表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/103

94話 牢獄

 シュナリが団員達とヨールによる訓練している最中。

 チユは部屋にいた。

 進とシュナリにはとても感謝していて、何とお礼をいっていいかと考えていた。

 オマケにアヤカタまでも救ってもらえた。

 死を覚悟する。

 今考えただけでも、ゾッとした。

 救われた命。

 クノの町に帰って来たら死は免れないと思っていただけに、進の対応には驚いていた。

 あの恐怖から開放されて精神的にリラックスする。

 そこへ突然チユの部隊長であるギュウが現れたので金縛りにあったかのように体が動かなくなった。

 

「おいチユ、こっちに来い。トカチ様の命令だ」


「はい、今行きます」


 意味はよくわからないけど、従わざるを得ない。

 命令とはなんの事かと悩んだ。

 リラックスしていたのに、一点して失望感に包まれてしまった。

 そもそもどこへ連れ出すのかも見当もつかない。

 ギュウの態度と話し口調から察して、楽しいとこに行くのではないのは判断出来た。

 断れるわけもなくギュウの後についていった。

 見たことのある風景が目に入る。

 ひときわ絢爛豪華な家屋。

 そこはトカチの住む家屋であった。

 広大な敷地にはトカチも居住しているが、他にも戦略をつめる部屋、食事をする部屋などもある。

 護衛兵も数多く待機しており、厳重な警備が敷かれてあるのが通常だ。

 そこに再び連れられてきて、何をされるのかと不安な気持ちになるのは当然であった。


「ここに入っていろ」


「ここは牢獄?」


 ギュウが連れてきた場所は敷地の端にある施設で牢獄であった。

 主に重犯罪者を入れておく為の施設である。

 部屋数は多くあり、ほぼ満室に近い。

 そこへ通された理由が知りたいと思って尋ねた。


「トカチ様の命令だから文句は言うな。飯は届けるから我慢してろ」


「……」


 チユは牢獄なんて入りたくもないが、仕方ないので入った。

 中は汚くて嫌だったが、我慢する。

 ご飯は食べられるとかで嬉しいのか悲しいのか残念な気持ちに。

 牢獄に入ると扉を閉めてギュウは行ってしまった。

 なぜ牢獄に?と考えた。

 しかし理由はわからないまま、暗い中に閉じ込められた。

 直ぐに寂しくなった。

 よくケンカしたがシュナリが居てくれたらなぁと懐かしくなった。



 チユが投獄された居住区にひとりの男が向かっていた。

 居住区には入口がある。

 そこには必ず衛兵がおり不審者を通さないよう見張っていた。

 通すには許可証が必要と決まっていた。

 規則通りに衛兵は許可証の提示を伝える。


「許可証はお持ちですか」


「無い」


「中の居住区には必ず許可証が必要となります。無ければお帰り下さい」


 衛兵はキッパリと男に言った。

 衛兵として職務を貫いたのは気持ちが良かった。

 不審者を受け入れないのが最大の務めである。

 しかしこの不審者は帰ろうとしなかったのに変に思った。

 なぜ帰ろうとしないのかと。


「通してくれ」


「ですからね……」


 その時に衛兵は男の顔に見覚えがあるのに気づいた。

 はて……誰だったかなと。

 数秒後。

 衛兵はその男の顔を思い出した。

 直ぐ様、姿勢を正して敬礼。


「こ、これは失礼しましたナッツ様。どうぞお通り下さい」


 衛兵は大失態をしでかしたと思った。


「すまんな」


 男はナッツ騎士団長であった。

 ナッツは衛兵に敬礼されたまま横を通り過ぎる。

 見せろと言われた許可証は見せていない。

 ナッツは許可証無しで居住区に入れる。

 特別怒った様子はなく衛兵は胸を撫でおろした。

 居住区を歩くと出会う衛兵は皆一応にして頭を下げる。

 向かった先にはトカチが住まう家屋。

 誰からも止められることなく中に入っていった。

 家屋内にも衛兵はいて、常に見張っていた。

 通路を通り奥の部屋へと向かう。

 ナッツは入るとトカチがひとりでテーブルについていた。

 

「遅かったなナッツ」


「ちょっとトラブルがあって遅れた」


 ナッツもトカチの前に対面して椅子に座った。

 クノの町を統括するナッツ。

 クノの町で金と名声を得ているトカチ。

 トカチが稼ぎ過ぎれば、ナッツの立場は思わしくない。

 国王からは管理不十分と判断されてしまう。

 場合によっては別の者に置き換える措置もなくはない。


「トラブルとは?」


 トカチは仮面に兜を被る。

 いつも同じ姿でどんな相手にも決して姿を見せなかった。

 ナッツは別段気にすることはない。

 それはトカチとは深い繋がりがあったから。

 

「オタクの盗賊団の団員が女の子の獣人に手をあげたんで止めた。まだ小さな娘だったから。騎士団長として注意した」


「それは失礼した。その者には厳しく言っておこう。それで今回の件なんだが……」


 トカチは静かに語りだした。


日曜日に更新する予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ