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91話 クノの町の過去

「トカチの側近が居たと思うが、あの側近は能力など詳しく知ってるかな。何でもいいから教えて欲しい。全くないよりも少しでも相手の事を知っていた方が有利なので」


「私も側近のことを詳しく知ってるわけではありませんが、相当な化け物であるのは言うまでもなく強いですね。特に横に居た二人は別格と言って差し支えないでしょう。ヨールとギュウ。この二人に逆らう団員は見たことありません。迷宮に行く時も必ず二人は行きますし、戦闘力は抜きん出てると聞いたことがあります。見たところ進さんは胸にブロンズ騎士団の勲章をしておりますが、ブロンズよりも力は格上と思っていいです。トカチ自身もヨールとギュウには信頼を置いていますから」


「ヨールとギュウか。確かに並の戦闘力ではないのは感じたよ。迷宮に行くのなら俺も連れて行くかもしれないのでその時に実力はわかるかな。知ったらショックを受けたりして」


 ヨールは細身であったが鍛えられた体をしていた男で目は鋭く切れ目で、なるべく近寄りたくない異様な物を放っていて、ギュウの方はというと反対にゴツい肉圧、屈強な体が印象的な男であり、腕力が強そうな奴であった。

 

 話を聞けば聞くほど戦いたくない気持ちになってきてるのは、側近でそのレベルならトカチはどうなると思ったからであった。


「ただし側近の二人は化け物ですが、トカチに比べるとひよっ子の扱いでして、尋常ではない強さだと聞いてます。その強さは人の域を超えてると。トカチを恨むのはここクノの町の獣人は皆同じです。貧しい生活を余儀なくされるのに我慢強く耐えているのです」


 アヤカタさんはトカチの話をしだすとそれまでのテンションよりも高く怒りに満ちた口調になっていて、余程の恨みが有るものと推測してしまった。

 いったい何か過去にあったのだろうか。


「トカチへの恨み。何か有りそうですが。もし良ければ聞かせてくれませんか?」


「トカチは……。アイツだけは絶対に許せない。なぜかと言うと話は私の子供の頃になりますが、まだクノの町が獣人達が中心に暮らしていた時期がありました。クノの町は人狼族が作り上げた町だったのです。子供の頃は楽しく平和な時を過ごしましたが、ある日にその楽しかった平和な日は終わりをとげたのです」


「トカチが原因?」


「トカチがやって来て人狼族の仲間達を月々と殺していったの。戦闘タイプの人達は必死に町を守ろうして戦った。けれど戦力ではトカチの方が上で結果的には支配されるという悲劇になったのです。そしてクノの町の町長を呼びつけて、支配下になるように要求してきたのですが人狼の町長は絶対に支配下にはならないと最後まで抵抗して受け入れなかった」


「それで町長さんはどうなったの」


 アヤカタさんは深刻な言い方で話してくれたのを聞いていたが、人狼族の町だったというのは初耳であり、おもってもみなかっただけに町長さんは守りたかった気がしたが。


「抵抗したあげく、みんなの前でトカチに殺されました。助けに行こうにも歯が立たない相手に何も出来ず耐えるしかなかったのです。その後にトカチが陣取り町は様変わりしてしまったの」


「町長として最後まで戦ったわけですね。トカチは恨まれて当然ですよ」


 そんな過去があったらチユだって逃げ出しなくなるのは当たり前である。


「だから進さんが来たのを知って、きっと言わなくても誰もが待っていたと思います。トカチと戦ってくれる冒険者を。お願いします。トカチを……」


 最後は涙ぐんで話を終えたのを見て、もう後には引けなくなったと実感し、許せないとメラメラと闘志が湧いてくる。


「力になれると思います。今はその機会を伺っていきますから、もうしばらく待ってください」


「はい、その時まで。あまり話してると危険なので私はここで別れますので」


「その方がいいですね」


 アヤカタさんは席を立つと店を出ていく背中を見ていたら、トカチを倒す方法を考えることにしたけど、コレだという決定打はわからなかった。

 不信がられても困るのでこの辺で別れた。

 ただアヤカタさんが信用できる人だとわかっただけでも良かった。

 味方がひとり居るのと居ないのでは大違いであるから。

 当面の問題はヨールとギュウてことになりそうだ。

 あの二人を倒さないとトカチには届かない気がした。

 ヨールは目があった時に、目の鋭さが凄く足がすくんだのを覚えている。

 人を殺すのに迷いなく殺せるそんな目だった。

 会いたくないが、どこで殺るかだな。

 殺る場所、殺る時を考えて行動に出ることが勝負ところだ。

 間違えたらそこで終わり。

 ジ・エンドだからな。

 いつもは独りで居る時間はあるのか、二人で行動する時間が長いのかを知りたい。

 シュナリを巻き込んでしまう結果になった。

 怒ってるだろうか。

 俺の独断で決めたことに付き合う形になった。

 シュナリの気持ちを確かめる間もなく、ここまで連れてきて決闘までした。

 普通ならご主人様失格だよな。

 もう嫌になって愛想をつかれたかもしれない。

 彼女の気持ちを確かめたい。

 俺のことを怒ってるのかを。

 でも知りたくても居場所がわからないのだから、何も始まらない。

 無性に会いたくなった。

 シュナリに会いたい。

 どこに居るんだろう。

 ここに長く居るのは避けたい。

 タイミングをみて行動に出る。

 さもないと、ダラダラと盗賊団の一員の生活が続いてしまう。

 それは回避したいし、回避しなければならない。

 俺が動き出さなきゃ何も始まらないってことだよな。

日曜日に二話、更新出来るように書きたいと思います。

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