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59話 出直し

 迷宮を戻るのはマップを見て最短ルートを選ぶ。

 遭遇した魔物も出来る限り逃げることにした。

 1階まで辿り着くまでの時間は、逃げるを選んだのでかなり短縮できた。

 体力的にも楽だし。

 シュナリがあらかじめ、魔物の存在を臭いで察知してくれるおかげで、逃げるのが容易に。

 シュナリの鼻は本当に便利で重宝します。

 どれだけ役に立ってるか。

 頭を撫でてあげたいくらい。

 そうしていると、早くも出口に到着する。

 

「やっと着いた」


「5階からですので、けっこう距離はあります。もっと深い階層から戻るのは大変でしょうね」


「5階でこの位の時間がかかったしな。体力だって使うし、難しくなる」


 エハロ迷宮はレベル2。

 レベルが高い迷宮になったら、どうするのかな。

 足の速さは変わらないのだし。

 しかもセーブもできないときた。

 普通ならここら辺でセーブするものだが、それも出来ない。

 文句を言っても始まらないが。

 

「より深い迷宮に行く時は、魔物よけテントを持って行くといいぞ」


「魔物よけテントて、初めて聞いた」


 テントだから寝泊まりオーケーなアイテムだろうか。


「魔物よけテントは、一定期間テント内で暮らせるアイテム。高レベル者なら必須のアイテムだ」


「そんな便利アイテムなら即買いだ」


「高いのでは?」


 シュナリがお値段を気にした。

 確かに、価格のことは考えてなかった。

 宿屋が1000トパーズで泊まれたのだから、同じくらいと思う。

 

「小さいので10万はするだろうな」


「10万も! けっこうするな。そうやすやすと買える代物ではないぞ」


 思ってたより高いです。

 いざという時の為に、1つは買っておくのもありかな。


「お財布との兼ね合いもあるだろうし、進が買いたければ買えばいい」


「そうするよ」


 出入口を経て迷宮の外に行くと、すでに日は落ちかかっていた。

 もうこんな時間だった。

 時間の感覚が、わかりにくいです。

 時計があれば欲しいが、道具屋では売ってなかったな。

 そこで騎竜が現れた。


「ああっ、お客様、お待ちしておりました。さぁとうぞお乗りくださいませ」


「助かるぞ。出発してくれ」


 俺が騎竜に乗るとシュナリとチユも乗る。

 猛速度で走り始めた。

 今日の成果は最深部まで行けたことだろう。

 惜しくもボスの部屋には未到達で終わったが、それでもオーケーとしよう。

 明日があるのだし。

 外へ出た途端、腹が減りました。

 探索に夢中になると空腹感が鈍るようだ。

 強烈に空腹に襲われてきた。

 ヤバイ、早く帰ろう。

 パンナオの奴はちゃんと晩飯を用意してるよな。

 出かける前に言っておいたので、たぶん大丈夫。

 そうしてる間にもターヤの町が見えてきた。

 速度を落として到着した。

 

「ありがとうな」


 騎竜の頭を擦ってやる。

 騎竜から離れて迷宮屋の中に。

 店内はもう閉店ムードで、綺麗なお姉さんだけが受付けしていた。


「おかえりなさい進さん。遅かったですね。探索はいかがでしたかしら?」


 綺麗なお姉さんは、エハロ迷宮を教えたのを気にしてか俺の帰りを見るなり、声をかけてきた。


「今日は5階まで行けた。そこで終わりにしたんです。ボスまでは無理でした」


「もう、5階までですか。早いです進さん。この調子だとボス討伐も近そう」


「予定通り行けばいいっす」


「頑張れ進さん!!」


「どうもです」


 恥ずかしい。

 顔面が赤くなるのが自分でもわかる程に、変化しているのだろうから、お姉さんに知られないよう下を向いて返事をした。

 頑張れという言い方に、仕草が普通の可愛さではなくて、カメラがあったら絶対に撮っておきたい素顔に、もはや迷宮屋に来る理由にも成りつつあった。

 カワイイて罪です。


「おい、進! 何か嬉しそうだな」


「えっ無い無い。嬉しそうにしてないから気にするな。さぁ行こう」


「そうかな。絶対に嬉しそうだったけどね〜」


 俺が嬉しそうにしていたのを見事に見抜いていたのはチユであり、完璧に嬉しかったので、ごまかすのが大変に難しい中でも、嬉しそうにしてないぞと強気に否定しておいた。

 迷宮屋を見送られながら出ると人の数はまだあって、買い物をしている主婦や酒を飲みに行く男どもの姿もある。

 通りを歩いて抜けていくとパンナオの屋敷、いやもう俺の屋敷か、が遠目に見えてきて人の姿は少なくなり、静かな住宅街に変わっていった。

 

「やっと着いたぞ」


「私……」


「どうした? さては……お腹が減ったのだろ!」


「はい。迷宮を出てからというもの、もう減って減って我慢してたのだけど、屋敷が見えてもうダメです」


 シュナリは迷宮で活躍してのだから腹いっぱい食べてもらいたいので、恥ずかしがることはないのに恥ずかしがるところがシュナリっぽくて好きである。

 妙に照れ気味です。


「実は……私だって……」


「チユも減ってたのだろ。わかってるさ。帰れば食事の用意は出来て入るから、遠慮なく食べたまえ!」


「良いのか、本当に!」


「ああ、いいとも」


 チユの遠慮がちに言うのを聞き、そんなに遠慮なんか要らないと大手をふるって言っておいたのは、治癒魔法で頑張ったお礼でもあり、俺の方こそ感謝しているので、食べてオーケーです。

 屋敷に到着して扉を開けると、そこにはパンナオが独りで立っていて、俺達が帰って来るのを待っていたよう。


「おかえりなさいませ」

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