悪魔リリス
ただ一人抗う者がいた。数万という数相手にたった一人で
赤い髪を靡かせ、黒い翼で空を飛ぶ。
空は赤い月で照らされ怪しさを増していた。
「いつまで抗うつもりだ!リリス。早く俺の元へ来い」
数万という数を引き連れる一匹の悪魔が言う。
「黙れルシフェル!誰がお前なんかに付くか!私の王はサタン様だけだ!」
それに対してリリスが反論した。
ここは魔界。悪魔の住む世界。
ここの王は魔王サタンであった。
しかし、3日前にとある事件が起きて、魔王サタンは殺されてしまった。
王の居ない魔界に、新しくサタンの実の弟であるルシフェルが候補に上がった。
それは、凄まじい勢いで形となり、殆どのサタンの眷属達はルシフェルに付いた。
一人を除いて。
リリスだけは違った。一人頑なにルシフェルの元に付こうとしなかった。
サタンの眷属というプライドなどではない。
「何故俺に付かない!後はリリス、お前だけなんだ!それで全てが収まる話だろう」
「うるさい黙れ!私は知っているんだぞ!……お前が……ルシフェルお前がサタン様を殺した事を!!絶対に許さない!殺してやる!私の手でお前を殺す!」
激昴するリリス。それを冷静に見つめるルシフェル。お互いに様子を見ているのか1歩も動かない。
「何を惚けた事を…俺がサタンを殺した?そんな事あり得るわけないだろ!それに、見ろ!この数相手にお前はどうするつもりだ?勝てるのか?俺を殺せるのか?」
サタンの眷属はみなルシフェルの元に下った。ルシフェルに危害を加えようものなら容赦なく殺られるだろう
「考えはある…。昔、サタン様が仰っていた。人間界に子供がいると。…私はその人と会い、その人を王にする!」
「リリス…冗談だろ?本気で言ってるのか?サタンの子供は人間との間にできた子だぞ!?そんな奴に王が務まるか!」
「お前と話してても限りがない!私は行く!そして必ずルシフェル…お前を殺す」
そう心に誓ったリリスは人の住む人間界へと翼を羽ばたかせていった。