53話 隠された階段
チユの肩を大きく揺らす。
「チユの思ったこと、言ってみてよ!」
肩を揺らすと同時に肩の下についた2つの物も揺れて揺れて……。
もっと揺らしてくれと祈る。
祈りが通じたのか、揺れに揺れてます。
「えっへん。シュナリさんに進、あなた方はどこを見てましたの。この下への階段。それはここに隠されてる」
「えっと……」
チユの言った意味が、イマイチわからない。
こことは。
ここには、周りを見渡しても通路と壁。
下には砂の地面だし。
階段は見当たらないのだ。
う~ん、わからん。
シュナリも首を横に振ってます。
「はぁ〜。ダメだな。後ろをよく見てみ」
「私の後ろ側を?」
「そう!」
「……」
シュナリの後ろ側を指差して言った。
その指した先には普通に壁。
壁……。
あ、あれは!
シュナリが振り返り、壁際に行く。
壁に近づき確認してみて、ハッと何かに気づいた様子。
「あれっ、壁から棒が出てるわ!」
「棒が?」
「ええ、全て壁に見えたけど、よく見るとレバーにも見える」
「レバー? 掴めるのか」
シュナリが触って確認した。
掴んでいる。
俺も近づいて見たら、確かにレバーのように感じた。
「チユはこれに気づいてたのね。迷宮の中は砂で覆われているでしょ、気づきにくいのよ」
「そんなに褒められると、照れてしまう」
照れてしまうといいつつ、嬉しそうだ
「でも、レバーを動かしたらいいかしら。そもそも動くのかわからないけど」
シュナリはレバーを握ったまま困っていた。
押したり引いたりして、動かしたら何か変化が起こり階段へ繋がるのでは。
勝手に操作してトラップであったなんて、オチは無いようにしたい。
チユはそこら辺の知識があるのだから、アドバイスをもらいたいものだ。
「動かせそうかい?」
「う、うん。動くことは動くかも」
「どうするかな?」
俺はチユに視線を送り、動かしてみていいものかをきいてみようと思った。
「動かしてみなーよ」
チユは気楽にオーケーした。
本当にオーケーなんですか。
ちょっと心配です。
シュナリはチユに言われて、レバーを強く握った。
「じゃあ、動かすわよ」
「……」
シュナリはレバーを必死に操作してみた。
しかしレバーはピクリとも動かない。
力が足らないのかな。
「動きません。動くように出来ているようだけど、固まっているのかビクリともしないわ」
首を左右に振る。
「ちょっと俺に貸してみて」
力ならシュナリよりも俺の方があるのでは。
レバーを握った。
色々な方向に操作してみた。
結果はシュナリと同じく動かなかった。
動きませんが、どうしましょう。
チユがやっても同じ結果になるだろう。
力は無さそうだし。
「やっぱりダメでしたね」
「ああ。チユやってみるか」
「私がやってもダメだ」
チユはレバーは握らずに無理ですと、返事だけした。
ダメなのかよ。
じゃあどうすりゃいいのかを説明して欲しいもんだ。
「チユでもダメかい。ダイヤルと一緒で無視して行くか?」
「ここに居ても時間だけ経っちゃうし。他を探しましょう」
シュナリが歩きだして別のヒントを探しに行く。
そこをチユが待ってと止めに。
「待って。シュナリ、まだ諦める必要ないんだ。だから帰ってきて」
「もう無駄よ。今は先に行くのが正解なんだから」
「正解はここにあるんだから」
チユは、またしても指を指した。
今度は何だろうか。
まだ見落とした物があるってか。
「あっ、ここにもレバーがある!」
シュナリが見つけたのは、2つ目のレバーだった。
「2つもあったとはな。でも1本目のレバーは動かないし、これはどうかな」
2本目のレバーは同じ壁にあった。
少し離れた位置にあり、一人では両方のレバーを握れないだろう。
手を伸ばしても両手で握れる距離ではない。
これでは何のために付いてるレバーなのか不明だな。
「私がやってみる」
シュナリがレバーを動くかどうかを試みた。
「……ピクリともしません」
「やはりか。冒険者を馬鹿にする為のものじゃないか」
意味がなかったと知り落胆した。
手がかりを見つけても、これではガッカリするものだ。
「動きませんよ、チユ?」
シュナリがチユに助けを求める。
求められたチユも、悩んでいるようだ。
腕を組んで考えている。
「そうねぇ、2人で同時に動かすのはどうかな」
「2人で……」
「そうよ、私がこっちを持つからシュナリは、もう1本のを持ってみて」
「持ったわ。じゃあ、当時に動かしてみましょう!」
チユの言うとおり2人でレバーを持つ。
俺の右側のをシュナリ。
左側のをチユが持つ。
2人で協力し合うようだ。
騎竜に乗るときは、ケンカになっていたが困った時は協力的になったのが嬉しい。
女の子の気持ちはよくわからない。
理解しようとしない方が良さそうなので、深く考えるのを止めた。
「せえのっ!」
かけ声とともに手を動かしてみる。
息を合わせて動かしてみた。
これで動けばと、待望の階段が現れると期待がつのる。




