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88話 真空波

 真空波はシュナリが後方に下がった所を目掛けて飛んでいく。

 俺にもどれ程の威力があるのか、わからないので不味いかな。

 体勢を整えていないから避けるにはタイミングが悪く直ぐには行動をとれない。


 しかし生まれついて反射神経がいいので、寸前のところで真空波を避けた。

 まともには受けなかったが体の一部のダメージで済んでいた。


「うっ……」


 ダメージを受けて手を地につけた。

 思わず大丈夫かと言いそうになったが、そこは堪えた。

 普通なら難なく避けきれるレベルの攻撃だけど、少し油断したと思われて仕方ないだろう。


 すかさず俺は近づき勝負をつける一撃を放ちにいく。

 走っていきシュナリの近くまで行った時、そこで重大な誤りに気づいた。

 次の一撃でダメージを与えれればそこで決闘としては十分だろう。

 殺すまでやるつもりはないわけだから。


 だから急いで次の一撃を刺しにいったのだが、彼女は体勢を崩したものと思っていたら、それは勘違いでありシュナリを過小評価していたのだ。

 崩した体勢で地につけた手をバネに反動して体勢を整えたのだ。

 

「なっ!」


 俺は手のバネに驚きの声を上げてしまうも、その時には短剣が用意されていた。

 

「グッ」


 考えるよりも先に腕を刺されてしまっていて、形勢は逆転した。

 シュナリの身体能力を舐めていたのを、またも思い知らされて、不覚にも恐怖を感じた。


 俺もそこで終わるわけにはいかず、傷の痛みを我慢して反撃に出ようとし、剣を振りシュナリを退かせる。

 俺の剣とぶつかり合えば、割に合わないとわかったのか即座に身を引いて、体勢を立て直した。

 それを見てまだやれると思い俺の方から仕掛けることにした。


 俺が傷を負ってから追い込まれると思ったはずが逆に攻撃的に出てくるのでシュナリも意表をつかれたと思ったはずだ。

 しかし攻撃的に出ようとした時に、自分でも気づかない失敗をしていたのを知るはめになった。


「し、痺れてきた……」


「麻痺ですね」


「……」


 先程の一撃でスキルの麻痺の効果が発動したことに、やっと理解してこれが麻痺かと改めて動けないものだと知った。

 これじゃスノーシュリンプも動けないよな。


 体全体まで麻痺が回ってきたところで、ようやくトカチが動いた。


「そこまでだ! よくシュナリの力はわかった。その年にしては良い動きをしている。シュナリを我が盗賊団に加入させよう。そして刑をするはずだったチユにはシュナリを連れてきたことにして、再び盗賊団として働いてもらうことにする。それで良いな進よ」


「はい。出来ればこの俺もよろしくお願いします」


「わかった。進も盗賊団の一員としての行動の許可を許そう。ただし進はサラクイの部隊での行動とすること。サラクイわかったな」


 サラクイに向かって言いつけようにして言った。

 

「はい。進を私の配下に置きます」


 俺のことを見て言った。

 厳しい上司になりそうな言い方だったので、気になったが作戦としてはチユを刑を執行させないことだったので、生きていてくれさえすれば良かったのだった。


 俺が例え苦しい状況になってもチユを見放すことはしない。

 シュナリも理解してくれたはずで、この戦いもその為の致し方ないものだと知った上だった。

 

「次の討伐には連れて行くので活躍を期待しているぞ」


「はい」


 チユとシュナリは同時に返事をした。

 俺も遅ればせながら返事をした。


 トカチの言いつけ通りに俺はサラクイに連れて行かれた。

 そこはトカチの居る場所から離れた建物に移される。

 

「今日から進は俺の配下だ。俺の言うことに逆らうなよな」


「はい。よろしくお願いします」


 逆らう意思はないと表しておいた。

 

「ここはお前の部屋だから好きに使うがいい。何かわからなければ俺の部下がいるからきくように」


「はい。そうします」


 サラクイは行ってしまう。

 部屋は小さいながらも個室であり、ベッドも付いていた。

 住むには問題無いが、チユとシュナリはどこに行ったのかが気がかりである。


 サラクイとは違う部隊なのだろうことは、わかっているがその居場所まではわかり得ない。

 無事でいてくれたらいいが。


 今後のことを考えてみて、一生トカチ盗賊団に居るつもりはまっさらない。

 もちろんチユも当然だろう。

 当面はトカチ盗賊団の一員として動きつつ、チャンスが来ればチユとシュナリを連れで逃げ出したいと思っているが、それは余りにも漠然とした考えだった。


 そもそもトカチから逃げ出す事は可能なのかと考えを巡らせても確実に逃げ出す方法は無いに等しい。


 かと言ってまともに戦えばいくらバジリスクを使用したとして、相手の数と戦力を比較すると敵わないだろうことは容易にわかる。


 安全にセイフティーにこの状況から脱出するのは無理なので、相当な危険をかけて行動するしか方法はなさそうだ。


 先ずは怪しまれないように盗賊団の一員として行動していこう。

 怪しまれては、全てがだい無しになる。

 だい無しは避けたいところで、もし敵と遭遇すれば全力で戦うしかない。


 部屋でくつろいでいるよりも情報を集めようと思いついた。

 ここはアジトてありクノの町。

 町を歩いて散策することで得られる情報もあると思い、部屋を出てみることにした。

 特に誰とも会うことなく町の中を歩けた。


 町とはいえターヤと違う点。

 いっけんして、栄えてるように見えて盗賊団が支配している町であった。

 いたる所に盗賊団が偉そうに振る舞っているのが歩きながらも確認できる。

 農作業や牧畜もさせられてるのがわかる。


 逆らえば即座に牢獄行きなのだと思うと気の毒に感じていると、商店も集まっていて賑やかな町並みであった。

 町であるので普通の通りがかりの冒険者だってこの町を利用するのもあるだろうが、盗賊団と区別はつかない。


 そこの店員として働いてる獣人の男がいたので、話しかけてみることに。


「こんにちは。これは何を売ってるのですか」


「ええ、ゴブリンから採れた皮膚をなめしたもので防具やアクセサリー等にも利用できます、丈夫な材質ですし財布にも使用できますよ」


「なるほど、ゴブリンの皮膚か。硬いし丈夫そうだ。これは迷宮から持ち帰ったものですか」


「私は迷宮に行きませんが、盗賊団の方たちが迷宮に行った際に持ち帰った品物ですね。それをウチラは商品として売りその利益を盗賊団の部隊長さんに渡します。クノの町の周辺にも迷宮は多く有りますので冒険者も立ち寄るのです。その冒険者が買ってくれます」


「ありがとう、また来るよ」


 集めた物を町で販売しているようだった。

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