56話 麻痺の効果
シュナリが先頭で奥地に足を運ぶ。
怯える様子は無い。
いや、見せていないようにも感じられた。
俺に悟られないように隠している風にも。
対してチユは、最後尾であるが余裕がある風に思えた。
単に怖がっていても楽しんでいるように見えてしまうのが、致命的でもある。
俺はというと、怖くなってきた。
段々と魔物が手強くなるし、数も増えるので。
ゲームであれば、ここでセーブしたいところ。
セーブしておけば、ここまでの経験値を全て記憶しておける。
死んでも悲しむことは無い。
ここにはセーブポイント的な物は見たこともないので、不親切といえば不親切だな。
5階ごとに1個はあってもいいのだけど。
そこで魔物に遭遇した。
「魔物です。全部で3匹いますが」
「さっそく来たか。当然バトルしてやろう」
「私だって、います」
現れた3匹はスノーシュリンプ3匹。
レベルは同じく1。
ただし3匹登場は初であった。
まずは、1匹ずつ片付けていこう。
「1匹ずつ倒していこうか」
「はい。1匹を確実に倒します」
シュナリは俺から少し遠ざかる。
敵のスノーシュリンプは1匹ずつ分裂された。
まず大地の刃を構える。
大地の刃を敵に振りかざした。
ハサミで防がれはしたが、剣の切れ味がハサミの硬度を上回ったので、ハサミは吹き飛んだ。
ハサミが無くなれば、もはや戦力的にはゼロに等しい。
大剣をおみまいして、魔石をゲットしました。
残りは2匹だな。
シュナリの方に目をやる。
現在使用しているのはダンシングダガー。
軽快に動いていき、間合いを詰めていく。
相手は1匹だけで、もう1匹は後方に居て戦況を見つめているだけだ。
なので、1匹に集中していいだろう。
ダガーを突き刺す。
ハサミで応戦するスノーシュリンプ。
もう一本のハサミで攻撃を仕掛けると、素早く避けてみせた。
ステップが柔らかく攻撃のダメージほ受けていない。
これは中々出来るものではないよな。
そこでチユが声を漏らした。
「ほおほう。センスがいいの」
「シュナリは才能があるんだよ」
「私だって才能があるし。でも私には無い才能がある」
「そうだよ、二人とも違った才能がある。それをケンカせずに認めあえばいいのさ」
いがみ合ってばかりいたので、その言葉は嬉しい限りです。
「そうなんだけど、ついケンカになっちゃいます」
「まぁしかたないか。人狼族はいろんなタイプがあったりするのか」
仲間を増やすのに参考にしたいので。
「シュナリの攻撃型もいれば、私のように魔法を使えるのもある。それと攻撃魔法ってのもあるかな。友達には採取士もいた」
「採取士てのは?」
「農園で活躍するスキルだな。戦闘では使えない」
「なるほどな。スキルも人それぞれか」
「別に人狼族だけでなく人族だってスキルはある。魔法も使えるか人狼族に限っての話じゃない。進にはスキルはないのか」
「俺には、あることはある」
「どんなの」
「それは、今は見せられないんだ。そうだな、ボスに遭遇出来れば披露するさ」
バジリスクはボス戦にまで控えておきますので。
残念ながら今は見せられないです。
「う~ん、みたい。それよりもシュナリのダガーにはスキル付きなのかな」
みたい〜と体を左右に振った。
胸も一緒に左右に振れる。
「異変があったか!」
何かあったか!!
「見てみなよ。スノーシュリンプが震えてる」
「震えてるな、なんだろう」
スノーシュリンプは小刻みに痙攣していた。
いったい、何が?
「麻痺を与えるスキルではないのかな。あの震えは麻痺に近いし。麻痺してる間は、相手は動けない。だからシュナリから攻撃するチャンス」
「これは強力なスキルだ。もう倒せそうだ」
そこでシュナリのダガーがスノーシュリンプを突き刺して終わり。
魔石へと変化した。
攻撃を与えると、麻痺の効果が発動する場合があるようだ。
麻痺になれば、一方的な勝利に持ち込める。
「もう1匹いるでしょ」
「そうだった。忘れてた」
あと1匹いたのだった。
シュナリとともに倒してしまおう。
「今行くぞ!」
俺の大地の刃とシュナリのダンシングダガーの両方の刃がスノーシュリンプの甲羅を斬り裂いた。
さすがに、防ぎきれない。
後ずさりしていくのを、トドメをさして終わり。
「3匹でもやれた」
「ええ。途中で麻痺の効果が発生したようで、楽に戦えました」
「俺も驚いたよ。毎回発生すれば良いけど」
「何回かダガーで斬りつけてたら発生したので、敵の大群につき、1回は発生すると思っていいと思いますね」
「2人ともよく頑張った。出番なしだったけど」
そこへチユも駆けつけた。
出番なしで残念に感じたのか、耳がダランと垂れてしまう。
「今回は出番なしだけど、次は頼むぞチユ!」
可哀想なので耳を軽く撫でてやった。
「優しいのね進!」
撫でてやったら、急に態度が変わった。
頭を俺の方に擦りつけてくる。
甘えてきたのだ。
そうなると、胸も少なからず、ぷにゅっと当たってきた。
柔らかいです。
俺の顔から緊張感は消えた。
シュナリはそのチユを見て、我慢ならんとなった。
「ち、ちょっとチユ! ご主人様に抱きついてないで、離れなさい!」
引き離すシュナリ。
抱きつくチユ。
引き離すシュナリ。
抱きつくチユ。
おいおい、そんなことしたら。
そのおかげで大きな胸が当たって当たって……。
凄いことになっます。
迷宮でこんな嬉しいことしてくれて、ありがとう。
感謝のお礼をします。




