103話 トカチ編2
傷はチユの回復魔法のおかげなのか、完全には治らなくても痛みはかなり減っていた。
矢を射されてすぐに看病してくれたのが良かった。
矢も射さった箇所は心臓の脇を突き抜けたらしく、命はとりとめられたのだそうだ。
ベッドで横になっていて、包帯が巻かれていた。
「あら、起きたのですね。ダメよまだ完治してないのだから」
「トカチか、俺を運んでくれたのかい?」
「そうよ」
「お礼を言っとくよ。ナッツはどうしたのか知りたい」
「ナッツなら逃げ出しくても無理だわ。重症だから歩けもしないの。ナッツを国王軍に渡したら私も賄賂してたとして追われるかも」
「それなら俺が話しをつける。トカチは俺が倒して支配下に置いた。俺が監視するから心配ないと言う。賄賂はナッツが無理矢理に支払わせていたからトカチも嫌々払っていたと伝える。それで納得してもらうつもりだ」
「納得してくるような相手かしら……」
少し心配そうにベッドの横に来た。
すぐ近くまで顔が。
近くで見るととても魔族とは思えない可愛い顔。
人族からは恐怖の存在なのは団員らが逃げ出そうとしたのを見てもわかった。
「心配なのかい」
「進君が行くのなら心配はしてない。私を大切にしてくれてるという気持があれば、不安はない」
「俺が勝手に人狼の国を作ったことは、怒ってないのか」
「最初は何を考えてんだって思ったわ。私をこの国の騎士団長に指名した時には、意味がわかんなかった。でも今の私が進君の嫁として未熟なのだと知り、しつけられてるなんて、なんだか胸がジーンときちゃった」
「俺の嫁になるのは大変だってことだよ」
ちょっと偉そうに言ったかなと思ったら、クスッと笑っていた。
「今日は記念日。私と進君の結婚記念日だから……」
トカチは俺のことを見ながら、言葉を切らした。
何か言いたそうなのに、言いきれなく聞こえた。
何を言いたかったのか。
トカチは俺のすぐ側にいて、顔は近くに来ていたのは気付かなかったから驚いた。
「な、なんか顔が近いよね……」
「もっと近くに来て欲しいの?」
「ど、どうしたんだよ急に」
「変なことないでしょ。私はあなたの嫁なのだから。その私が……嫁がしてあげられることと言ったら……」
トカチは俺がベッドで寝ているところに、上にまたがって来た。
下から見ると胸の大きさがより目立つ。
嫁がしてあげられるって、おいまさか……だよな。
この体勢といい、アレしかないよなこれは。
トカチの体重がズッシリと俺の体にのしかかってきて、見動きはとれそうにない。
こう見えても、俺は病人なんだけどな。
「私の胸を見てどう。進君にだけ見せてあげるわ」
「!!!!」
トカチは胸の半分見えてる上着を脱ぎだした。
すると大事な物が丸見えになった。
綺麗な色をしていて触ってみたいなと、強烈に襲われる。
「進君にだけ触らせてあげます」
「あああ!!」
俺の両手を掴む。
その手をたわわな胸に持っていきそっと置いた。
とても柔らかくしなやかな肌。
あのおぞましい盗賊団の団長とは思えないほどに、魅力的な胸だった。
俺は拒否など出来るわけもなく、少しだけど強く掴んでみた。
「ああっ!!」
トカチが今まで聞いたこともないこえを出した。
俺の手の動きに合わせて声を上げる。
掴む度に声が部屋中に響く。
「進君……。こんなのはどう?」
「わぁ!!」
今度は馬乗りの状態から俺の顔に向けて倒れて来る。
そうなると胸は自然と俺の顔に直撃するのがわかった。
顔が完全に胸で埋まった。
息が苦しい。
しかしもっとこの肌の温もりを楽しみたい。
だが俺は病人である。
そんなに押されると傷口がまだ痛い。
「気持ちいい?」
「気持ちいいさ……でも痛い」
「あっそうね。ごめんなさい、私ったらつい殺しちゃうところだったわ」
「あはは……」
トカチが言うと、ちょっと笑えませんが。
それからはベッドで十分にトカチの体を堪能した。
これが魔族の体なのかと。
シュナリやチユが人狼族であるのに対して、魔族だから怖がっていたが魔力は魔族の物であっても体は何とも言えない素敵なボディでした。
「嫁として最高だよ」
「……」
どうやらトカチは寝てしまったようだ。
俺と密着したまま。
俺はベッドで思わず叫んだ。
「魔族最高〜〜」
「……」
もしや聞こえたかと覗いて見たが、すやすやと寝ていた。
こんないい体を好きに出来ることに大満足をした。
だが残念なことに冒険には連れては行けないよな。
なんてたってパーティメンバーにはシュナリがいる。
俺の嫁が一緒に居ると何かと不都合が生じるのは目に見えている。
トカチが居れば冒険も楽になるのは確実だが、トカチが居ることでこの国の安全さは保たれる。
だからこの国に置いておくのが最善策だと思ったのだった。




