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90話 アヤカタさんとカフェ

 店員さんは男であり、やはり獣人であった。

 ひときわ値段が高いのには驚いた。

 こんな高額な物を購入する冒険者がどれ程いるのかな。


「そんなんです、ボスの物になります。ですから高額ですが、もしかしたらレアな魔石として、さらに高額で売却できることもありますから今のうちに購入するのをお勧めします」


「待ってくれ。そんなレアな魔石ならなぜ並べて売っているのですか。他人に売るよりも自分でもっと高く売ればいいのに」


 わざわざ俺に売るよりも自分で高く売れるはずである。

 それをしないのには、何か理由がありそうだ。


「お客様、かなり突っ込んだとこをついてきますね」


「教えてくれないか?」


「わかりました。この魔石は全てトカチ盗賊団の手柄でして、迷宮で討伐した際に持ち帰った魔石です。もちろんボスの魔石です」


「ボスの魔石なら迷宮屋に持ち込めば高く買い取ってくれたが」


 二回の迷宮討伐した時は、鑑定する者がいて、しっかりと鑑定結果のすえ多額の金になった。


「問題はそこでして、ここクノの町の事情が関係しております。トカチ盗賊団はなぜか国王軍からひいき目に見られていて、取り締まられたり、牢獄に入れられたりしていない。理由はよくわかりませんが、国王軍も忙しいというのが一般的に言われてます。ただしそれはあくまで事情があってのことで、普通は国王軍にとって盗賊団は、厄介者な敵になります。よって迷宮屋での魔石の買い取りは、表向き出来ないわけです」


「迷宮屋では無理なのでここで売っているわけか」


「はい。捨てるわけにはいきませんからね。購入した冒険者はこの魔石を迷宮屋で金に変えるか、または闇市に出品する方法もありです」


「闇市か。それなら怪しまれることなく売却できるな。金のためなら何でもする盗賊団らしい考えだ」


「この世は金しだいですから」


「はぁ……」


 金しだいと言われると現実的になってしまい、なんだか普通に暮らしていた日を思い出してしまう。

 結局は見ていただけで購入はしなかったら、店員さんはフンッて感じでソッポを向いてしまった。


 当然購入することはない。

 今のところは金には困っていないし、余計な出費はしたくもないのは、チユとシュナリの居所がわからないのもあった。

 裏通りを出ると少し歩いて町の風景を楽しんだ。

 歩いたのもあり、のどが渇いたので何か飲めそうな店に入ると、カフェ風な店構えで落ち着いた雰囲気をしていた。

 テーブルについて店員さんに適当な飲み物を注文し出された物はコーヒーであった。

 何気なく飲み物を飲んでいると他の客の中に見覚えのある女性が居るのに気付いて、どこで会ったのかを思い出そうとするも思い出せずにいたら、彼女の方から俺に気付きこちらに向かって来る。

 

「進さん、チユの件は助かりました。本当に感謝してます」


「チユの件……。あなたは確か、アヤカタさんでしたか。どうも気付かなくてすみません。チユは今どこに?」


 あらためて見てみるとチユの横に居たアヤカタさんであって、チユを逃亡するのに手助けした人を忘れたなんて俺としたことが情けないが、チユの居所を知ってるかと思いきいてみた。


「チユはおかげ様で無事に過ごしています。進さんの居る住居区とは違う住居区に住まわされていますが、会うのは避けた方がいいでしょう。トカチの部下が監視している可能性もありますし、怪しまれると面倒なことになりかねないです」


「俺のことはチユに聞いたのかな。トカチの前では俺はチユを助けたというよりも、獣人を利用した方がいいという形にして、シュナリも渡したわけだが」


 あそこでは俺がチユを助けたくてシュナリを仕方なく対戦したことはわからないはずであるから。


「あの後にチユから聞きました。ターヤに行って進さんに出会い迷宮に行ったことや、一緒に寝泊まりしたことも。きっと進さんなりの考えがあってシュナリと対戦していて、チユを助けたのだと。だとしたら大変に勇気のある行動だと思いました。もしもトカチに怪しまれるような事があれば命は無かったでしょうから」


「あの時は、チユが殺されると思って一か八かの賭けでした行動で、もう二度とやりたくないですよ。ここだけの話しですが、俺は必ずチユを助け出します」


 周りを見て人が近くに居ないのを確認してからアヤカタに話すと、彼女は驚くこと無く頷くようにしてくれて納得する。


「そうなってくれる日を待ち望んでいます。私はチユがこの町から逃亡すると聞き獣人達を結集し仲間とともに全力をあげて力を貸しました。そのかいあってか盗賊団からの手から逃れてくれて嬉しさでいっぱいでした。しかしまたも町に戻って来たと聞いた時はショックで死にそうになりました。元から力を貸した時に死を覚悟はしていましたので、今さら恐怖はないです」


「今は耐えていてください。必ず俺がトカチを討ちます。その時まで生き続けてください」


 チユがターヤに来れたのはアヤカタさんの力が大きいようで、言わないがその際に犠牲者が出たのだろうことは表情から伺えて、それを顔に出さないように堪えていたのを見て、必ずトカチを地に突き落とすと決心した。


 ただ問題はいつどうやって倒すかがであり、人数では圧倒的な数は居るし、それに側近も強力そうであった。


 俺の隊長であるサラクイはレベル17でなんとかなりそうではあるが、側近はサラクイよりも戦闘力は上であろうし、まともにトカチと側近を同時に相手にしたら苦しいのは明らかで失敗する。


 出来ればひとりずつバラバラに対戦するのが理想的ではあるが、そんな状況が生まれるのは少ないと考えられ、側近だけにトカチをいつでも護衛しているはずであるから難しいだろう。


 だが行動パターンというものが人にはあり、独りに成りたい時もあると考えられるのでその時がチャンスではあり、チユやアヤカタさんにしたことを後悔させる時でもある。

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