法はない。
後はサキ次第というところか……