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47話 獣耳娘2匹目

 俺のはこの辺にしておいて、次にシュナリの武器に取り掛かろう。

 シュナリに魔書を渡す。

 魔書を片手に目を通し、どの武器にしようかと。

 真剣な顔で書かれた内容を見る目はやる気に満ちている。

 そして、手が止まった。

 目的の物を探し当てたようだ。

 自分の砂丸腕輪に読み込ませると、声を発した。


「ダンシングダガー!」


 シュナリの声ど同時に姿を現したのはごく短めな短剣。

 しかしその刃からは異様な物を感じざるを得ない。

 何だろうか?

 これまでには無い特徴を持っているのだろうか。


「良さそうな物だな」


「レベル5の短剣で検索したら、ダンシングダガーが該当してました。しかも前回の時と同様にスキル付き」


「スキル付きかいな。で、どんなスキル?」


「スキル欄には麻痺の効果と。この刃で打撃すると麻痺の効果を与えられるようですね」


「ほぅ。麻痺の効果か。それは初めて見たな。敵は動きが麻痺で悪くなる。その瞬間をついて攻撃すれば、チャンスになる戦いが出来そうだな」


 麻痺の効果か。

 頻度は少ないだろうけど、効果が発生すれば圧倒的に有利になることはターン制のバトルゲームでは有効である。

 この手の武器の特徴としては、攻撃回数に応じて何回かに1回の割合で麻痺の効果が発生するものである。

 必ずというわけではない。

 麻痺の効果の時間も武器によることが多い。

 まだ弱い初期の武器なだけに、発生する頻度は低い可能性が高いかな。

 それに相手の魔物のレベルが自分のレベルよりも大幅に高いと発生頻度は著しく落ちる傾向にある。

 これは仕方ないだろうな。

 だけど迷宮地下で遭遇している魔物になら十分に発揮できると思う。


「本当に麻痺してくれたらいいけどな」


「大丈夫、シュナリの腕ならヒットするし何回かに1回は麻痺するよ。その時が狙い目だ」


「早く試したい」


「じゃあ迷宮屋に行くとするとして、ち、ちょっと待ってくれ!」


「早く! 置いてきますよっ」


 俺の目の前にはもうシュナリは居なくなっていた。

 するすると、迷宮屋に向かって行ってしまったから。

 尻尾を左右に揺れらしながら。

 気が早いな、まったく。

 俺も遅れまいと、駆け足で追いかけた。

 迷宮屋に到着すると、シュナリはすでに待っていた。


「足速いな」


「一応狼が入ってますので」


「なっとく」


 息も乱れていない。

 これも狼の力ですか。

 そこは深く考えずに店内へ。

 

「いらっしゃいませ。あら進さん。お待ちしてました」


 女性店員が会釈してくれる。

 何とも癒される笑みに、つい照れてしまう。

 朝早い時間に来たのに、もう冒険者が居たのには驚いた。

 みんなヤル気あるのですね。

 俺も負けてはいられませんが。

 

「冒険者って忙しいんだな」


「結構早起きですね。掲示板を見てます。新しい迷宮のチェックをしているのかも。新しければそれだけ迷宮のクリアに近いですし、情報収集は基本です」


 掲示板の所に行ってみた。

 シュナリの言うとおり、大きな掲示板が貼り付けてあり、迷宮の情報が載っていた。

 難易度の詳しい情報などだ。

 これは見ておく必要がある。

 知らないで危険な目に合っても、それは本人が悪いとされるだろうし、誰も助けてくれない。


「仲間を募集中ってのもあります」


「独りより多い方がいいからな」


「中には仲間割れってのもあるそうですよ。人間関係が上手くいかずに」


「人間関係ですか……俺の最も苦手なスキル。シュナリが俺には合ってるよ」


「そう言われると、嬉しいです。あれ……あの子は…何か様子が変な気がします」


「えっ……。どの子かな?」


 シュナリが店内の端っこに目を向けて言った。

 そちらへ視線を向けると、確かに女の子か独りで立っている。

 冒険者なのかな。

 それにしてはモジモジしてて、ぎこちない感じだ。


「困ってそうに見える。話をきいてみてはどうでしょう」


「行ってみよう」


 その子の側まで近寄ってみた。

 よく見ると頭に耳。

 シュナリと同じ。

 獣娘。

 人狼族かな。

 下を向いていたので話しかけてみる。


「どうしたんだい。困ってそうだけど」


「えっ……」


「怖がらなくていいからさ」


 いきなり俺とシュナリが現れて声をかけられびっくりしたようだ。

 怖がらないようトーンを今度は下げて言った。


「実は……困ってます。本当に困ってます助けてくださいっ」


「わかった。話を聞こう」


 その子は少し落ち着くと話し出してくれた。

 背は小さく小柄な娘。

 頭に耳を生やしていて、髪の毛は茶色。

 胸は恐ろしく前方に付き出しており、なるべく見ないように心掛けた。


「私はチユ。見てわかるかな、人狼族です。頭の耳を見てのとおりに。元々はクノの町に住んでて、それで逃げ出してターヤに辿り着いたんだ」


 名前はチユというようだ。

 落ち着いたら、今度は明るく話し出した。

 困ってますというわりには、テンションは高い。

 逃げ出してきた理由は何だろうか?

 と思っていたらシュナリが先にきいた。

 

「どうして逃げ出してきたのチユ?」


「それはさ…て…あなたも人狼かな?」


「そうよ、シュナリって呼んで。クノの町ではなかったけど私もこの町に辿り着いたの」


「シュナリと理由は違うかも知れないけど…クノの町ではそれはそれは…ひどーい扱いを受けてきたのが私で嫌になって、その嫌になった原因なんだけど、ある盗賊団に私は雇われていたの。雇われていたといっても給料は支給されるのではなくて3食のご飯を貰えるだけ。貧しい生活を強いられたの」


 チユは盗賊団に雇われていた。

 そこから飛び出してきたわけだな。

 理由は何であれ、放っておくわけにはいかない。

 チユを一度迷宮屋から出して屋敷に帰ることを提案してみたい。

 その方が安心するだろう。


「盗賊団から出てきたのだろう。一度俺の屋敷に来ないか。そこなら安全だし」


「お願いしまーす」


「ご主人様…俺の屋敷って…本当はパン…」


「もう俺の屋敷と呼んでいいだろう」


「そうしましょう」


 勝手に俺の屋敷としてしまった。

 けど問題はないと判断した。

 困ってそうな娘を放っておくわけにはいかない。

 それに仲間になってくれればメンバーは多い方がいいので話だけでも聞く価値はあると思った。

 そこから3人で迷宮屋を出ると屋敷に向かった。

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