海の悪魔
「レヴィ!?何処行ってたんだよ!」
「何処でもいいでしょ…別に」
いきなり俺たちの前から消えたレヴィが帰ってきた。
「なに、する気だ?」
とレヴィに問いかける。
と、レヴィの口から思いもしなかった言葉が出てきた
「何って?助ける。この状況でそれができるのは、ボクしかいないからね」
「この状況ってどういう事だよ」
「はぁ?何も気づいてないの?あの船が沈んだって事は、ただ普通に鮫の群れが泳いでるだけじゃない。悪魔的な何かが関わってるって事。わかった?」
悪魔的な何か……つまり、レヴィやリリス以外の悪魔が今、姫咲さんを苦しめてるのか?
「さて、久しぶりに使うよ…。まったく、めんどくさい」
そう言ってレヴィは海に入って行った
「今ここで泳いでる鮫達!聞こえるよね?ボクの声が。ボクが誰だかわかるよね?これは命令だ。今すぐここから遠くに行きなさい!そして、二度とこの辺には来るな!」
海に足を膝辺りまで浸けて、レヴィは叫んだ
これはなんなんだ?
そんな疑問を感じていると、後ろからリリスが説明しに来てくれた
「レヴィには能力があって、海の生物と話ができるのです。そしてレヴィは海の悪魔、海の生物はレヴィに逆らう事は絶対にできません」
「そんな力があったのか…すげぇ!すげぇよレヴィ!」
「………ふぅ。終わったよ。もう鮫は居なくなった。………けど、居るんでしょ?セイレーン!!隠れても無駄だよ?」
「もぉ〜!レヴィなんて事してくれるの?なんであの男の肩を持つの?バカなの?」
「うるさい黙って。なんでこんな事したの?」
「ルシフェル様からの命令よ。私はルシフェル様から命令を貰って、リリスを連れ戻す邪魔をする輩が居るから消してこいって言われたの」
「ルシフェル!あいつ!絶対に私が殺してやる!私の魔王様にまで手を掛けるつもりか!」
いつの間にか海上には女性の姿をした何かがいた。その女性の下半身はまるで、鳥の脚のようで、海に立っている
そいつがセイレーンという悪魔なのだろうか?レヴィもリリスもセイレーンと面識があるようだった
「レヴィが今やった事ルシフェル様に言ったらどうなるのかな?ルシフェル様に反逆したとして殺されるかもね、そしたら私がルシフェル様の直属の眷属になれるかも!?」
「戯言はもういいよ。それにボクはルシフェル様を裏切ったつもりはない。…そうだセイレーン、ルシフェル様に一つ伝言を頼んでもいいかな?」
「伝言?嫌だよー!」
舌を出し、挑発するセイレーン
「海でボクに逆らうな!!これは絶対だ!セイレーン、伝えろ!」
物凄い殺気を俺も感じた。レヴィの海での権力は凄まじい物だった。
「ひぃぃっ!わ、わかったからその殺気を放つのやめて!怖いから」
あまりの殺気に調子に乗るのをセイレーンは止めた。たぶん本当に殺されると感じ取ったのだろう
「分かればいい。それで、伝言なんだけど、リリスお姉様はボクが必ずルシフェル様の元に連れ帰るので、心配はいりません。…そう伝えてほしい」
「わ、わかった…。つ、伝えます。あ、でも…このまま帰ったら私が殺される……かも」
セイレーンは少し声を震わせた。ルシフェルの命令を成功できなかったから殺されるのだろうか?それはあまりにも酷すぎる
「セイレーン!一つ言っておくけど、今回はレヴィからの伝言があるから生かしてるんだ。本当なら私の魔王様の命を狙った時点で私がお前を殺してる。つまりどの道死ぬんだから気にするな」
「ええーっ!?ひ、酷いよ!許してよ、リリス!ね?お願い!」
リリスに媚びるセイレーン。なんだろう、敵ながら少し可愛らしい
「許さない。さあ、帰れ。私の気が変わらない内に」
「ひぃぃっ!か、帰る帰る!帰るからぁ〜」
「待てセイレーン!」
「魔王様!?何故止めるのです?」
「いや、少し可哀想になった。お前ら悪魔ってのは主に逆らえないのに、失敗したら殺されるかもしれないんだろ?そんなの酷いじゃんか。俺はそういうの好きじゃないからさ、何処まで俺がお前を助けれるかわかんねぇけど、ルシフェルに言っといてくれ、自分の眷属は大切にしろ!それも出来ねぇ奴が魔王の資格はないってな」
「え?…私を気遣ってくれてるの?優しいんだね、リリスの魔王様って……。その気持ちだけありがとう。そして命を狙ってごめんなさい。私はそれでもルシフェル様を愛してるから」
そう言って海の中に潜り、帰ってしまった
ーーーー
全てが終わり、姫咲さんは無事救助された
その姫咲さんは涙を流し声を上げてレヴィに抱きついた
「ありがとう…レヴィちゃん!ありがとう…。怖かった…私もう死ぬかもしれないって思ったの」
「………ボクは人間が嫌いだ。今回だってセイレーンが海で勝手に暴れるから止めたかっただけだし、本当は助ける気なかったし…」
「嘘つけレヴィ。お前完全に姫咲さんを助けるつもりだったろ」
レヴィの嘘にツッコミを入れる
「うるさい!黙れ!バカ」
「ううん、いいの。助ける気がなかったとしても私はレヴィちゃんに感謝してるよ。もちろん、氷上君にも…。ありがとね、大事な人って言ってくれて」
「え?もしかして聞こえてた?」
「それはもうバッチリ聞こえてたよ」
何故だろうこの感じ、死にたくなる。まぁ死ねないんだけど。
「その……ナツキって呼んでもいい?」
唐突だった。その場に居た皆が驚く
「え?レヴィちゃん…ほんとに!?うん!もちろんだよ!」
「どうしたの?レヴィ。レヴィらしくない事言って」
「いや、ボクも少しお姉様を見習って…その、人間嫌い直していこうかなって……いや、何でもない!今のは聞かなかった事に!」
「兄さん、私今の携帯で録音したよ!」
「ナイス遥!よくやった」
「ちょっ!ハルカ!その携帯よこせ!壊してやるぅ〜」
遥とレヴィがじゃれ合い、それを見て皆で笑う。
やっと、皆で仲良くなれた。そんな気がしてきた
「あ、でも優理斗だけは仲良くなるつもりないからな!」
やっぱり皆で仲良くなるのは無理そうだな、うん。