104話 王都から招待
目が覚めるとベッドに寝ていた。
横にはトカチがとても安らかに眠っている。
気持ちよく寝ているので起こすのは可哀想だからそのままにしておいた。
「あら進君。起きたのね」
「おはよう。これから会議をしたいと思うのだが、重要な話しがしたい。来てくれないか」
「会議? じゃあ着替えないと駄目ね」
ナッツの件でどう処分するか検討したいと思ってた。
アヤカタも呼び決定することにした。
ベッドから起きたら後ろ姿が見えた。
お尻はキュッと締まっていてセクシーである。
シュナリと比べるとより腰のクビれが強調されてていて、朝から良い物を見た気分に。
「なに見てるの?」
「いやぁ……」
いい眺めだったから見過ぎていたようで、着替えはパンツを履いていた。
トカチを残したまま部屋から出ていくと、トカチの側近が待機しておりお辞儀をしてきた。
「おはようございます進様。何か御用でしょうか?」
「直ぐに会議を開きたい。アヤカタを呼んで欲しい」
「アヤカタ様ですね、かしこまりました。こちらのお部屋でお待ちを」
側近に案内された部屋はテーブルがあり会議するには良い部屋であった。
トカチは俺の後に来るとアヤカタも席に着いた。
「シュナリとチユはどこに居ますか?」
「彼女達なら安心して下さい。違う部屋でくつろいでおります」
アヤカタが答えてくれるのを聞き、とりあえず知っておきたいと思ってた、本題に入ることにした。
「話しはと言うと、ナッツに関する件なんだ。国王に伝えたいと思ってるのだけど、そもそも国王が居る場所を知らないのだ」
「国王ならここからは、かなり距離はあります。昨日すでにムト国王宛に使者を送ってありますから今日には返事が来るかと」
「行動が早いです。とても助かります」
使者が帰ってきてからナッツの処分は決まる。
予想ではムト国王の元に届けるのがわかりやすい。
俺の事はブロンズ騎士団の称号を得たのだから、知ってはいるはずだし信頼性もあるだろう。
「きっとムト国王からお迎えにくるやもしれません。その時は進様は王都にいかれますか?」
「当然行ってみたいな。王都っていうくらいだから都会なんだろうし。面白そうだ」
「進君は珍しい物好きのようだな。こことは違うなんて物じゃないだろうよ。私は何度か行ったことはあるが、もちろん名前は隠しておいたけどな」
トカチは行った経験があるようだ。
王都だから衛兵の数も凄いのだろうし、大きさも規模が違うはずだ。
「へぇトカチはあるのか。尚さら行ってみたい」
そこへアヤカタの側近が入って来て伝えた。
顔がニコリと変わるのがわかった。
王都からの返事だと俺は直感した。
「進様。たった今王都から使者が帰りました」
「結果はいかに」
「はい。ムト国王はナッツの賄賂の件、大変関心があるようです。王都に連れて来てくれとのことです。そして進様にもぜひとも来て欲しいと」
「もう来たのか。そう言われたら行くしかないだろう。今日にも行けるのか」
「なんと王都から騎竜車が連行したそうです。それに乗って行けば早いでしょう」
ムト国王から来てくれないかと誘われたなら行くしかない。
騎竜車とは箱型の屋根がある通常の騎竜より多くの人を運べる乗り物なのだそうだ。
行くとしたら俺とナッツ、シュナリとチユも同行させたい。
きっと騒ぐだろうが、置いていくのは無理がある。
アヤカタは大事な新国王となるのだから、やすやすとは連れて行けない。
まだ国が建国されたばかりの混乱期。
なにが起こるかわからないのだから、リーダー不在は不味い。
昨日までは盗賊団だった奴らが今日から衛兵の騎士団員になるのだ。
従わない奴らも出てくることは承知しておいた方が良い。
最悪従わないなら殺すのもあり得るだろう。
問題はトカチであった。
混乱になるようなら、トカチはここに置いておけば騒ぎにはならない。
逆らう者はまぁいないとみた。
わざわざ死にたい奴はいないだろうから。
しかしトカチが行きたいと言ってきた場合どうするかだ。
説得して言うことを聞いてくれるかだが。
「よし、俺は行くとしてシュナリとチユも同行させようと思う。アヤカタさんは国のリーダーとして残っていて欲しい。みんなが不安だろうし。そしてトカチなんだけど……」
トカチを見ながら言うと、待ってましたとばかりに。
「当然、進君と一緒に王都に行くわ。ムト国王に結婚したことを報告しなきゃね」
さすがにその発言にはアヤカタも驚く。
これがあの恐れられたトカチなのかと。
俺もどこまでトカチが本気で言ってるのか、わからない。
「別に報告する義務はないだろう」
「いいじゃない。それとも恥ずかしいのかな。報告するのが」
「恥ずかしいとか、そういう問題じゃないだろう。お前だって賄賂の件の当事者でもあるんだぜ」
「全部ナッツの仕業ってことで済ませたらいいわ。それでナッツは処刑ってことで丸くおさまる」
流暢に話したが、なんて楽観的な女なのだと思う。
アヤカタは驚きを通り越して呆れていた。
万が一、トカチも同罪だと言い出したらどうする気なのか。
まさかムト国王の手前でも魔族全開出して、戦う気じゃ。
それだけは勘弁して欲しい。
「もしトカチも魔族なんだし引っ捕らえるろって来たら、どうするんだよ。魔族は国王にとって敵なのだろ」
「敵ですね……」
アヤカタが即答した。
やはり置いておくのがベストだろ。
「敵とは言え私は進君の嫁なのよ。魔族だからどうこう言っても進君の嫁の立場から国へ忠誠を誓うと言えばオッケーでしょう!」
俺の嫁ならオッケーの意味がよくわからないが、同行するのは間違いないようだ。
「わかった……。トカチも同行だ。くれぐれも魔力は出さないように!」
「はい、わかったわ」
「直ぐに出発の準備をしておきます」
「頼む」
アヤカタは側近に出発を言い渡した。
「嬉しいわ、進君!!!」
「うわ!!」
トカチは嬉しさのあまり俺に抱きついてきた。
嬉しいのはわかったが、そこまで嬉しいことなのかと考えた。
胸を無理矢理に押し付けてくるので、呼吸が詰まる。
窒息死する寸前まで抱きついてくる。
やっと離してくれたら、再び押し付けてくる。
胸の感触を楽しむ余裕がないのが残念ですが、もっとして欲しいと感じる自分もいて複雑な気持ちになった。
トカチには抱きついてくる理由があるようなのだが。
「こんなに嬉しい日はない!!」
「なんだろう、俺にはわからないが……」
「だって王都へは、私達の新婚旅行になるのだからね!!」
満面の笑みで言い切った。
「いやいや、違うと思いますよ……」
トカチ以外の者は全員、がく然となった。




