69話 大声
先ほどの失態でシュナリと交代かと思いきや、まだ続けたいらしく続けてもいいですが今度はお願いしますと。
「もう一度チャンスを」
「わかった頼む」
でもそこまで期待してませんから。
「はい」
「しっかりとね」
やや、プンプンとした怒り気味なシュナリが次にやらかしたら、怒るな……。
「はい」
シュナリにも見守られながら、歩いてフロアーを探索中といっても、チユは俺らよりも迷宮の経験をしているのだから、魔物の見極めもできるはずである。
探索してもスノーシュリンプの姿は皆無であり、なぜか出現してこないのはなぜなのかなぁ。
不思議なこともあるもんだ。
「いませんね」
「私が見つけるっ」
焦りだしたのはチユ。
あまりにも居ないので駆けずり回るように、探し出した。
「おいおいチユ、そんなに走り回らなくていいぜ」
「見つけるっ」
ちょろちょろ走り回るけども、なぜなのかスノーシュリンプはいないし、それだけではなく魔物すら姿がないのは運がわるいのか、それとも魔物に嫌われてるとか?
魔物に会いたくない時はチユを先頭にするのもありだな。
「そんなにちょろちょろしてネズミですかっ!」
しまいには、シュナリが一喝する。
そりゃ、ネズミと変わらないわなと思わずクスっと失笑してしまったのは、本当に似てたから。
「何よっ、笑ってんな進! これでも必死に探してあげてんのよっ」
「でも本当にネズミのようだぞ」
「やめてっ。ネズミ嫌いなんだからっ」
「早いとこ見つけることね」
シュナリに急かされ、さらに焦りだしてしまう。
「もう〜〜〜出てこ〜〜いっ!」
最後にはフロアー中に響き渡る大声を発して、魔物を呼びつける始末で、そこまでしなくても、いずれは出現しますんで。
「もう止めようかチユ……」
「あわれ……」
シュナリも哀れんで怒るのを止めてしまい、頭を抱える。
「ううううう……。なぜだ、なぜなのだ」
もうこうなっては半泣きするしかなくなったのだが様子がおかしくて、なにやら異変の予感がした。
「ご主人様、逃げてくださいっ」
「どうしたっ」
「フロアーの最果てから大量の魔物の影があります……」
「大量の?」
大量の魔物…。
この変な胸騒ぎの原因はそれだったが、なぜ大量の魔物がと考えられる理由を可能な限り考えてみて全ての理由を考えた結果は。
「大量です」
「原因は?」
「恐らくは原因は……このお馬鹿さんにきいてください」
シュナリはチユを睨みつける。
睨みつけられた形のチユは、意外にあっけらかんとしていて、知らぬ存ぜぬといった感じで。
「えっと、なに。私?」
「あなたね……」
「すんませ〜〜〜〜ん」
「いまさら、遅ーーーーいっ!!」
シュナリはチユに詰め寄ると、ひら謝りして詫びるチユは半泣きしっぱなしに。
どうやら、大声に反応して魔物が全部俺らのとこに集まってきたようだ。
まいったね。
こうなったら、逃げましょう。
「逃げるが勝ちだな」
「いえ、そうもいかないようです。反対側にも魔物の群れが」
「なにっ!」
後を振り返ると、どんどん群れが迫って来ていた。
やばいね。
もう逃げれない、前からも後ろからも、挟み撃ち状態に。
「こうなったら戦うしかないです、チユもね!」
「やります。やりますっ!」
この始末は自分で解決するとばかりに、張り切って杖を構えた。
「シュナリとチユは前からの魔物を頼む。後ろからのは俺がやる」
「それではご主人様の負担が大き過ぎます」
「ふた手に別れた方がいいだろう。良い結果をなっ」
「あっ」
俺はシュナリの止める声を振り切って後を側に振り返ると、えっと何匹ですかな。
4匹いた。
スノーシュリンプが1匹。
サンドネズミレベル1が2匹。
デビルバードレベル1が1匹。
とバラエティーに揃ってくれた。




