自分勝手な生き物
目を覚ますと、既にレヴィとルシフェル様は意識を戻していた。
「あ、お姉様!大丈夫?」
「うん、大丈夫。それよりルシフェル様!お怪我は!?………っは!う、腕が…」
私自身は問題なかった。
しかし、ルシフェル様の右腕はクロウの結界により、消し飛んでいた。
「これくらい大丈夫だ。俺はサタンの弟だからな、助かった。俺にも少しだけ、完璧ではないが、受け継がれてる力……。再生能力だ。即死でなければ、無くなった腕も蘇る」
そう説明をしているルシフェル様の右腕の根元からは、青白い炎が発火し、右腕を作り出した。
「さ、こんな所から出るぞ」
「ルシフェル様…その、私達と一緒に捕まってた人間なのですが…助けてあげてもいいですか?」
「リリスの好きにしろ。俺は構わん」
「ありがとうございます!」
私も経験したこの屈辱。気持ちは同じはずだ。
助けてあげたい。
そう思った。
館内に収監されていた女性達。
裸のままぐったりとして泣いてる者
足を切断されてる者
自らの舌を噛みきって自決した者もいた。
「み、皆さん!悪夢は終わりました!ここから逃げましょう!」
私の呼びかけに皆が動く。
助け合いの精神。素晴らしい連携力だった。
「よくやるよな、リリスの奴」
「お姉様はサタン様の影響で人間が好きですから…」
生存者を連れて、リリス達は黒船を降りた。
黒船前には沢山の人だかりが出来ている。
それも当たり前、ルシフェル様が派手に暴れてくれたお陰だった。
「満足か?リリス」
「はい!ルシフェル様」
気分よく、終わった。そう思っていた
のに、
人間という生き物は
自分勝手な生き物だ。
「こ、こいつら、人間じゃないよ!わ、私見たの!この男が海賊の男達を素手でなぎ倒してくところ!」
「私も話し声聞いた!悪魔だって言ってた!」
辺りがざわつく
"悪魔"というキーワードに皆が敏感である
「あ、悪魔だぁ…、に、逃げろぉ!殺されるぞ!」
一斉に立ち退く人々
「待って!待ってよ!私達は…」
「やめとけ…。無駄だ。こうなった人間は何も聞いてくれはしないさ」
「ボク人間嫌いだなぁ…」
落ち込むリリス
そこに数人の男連中が現れる
「悪魔め!成敗してくれる!」
刀を構えた男達はルシフェルとリリスに斬り掛かる
それを避ける事なく受け止めるルシフェル
「ルシフェル様ぁ!」
リリスは間一髪の所をギリギリの所を避けていた
「リリス、レヴィ、よく聞け。俺達はここでなにもするな!ここで何かすれば、また同じ事が起きるだけだ、耐えるんだ」
「しかし…」
刀で斬るのを止めない。ルシフェルは全てを受け止める。その体は血だらけだった。
「……わかりました。我慢…致します」
「お姉様!?なんで!なんで、何もやり返さないの!」
「レヴィ!ルシフェル様の言葉聞いてなかったの!?ここで私達が手を出してはいけないの!このまま逃げるよ」
痛い。斬られた所がズキズキと痛む
なんで、悪魔だってだけでここまで迫害されるの?助けてあげたのに、悪い事してないのに
リリスの心の奥で人間に対する怒りが込み上げてくる。
その怒りを必死で堪えながら追いかけてくる男達から逃げる
「………無理だよ…ボク…我慢できないよ……許せない……絶対に許さない!」
レヴィの怒りのボルテージが頂点に達した。
「よせっ!レヴィ!!」
ルシフェルの呼び声ももう聞こえてなかった
「お前達は絶対に許さない!ボクを怒らせた事後悔させてやる!」
怒りに溢れるレヴィの周りにはやがて、雨が降り、それは雷雨となった。
ゴロゴロと鳴り響く雷に、海が荒れ始める。
停泊していた黒船は大きく揺れて波が大きくなる
「……全て壊してやる!」
「レヴィ……」
「こうなったらレヴィを止める事はできないな。あいつは海の悪魔。海の近いこの場所では俺でも止めきれない」
大きな雷が黒船に直撃し、一瞬で大破した。
雷により赤い炎が雨の中燃え続ける。
「た、祟りじゃ…」
「もう、この世は終わりなの?」
まさに終焉。世界の終わりを告げているかのようだった
レヴィは海を操り、津波を起こす。雷鳴が轟き、嵐が吹く
海でレヴィに勝てる者を私は知らない。
この後暴れ続けたレヴィは1時間後にようやく治まった。
疲れ果てたレヴィは気を失い、それと同時に天気が戻る。
辺りには、私達三人しかいなかった。
建物も全て倒壊し、辺り一面が見渡せる程何も無かった。
ーーー現代ーーー
「それからレヴィは人間を心底憎み、嫌うようになりました。昔の人達は悪魔をとても恐れていたみたいで、それも原因だと思います」
リリスから全てを聞いた。
もう何も言う言葉が出てこない。
ただ謝りたい。
悪魔として、そして人間代表として…