55話 階段発見
このままではケンカし続ける。
ここは俺が解決せねば。
「ケンカは止めるんだ。俺がお尻を触るのは謎を解くためだ。決して有らぬ好意は持っていない。これは断言する」
「で、でも……」
シュナリはまだ半信半疑らしく尻尾が垂れていた。
どうしても納得してない感じだ。
ここはキッチリと言うしかないし、中途半端に言っても、両方を怒らせてしまう。
俺がご主人様なのだとわからせるようにする。
「俺の言うことが信じられないのか」
「……わ、わかりました。ご主人様を信じます」
垂れていた尻尾が再びピョンと跳ね上がる。
「わかってくれればいい。チユも口には気をつけるんだ。シュナリにデカイ尻なんて言ってはいけないんだ」
「だってアイツが私の物を汚いお尻だなんて言うもんだから」
尻尾がピンッと伸びる。
敵対心を持ってる証拠だ。
チユも落ち着かせる必要がありそうだ。
「そんなことはない。チユのお尻は汚くなんかないぞ」
「………そうよね。触ってくれる?」
「もちろんだ。ホレ触ったぞ」
立場を利用して触らせてもらう。
チユの尻尾はシュッと丸くなった。
「あっ……」
チユも声を上げた。
「ご主人様、もっと押して」
「進! 押すのだ」
右手にシュナリのお尻。
左手でチユのお尻を。
俺はグイグイと押した。
3人の意思は1つになった。
ただこの状況を他の冒険者が見たらどう思うだろうか。
コイツら何してんだ?と思うだろう。
それだけではなく、変態かとも思うに違いない。
それでも、わかっていても、こうするしかないのだ。
たとえ、変態だと思われようと、最深部へ辿り着いたいから。
「あとちょっとです。ご主人様」
「強く押すのだ」
「よーし」
俺はもっと強く押した。
ガチャン。
その時、鈍い音が聞こえた。
「う、動きましたよ!」
「やったー」
「2人とも頑張ったな!」
レバーは完全に押されて逆側になっていた。
3人の頑張った成果である。
これで、いったい何か起こるのだろうか。
迷宮に変化が起こるのを待ったが変化という変化はない。
待つこと数秒。
「壁が!」
突如として壁が動き出したのをシュナリが伝えた。
レバーを動かすと壁が開くようになっていたようだ。
壁は動くと左右に開いていった。
その先にあった物は……。
「階段だ。階段だぞ!」
俺は、つい声を出して喜んだ。
ゲームではあっても、実際に目の前で起こると嬉しいもの。
「わ~い。みっけー」
チユも喜ぶ。
チユが発見したレバー。
そのレバーが階段へと導いてくれたのだ。
ありがとうな。
静かに階段はそこにあった。
誰も寄せ付けない空間に思えた。
「レバーが重要だったわけで、チユのおかげだな」
「その通りだ感謝しな」
「……まぁ今回はチユがいなければ階段を発見できなかったかもね。感謝するわ」
「俺も感謝する」
「よしよし」
チユは感謝されて満面の笑みを浮かべた。
さすがのシュナリも文句を言えない。
その時に思ったことがある。
「この謎は3人以上居ないと解決出来ないよな」
「2人では無理ですね」
「やっぱり、私のおかげ」
「そろそろ調子に乗り過ぎだぞ」
「そうよ、階段があったてことは。まだ下の階層の4階があるってことよ。浮かれてたらダメ」
「はい」
チユは耳をキョトンと垂れて返事をした。
迷宮の謎の中には冒険者の人数を試すものもあるのを知った。
この下の階層にも恐らくは謎があるのだろう。
強いだけでは、下には行けない。
仲間と協力して初めて達成できる。
こうなるとチユはまだ、正式に仲間として加えた訳ではない。
あくまでも、トカチ盗賊団の手下が追いかけて来ないのことが条件だ。
手下が来れば切り捨てると考えて連れてきたのたが。
レバーの活躍。
それに謎を解くには、仲間は多い方が良いこと。
2つの面から考えて、チユは無くてはならない存在に成りつつあるように思えた。
この先に行けば、より存在感が増してくるのか、それは先に行けばわかることなので、階段を降りることに。
「次は地下4階。ボスの部屋にも近づきつつあると思う」
「魔物も数が増えてると厄介ですね」
「どれだけ増えるかは、降りてからのお楽しみだ」
「はい」
「チユにも協力してもらうよ」
「は〜い」
マッタリとチユは返事をした。
階段を降りると地下4階に。
時間的にはまだあると思う。
時間の感覚がわからなくなるのが、迷宮の欠点であるのを知り帰る時間も考慮して奥に行こう。
どれだけ先に行っても帰れなければ、意味は無くなる。
でもまだ下の階層が有りそうである。




